Schubert 交響曲第9番ハ長調 D.944
(ロイ・グッドマン/ハノーヴァー・バンド)


NIMBUS NI5270-73 Schubert

交響曲第9番ハ長調 D.944

ロイ・グッドマン/ハノーヴァー・バンド

NIMBUS NI5270-73   1988−1990年録音(詳細未確認)

 言わずと知れた古今東西知名度高き名曲であります。(第8番云々番号呼び名はここではさておき)出会いは中学生、フルトヴェングラーの1951年録音。強烈なテンション、魔法のように揺れるテンポ、歌うような美しい旋律に一発で痺れた記憶有。やがて幾星霜を経、彼(か)のフルトヴェングラー盤への敬意は失っていないが、作品そのものは(罰当たりにも)やや苦手系へと至りました。最近(モダーン楽器演奏も含め)聴く機会復活してますけどね。このハノーヴァー・バンド盤は(経緯いろいろあって)幾度買い直して、結論的に全集手許に生き残っております。ワタシ、基本古楽器嗜好なんです。粗野素朴な響き、この演奏も大好き。世評は知らん、というか、話題になっていないか。BRILLIANTの全集(2011年再発)ではシャンドール・ヴェーグの担当になっていたし。妙ちくりんなコンピレーション也。

 何故苦手系作品に至ったのか。巨魁大柄なる浪漫作品として、あまりに御立派に演奏される(という先入感)から。それだったら古楽器が良いのではないか、というのはマッケラス/ジ・エイジ・オブ・エンライトゥンメントにて拝聴、証明されました。こちらハノーヴァー・バンドはもっと粗野、飾り少なく響きには充分な厚みがあって、力強い演奏です。これはこれでけっこう巨魁大柄、御立派なんだけど。第1楽章 「Andante. Allegro ma non troppo」冒頭のホルンからいかにも粗削りな響きが素敵、序奏を重々しく表現せず、主部への突入にテンポをあまり変化させない。ワリと素っ気ない、ストレートな表現と言うことですよ。16:25というのはテンポの遅さではなく、繰り返しを実行しているから。美しい旋律は繰り返し拝聴したいものです。

 第2楽章 「Andante con moto」は14:54(第1楽章より短い)。繰り返しを実行すると長過ぎて、冗漫になるのかな?(この楽章のみ繰り返さないのはマッケラス盤同様)「Andante」に相応しい、昔馴染み浪漫演奏のイメージから考えるとやや速め、さっくりとしたテンポ設定。意外とテンポも揺れ、リズミカル、表情豊かであり、素朴粗野飾り少ないとばかり言えぬ表現であります。剽軽?途方に暮れたような静謐部分(主に木管が担当)と、やたらと力んだ弦を中心とした部分の対比強烈、そしてしつこい。

 第3楽章「Scherzo. Allegro vivace」14:01。通常馴染みの演奏に比べると長いですよね。テンポが遅いワケじゃなくて、これも繰り返し実行結果なのでしょう。ヴィヴィッドな熱気、躍動に溢れた楽章であり、演奏もその通り。賑々しさと粗野な響きが合体して、舞曲的性格が表に出た表現となります。優雅な中間部トリオとの対比は余り強調しません。終楽章「Finale. Allegro vivace」15:56。ここも思いっきり時間が掛かっていて、テンポに違和感はないから繰り返し結果でしょう(楽章開始4分ほどで冒頭に戻る)。颯爽として推進力有、金管の粗野な爆発も爽快、残る問題は同じ音型をひたすら繰り返して(とくに弦)それを厭きさせずに、楽しく聴かせるか。

 軽妙であり、推進力充分、息もつかせぬテンション継続して、古楽器特有のチープな薄い響きに非ず(それも悪くないけれど)。リズム感良く、ノリノリであって、天国的に美しい(himmlisch は「素晴らしい」という賞賛の意とのこと)旋律をいつまでも、どこまでも繰り返してしつこい!作品を心ゆくまで堪能させて下さいました。豊かな残響に溢れ、音質良好。

(2012年4月22日)


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written by wabisuke hayashi