The Secret Faure(知られざるフォーレ/
アイヴォー・ボルトン/バーゼル交響楽団)


SONY  1907581858-2 Faure

劇付随音楽「カリギュラ」作品52(バルタザール=ノイマン女声合唱団)
歌劇「ペネロープ」より前奏曲
歌曲「イスファハーンのばら」作品39-4/「夕暮れ」作品83-2/「月の光」作品46-2/「夢のあとで」作品7-1(オルガ・ペレチャッコ(s))
劇付随音楽「シャイロック」作品57(ベンジャミン・ブルンス(t))
劇付随音楽組曲「ペレアスとメリザンド」作品80(「メリザンドの歌」オルガ・ペレチャッコ(s))

アイヴォー・ボルトン/バーゼル交響楽団

SONY 1907581858-2  2017年録音

 できるだけ未知の音楽に親しむこと、新しい演奏家を聴くことの大切さ。古典音楽(クラシック音楽)は保ちがよろしくて、50-60年前の録音でも現役の音質だったりするから、油断すると昔馴染みばかり聴いてしまいます。週一回の【♪ KechiKechi Classics ♪】定例更新は自分なり音楽への緊張感を維持するための宿題、実際に聴いて執筆することより、音源選定に時間が掛かって”貧しいから手元にある音源をまずしっかり聴く”そんな若い頃のシアワセをしみじみ思い出しますよ。

 Gabriel Faure(1845ー1924)は近代仏蘭西の大物作曲家、Debussy(1862ー1918)Ravel(1875ー1937)の先輩筋にあたって、最晩年は既にStravinskyとかドデカフォニーが出現する時代を迎えております。作風はほんわかとして保守的?室内楽が多いイメージ、美しい旋律の宝庫。ここでも「ペレアス」以外は初耳なのが「Secret」の所以でしょう(前奏曲「ペネローペ」は聴いていたっけ?著名な「夢のあとで」は歌曲として初耳)。Ivor Bolton(1958ー)は英国出身の指揮者、既にBruckner交響曲全集を録音して、現在ザルツブルグ・モーツァルテウム管弦楽団のシェフ。Sinfonieorchester Baselは瑞西の独逸語圏のオケ、放送響と合併して歌劇場のピットも担当しているとのこと。このオケもあまり聴いた記憶がありません。(以上要らぬ薀蓄でした)

 英国出身、Bruckner指揮者が瑞西のオケ(独逸語圏/彼は首席指揮者とのこと)を使って仏蘭西音楽録音というのも一興。これは予想以上にしっとり美しい世界が待っておりました。音質もアンサンブルも極上。Brucknerをイメージすると驚くほど、耳に刺激的な大音響皆無な一枚。

 「カリギュラ(Caligula)」は ローマ帝国第3代皇帝、それにまつわる悲劇の音楽なのでしょう。プロローグ、行進曲と合唱「われらこそたたかいの時」「冬は逃れさり」「エールとダンス」「朱色の薔薇で」「皇帝はまぶたを閉じた」計17分ほどの作品。金管のファンファーレあくまで柔らかく、女声合唱に重みはありません。ほんわか優しくデリケート、パステル色に夢るような旋律はいつものFaureそのものでしょう。合唱団はトーマス・ヘンゲルブロックが1991年に設立したとのこと。これに限らずボルトンの仕上げは極上に繊細、薫り高いものでした。

 「ペネローペ」前奏曲はやや悲劇的な佇まい、洗練された静謐の中に不安と激情も走ってスケールが大きいもの。(7:47)露西亜の名花オルガ・ペレチャッコは今が旬のソプラノ、管弦楽伴奏付きの歌曲は凛として情熱的、遣る瀬ないはずの「夢のあとで」も優しくも控えめな(あくまでパステル色調堅持)オケとは対極に、輝くように強靭な歌声であります。言葉の意味は理解できなくても、切ない情感が伝わる手応え有。声楽は一般にやや疎遠だけど、R.Straussの歌曲を連想いたしました。

 「シャイロック」はご存知シェークスピアの原作を元にしたもの。「シャンソン*」「幕間の音楽」「マドリガル*」「祝婚曲」「夜想曲」「終曲」からなる 17分ほど。ベンジャミン・ブルンス(t)*には福音史家のイメージがあって、ここでも端正に生真面目、伸びやかな声質であります。Wagnerで活躍してますよね。この音楽は淡々と格調高い風情、やはり絶叫に非ず、優しい旋律が続きます。「幕間の音楽」は淡々としたなかに、絶妙の弦の掛け合いが美しいもの。「祝婚曲」に於けるヴァイオリン・ソロ(+遠いホルン)も夢見るよう。しっとり静謐な「夜想曲」を経、軽妙に剽軽、明るいフィナーレにて締めくくられる名曲。

 組曲「ペレアスとメリザンド」は著名な作品、でも声楽を伴う「メリザンドの歌」は省略されることが多いもの。上記、演奏機会が少ない作品もそれが理由なのでしょう。いきなり懐かしくも名残惜しい風情に胸が痛む「前奏曲(Prelude)」の清涼な爽やかさ、弦の細かいリズミカルな音形に乗ってオーボエ、そして他の管楽器も歌う「糸を紡ぐ女(Fileuse)」は極めて抑制のきいた演奏でした。フルートが遣る瀬ない名旋律「シシリエンヌ(Sicilienne)」はそっと耳元で囁くよう。「メリザンドの歌(Chanson de Melisande)」に再びペレチャッコ(ちょっぴり)登場して哀しみに溢れます。「メリザンドの死(La Mort de Melisande)」は淡々とした葬送行進曲、計19分ほど。

(2018年9月30日)

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written by wabisuke hayashi