Schumann 「謝肉祭」作品9/「音楽帳」(アルバムの綴り)作品124/ アラベスク 作品18(イエルク・デムス(p))
Schumann
「謝肉祭」作品9
「音楽帳」(アルバムの綴り)作品124
アラベスク ハ長調 作品18
イエルク・デムス(p)
DOCUMENTS 231752 CD2 1960年代後半録音 13枚組1,962円にて入手
このボックスを入手したのが2008年だったか。数年で更に値下がりしております。1960年代〜70年代に掛けて録音されたものだけれど、詳細録音情報は探せません。いずれ希少なる全集であって、Beethoven の主題による変奏曲形式による練習曲、それに協奏的作品を除けばほとんど全曲を網羅して下さって、ありがたき存在でしょう。Schumannの交響曲は少々聴くのはツラいが、ピアノ・ソロだったら変幻自在なる旋律揺れ動きの妙、たっぷり愉しめます。
「謝肉祭」って音のエッセイですか?つぎつぎとテイストの異なる短い旋律連続して、じつはA - H - C - Es(E♭)の4つの音を基本としているんだそう。シロウト耳には理解できんが、そんな底辺が全曲の統一感を与えているのかも。(9曲目「Sphinxes. スフィンクス」は省略されている/慣例だそう)イエルク・デムスは息の長い演奏家であり、一時は古楽器にも手を染めていたようだけれど、特異な個性を誇るヴィルティオーゾ・タイプではありません。地味で質実なタッチ、以前FMにて演奏会の放送を聴いて、リズムのクセ、テクニックの衰えがかなり気になった記憶もあります。ここでは、そんなクセもないし、なんとなし滋味深い味わい有。タッチが艶々ではないし、細部テクニックのツメが少々甘いような気もするが、まずは作品そのものを愉しむことが肝要と考えてしっかり聴きましょう。音質は並、といったところ。
全22曲(ここでの収録は21曲)、一番のお気に入りは第11曲「Chiarina/キアリーナ」〜奥様のクララ(イタリア語)のことですね。Chopin のワルツ風哀愁情感の揺れ、たっぷり。次がその「Chopin 」であって、流麗なる夜想曲であります。ま、どこをとってもまさに珠玉(ほぼ1〜2分程度)、聴き手が各々のお気に入りを探したらよろしい。ラスト、著名なる(カレーのCMになったこともある)「 Marche des "Davidsbundler" contre les Philistin. フィリシテ人と闘う『ダヴィッド同盟』の行進」の高らかな締めくくりであります。デムスはスケールを強調する方向ではなく、技術鮮やかな冴えということでもないが、全曲をしっかり、各曲味わいを描き分けて、これはこれで素敵な作品のテイストを伝えて下さっていると思います。
「音楽帳」(アルバムの綴り)も「謝肉祭」同様、ほとんど1分足らず変幻自在テイストな小品が連続します(例外で2曲「終わりのない歌」「子守歌」が3分を超える)。こちらは晩年の作品にあたるのか?ずいぶんと落ち着いて全21曲、静かで繊細な諦観が連続して、やや内省的で地味な作品でしょう。デムスの個性から言うと、こちらのほうが似合っているかも。ワタシのお気に入りは、やはりたっぷり聴かせて下さる「終わりのない歌」「子守歌」、はかなくも短い他のところも好きだけれど。
ラストは著名なる、「アラベスク」〜アラビア風の、といった意味だろうが、物憂げ、夢見がちのような絶品の旋律。イエルク・デムスはこういった、ゆったりとしたモノローグのような作品に適正があると感じます。揺れ、囁き、吐息のように歌って自然体であります。 (2010年9月3日)
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