Scarlatti ソナタ集(11曲)/
Mozart ピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466(クララ・ハスキル(p))


1950年(WESTMINSTER)録音 THE 50's THE50-05  2枚組890円にて購入 Scarlatti

ソナタ集
嬰ハ短調 K.247
ト長調 K.2
ハ長調 K.132
ト短調 K.35
変ホ長調 K.193
ヘ短調 K.386
ヘ短調 K.519
イ長調 K.322
ロ短調 K.87
ハ長調 K.515
ヘ長調 K.6(K.437表記は誤り)

Mozart

ピアノ協奏曲第20番ニ短調K.466

クララ・ハスキル(p)/ヘンリー・スヴォボダ/ヴィンタートゥーア交響楽団

1950年(WESTMINSTER)録音 THE 50's THE50-05 2枚組890円にて購入

 なんどもサイトネタに使った話題だけれど、2009年前半は歴史的録音の大量処分(ちゃんとカウントしたわけでもないが体感80%ほど)いたしました。耳あたりの良いものばかり求めるようになっているかな?音質厳しいものは聴く機会が減りました。ま、クララ・ハスキルほどの存在になると別格でして、オリジナル音源ではないCDだけれど、記憶ではLP時代からパッとした音質ではなかったはず。

 スコット・ロスがScarlatti ソナタ集全曲録音の偉業を達成(1984/85年)していて、当時若く、気力体力充実かつ貧しかったワタシは、FMで一生懸命(1本100円の)カセットにエア・チェックしたものです。その数計20本。早朝のバロック専門の放送では、たしかロスだけではなく、種々様々な演奏を放送して下さって、たいへんなお勉強になりました。やがて幾星霜、ピーター・ヤン・ベルダー全集(2000〜2007年)36枚を8,000円ほどで入手できる身分となりました。お気に入りですよ、ずっと。シンプルで小さくて、各々が多彩な宇宙を持っていて・・・

 このソナタ集は多くのピアニストに愛されていて、どんな方向でも表現可能。大Bach と同い年(1685年生)とは思えぬ、愛らしい旋律には浪漫の香りさえ感じるんです。クララ・ハスキルのScarlattiは大昔から定評のあるものだし、必ずどこかで聴いたことのある懐かしい旋律ばかり〜少々の音質不備を忘れさせ、しっとりデリケートなタッチで聴き手を夢見心地に連れ去ります。

 バロック音楽がどうの、とか、そういったジャンル分けがほとんど無意味であることを悟ります。ある作品では涙を浮かべて沈黙を守っているようでもあり、別の作品ではシンプルな喜びが静かに、ゆったりと広がりました。はしゃがない、叫ばない、ちょっぴり哀しく、寂しく、淡々と物語は進みます。繊細だけれど、弱くはない。静謐ではあるが、曖昧ではない。タッチは明快であり、自然であり、神経質を感じさせない。技術は盤石だけれど、表面を艶やかに糊塗しない。軽妙洒脱だけれど、軽薄ではない・・・

 ニ短調協奏曲K.466は彼女の十八番(おはこ)であって、最晩年のステレオも含め複数の録音が存在します。Mozart の作品中、屈指のデモーニッシュな劇性を誇って、浪漫方向に表現しても違和感のない名曲であります。冒頭のソロから、ちょっぴり、微妙なルバートが掛かっていて、その効果たるや胸がつぶれるほどの切なさ。静寂なる雄弁。スヴォボダのバックも知名度から想像も付かないほど、まったり味わいがあってソロを引き立てます。上手くはないが、旋律サウンドに”泣き”がある。音質は先のScarlattiより劣ります。

 ワタシは古楽器派であって、粗野で軽快なリズムと響きを愛する者。それでもクララ・ハスキルの甘美な切なさになんの違和感もない・・・のは、おそらくはこの演奏こそ、この作品との出会い、刷り込みだからでしょう。疾走し、揺れ動き、優雅に歌うピアノ。その深い息遣いに、作り物は感じないんです。淡々とした第2楽章「ロマンツェ」に癒され、終楽章はあくまで急(せ)かず、しっかりと悲劇を刻みます。激しく鳴り響くオケを諫めるように、ピアノはそっと鳴り続けます。

 劇性を強調しない。媚態を作らない。切ない。出来上がった音楽は、これも素晴らしいMozart だ。無条件幸福。

(2009年9月18日)

【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
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written by wabisuke hayashi