Rimsky-Korsakov 交響組曲「シェヘラザード」
(チェリビダッケ/シュトゥットガルト放送交響楽団1975年)


LIVE CLASSICS	LCB-087 Rimsky-Korsakov

交響組曲「シェヘラザード」作品35

チェリビダッケ/シュトゥットガルト放送交響楽団

歌劇「サルタン皇帝の物語」組曲  作品57

スヴェトラーノフ/ソヴィアト国立交響楽団(1987年)

LIVE CLASSICS LCB-087 1975年録音  500円


 ま、たいていの「名曲」はそうなんだけど、ワタシにとってCDを取り出すのに気分が重い作品のひとつ。ロシア風とか、いかにも「シンドバットの冒険」風な親しみやすい旋律がハナに付いてしまう。でもね、音楽が流れ出すと魅了されました。チェリビダッケの魔力に騙されてしまって、グイグイと魅せられました。負けました。

 このオーケストラ、好きなんですよ。録音が少な目だから著名ではないが、ちゃんと良い音がしてます。バルビローリの「復活」然り、シューリヒトとの「グレート」然り。ここでは、チェリビダッケの薫陶よろしく、アンサンブルがひじょうに精密、そして暖かい響きもちゃんとある。録音も海賊系とは信じられないほど良好。(おそらくこのシリーズ中の最高峰)

 この曲、とことんクサい旋律がウリじゃないですか。ドロ臭く、下品に迫るのもよろしいかも知れないし、洗練された美しい世界も良いかも知れない。先日聴いたコンドラシン盤は、知・情・意・抜群のバランスで感心したし、ああいうのは「王道」と言うのかな。なによりオーケストラが美しかった。

 チェリの表現は冷静に聴けば、もの凄く不自然で人工的な装飾が施されて、「とことんクサい旋律」→「エキゾチック・ロマンティック旋律」に変身させます。「ここはこのくらい遅く引きずった歌を・・・」とか「思い切った間を!」、「音量小さく繊細に」〜かけ声も盛大(ちゃんと収録されている)に「最大の爆発を!」〜あちこち仕掛けがいっぱいなんです。

 方向性としては「とことん洗練された美しい世界」かもしれません。ある意味「ゆるんでいないカラヤン」風か。どのパートも恐るべき技量だし、これだけ変化に富んで、ニュアンスの細かい指示を徹底させるには、やはりウワサ通りの猛練習があったんでしょう。「自発性に富んだ」といった表現ではない。主張は明快。

 ワタシは騙されたいなぁ。あちこち芝居っけタップリの表現にウットリしちゃいます。ほとんど歌舞伎の大見得の世界ですよ。どこまでも作られた世界で、大自然ではない。USJみたいなもの?これ、ベルリン・フィルとやったら、とんでもないセクシーな演奏になったろうと想像されます。そこはこのオーケストラ、もう少し生真面目で誠実でしょ?


 先日亡くなった、日本にもファンが多いスヴェトラーノフの録音は、メロディアのホンマの「海賊」らしいです。音質はまとも。これは金管の暑苦しい響きが明快な個性で、まったく楽しい。爽快。これは、まさに天然本場もんで養殖とちゃいまっせ。

 主張が明快な点では、チェリビダッケもそうだけど、よくもまぁ、ここまで正反対のカップリングを持ってきたな、と感心するところが海賊盤の海賊盤たる所以でしょう。(2002年9月20日)


【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
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written by wabisuke hayashi