Bruckner 交響曲第5番
(シューリヒト/ウィーン・フィルハーモニー 1963年)


Bruckner 交響曲第5番(シューリヒト/ウィーン・フィルハーモニー 1963年) Bruckner

交響曲第5番 変ロ長調

シューリヒト/ウィーン・フィルハーモニー

MEMORIES HR4582 1963年2月24日ライヴ録音(モノラル) $1.99で個人輸入

 2004年夏、猛暑にはMahler だったが、秋の声を聞くと俄然Brucknerが・・・しかも、ここ最近敬遠気味であった歴史的録音も、するする聴けちゃう。心境の変化ですな。やや平板で、奥行きには不足するが、音質はそう悪いものでもありません。重苦しさは存在しないが、第1楽章はそうとうに遅いテンポが基本であり、そして揺れ、速くなったり、元に戻ったり〜けっこう表情が濃い演奏なんです、コレ。(おお!数年前の自らの感想とほとんど変わりない)

 ホルンの味付けはもちろんだけれど、弦が泣いてますよ。金管の節回しも入念でしつこいくらい。「シューリヒトって自然体でサラサラして・・・」なんていう先入観を持っていると、おっ!と驚きます。走ったり、どんよりしたり、行ったり来たり、しっかり「間」をとったり、スケール大きく第1楽章は進み、怪しげなスローテンポ〜アッチェランドで終了。少々やりすぎか。でも、チカラづくで煽ったりしない人ですから。

 第2楽章も基本じっくりと構えた演奏なんだけど、途中するすると旋律が走ってオケがあわてている様子も有。そんな些細なことはともかく、どんどんアツくなって、ぐいぐいと進んでいくが、やっぱりこの人どんよりしないですねぇ。どこか感覚がサッパリしていて、鈍重にならない。第3楽章の快速開始、ワルツが挟まってその表情も飄々としてやさしく、またまた即、快速特急に戻っちゃう迫力・推進力。「Brucknerのキモはスケルツォだ!」なんて言われるが、この演奏のキモも「スケルツォ」に間違いない。このテンションの高さ+颯爽とした風情は、晩年の爺様のワザとは俄に信じがたい水準です。

 金管が(特に)魅力的。精一杯鳴っていて、響きに艶と厚みがある。たいした録音じゃなくてもちゃんとわかりますよ。最終楽章は、冒頭のじっくりスタイル音楽に回帰しちゃう。しかし粘らない、やさしい風情もあります。時にテンポをぐっと落として、シミジミ歌ってます。金管で疾走する部分との対比も鮮やか。そしてシューリヒト特有の爽やかな熱狂がやってきます。時間もスケールも巨大な作品だけど、けっこうあっ!という間に終了しましたね。脂肪は少な目の方がたくさん食べられる。

 ラスト、テンポを落としてタメを思いっきり→優しい表情の旋律に移ってしっとり歌→軽快なるテンポ→再びタメ→テンポ・アップ→めまぐるしく動いてテンポは入念に歌い→高らかに冒頭主題が回帰して堂々たるラスト!(拍手盛大)これはかなり個性的な演奏です。ウィーン・フィルでここまでやるんだね、といった感慨有。(2004年10月16日) 


 まず質問。

 Brucknerはお好きですか?「女性にBruckner・ファンは存在しない」という噂は本当でしょうか。(少なくとも日本では)それが、Bruckner受容の歴史が浅い日本固有の問題なのか、音楽そのものが持っている特性なのかは、知りません。でも、「大好き」という女性は見たことはないなぁ。
 朝比奈さんの大ブームで、そんな垣根が払われることを願って止みません。閑話休題。

 このCD、DGから出たものと同じ演奏だと思うのですが、音の状態はまぁまぁ聴けんことはない、といったところ。1963年録音にしてはずいぶん奥行きがないし、あんまりお勧めしません。やはりBrucknerはそれなりの音質で聴かないと、印象が散漫になる。でも、3、7、8、9番と素敵な録音を残してくれていたので、この曲も期待しておりました。

 例のドキドキするような冒頭の低弦ピツィカートから、重苦しさはなくて、やはりそこはシューヒリトらしい。でも、旋律の歌わせ方はいつになく念入りで、テンポもそうとう(というか、かつてどんな演奏でも聴いたことがないくらい)揺れるし、しつこいくらいの「キメどころ確認」があります。ライヴならではの感興の高まりのなせる業でしょうか。

 録音のせいか、その「揺れ」がピタリと決まっているとは感じられません。細部のアンサンブルが整わないのは、このひとのクセで、なんということもないのですが、同時期のスタジオ録音の端正で軽快、ひょうひょうとした演奏とはかなりの差異。金管による全開の絶叫でも、重くならないのはいつも通りのマジック。でも、なんかやっぱりいつもの印象と違う?(と、最近女性に流行の語尾上げ言葉風に)

 アダージョにおける弦は、ゾクゾクするほど魅力的な歌・・・・なんでしょうが、かなりの想像力が要求されます。「オレはシューリヒトが好きだ、絶対だ、ほかは何も聞こえない」くらいの集中力も欲しいところ。ま、そこまでいわんでも、黙って聴いていると、ジワジワと音楽の中には入っていけます。(中間部の木管の絡み辺りから)

 スケルツォが本領発揮で、快速で叩きつけるような疾走。激演。そしてワルツの優しさとの対比は、さすがの軽妙さ。金管の爆発も美しさを維持。(ホルンの牧歌的な響きは貴重)いつもは見られないアッチェランドも決まってますね。この楽章は、保留条件なしで文句なしの出来。

 終楽章に至ると、耳(というより、カラダ)が慣れてきて、しっかりとした足取りと、爽やかさが同居する音楽に浸り込めます。やはりここでも、いつにない朗々とした「弦の泣き」(でもクドくならない)が聴かれて、ハッとする瞬間も有。呼応するホルンの深みも滅多に聴けない。

 あわてず騒がず(意外とテンポは早くない)、じっくりとフィナーレへの歩みを進めます。と、思いきや例の「揺れ」がやってきて、金管の一撃。再び弦は天使の歌。金管の意味深さは、ウィーン・フィルにしか出せない説得力。
 最後まで聴いて、はじめて満腹。納得の演奏。これだけ個性的でも、絶対に重すぎない、うるさくならないのは身上。(拍手入りが嬉しい)

 最初、録音状態と、いつものシューリヒト(先入観はいけないなぁ)らしからぬ濃厚な表情にとまどいました。でも、このひとの基本姿勢は「爽やか」で、後半に行けば行くほど納得の美しさで、古くささを感じさせません。これだけのテンポの揺れは、それなりの練習が必要だと思うし、ましてやライヴでこれだけ説得力を維持するのは驚き。

 MEMORIESというレーベル。DEGITAL REMASTERINGしました、とジャケットに書いてあるから、これがクセ者か。DGの復刻盤はどんな音ですか。Brucknerはできるだけ、ちゃんとした音質で聴きましょうね。


【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi