ヴォルフガング・サヴァリッシュ
/スイス・イタリア語放送管弦楽団(1964年ライヴ)
Bach
ブランデンブルク協奏曲第5番ニ長調 BWV1050
ルイス・ガイ・デス・コンボス(v)/アントン・ツッピガー(fl)/ルチアーノ・スグリッツィ(cem)
Schubert
交響曲第3番ニ長調 D200
Beethoven
交響曲第4番 変ロ長調 作品60
ヴォルフガング・サヴァリッシュ/スイス・イタリア語放送管弦楽団(ルガノ)
DOCUMENTS 223602/CD8 1964年6月4日 ルガノ・ライヴ10枚組 1,700円程で再購入
人はなにかを得た分だけ、なにかを失っていく。それは誰にもわからない〜開高健の言葉だったか。それなりの生活の安定はもちろん必要だけれど、こどもであった当時LP一枚2,000円はあまりに高価で、1,000円廉価盤を宝物のように集中して聴いていた頃の無垢な感動が蘇りません。この10枚組はたしか現在1,000円ほど?モノラルなのが残念だけれど、かなり良質な放送録音からのCD化、懐かしく拝聴いたしました。
ここ最近、フル・オーケストラのレパートリーとしては消えてしまったBach 作品、前回拝聴の印象と全然変わらず。実演を経験した結果、スグリッツィのみごとなチェンバロは大音量で鳴る現代楽器なのか、それとも別途マイクで拾っているのか、ライヴとしてはとても良いバランスにて響いております。弦楽器の響きも編成を刈り込んで、清潔スリムなサウンドに至って、21世紀の耳にもそう違和感はありません。テンポ設定は早すぎず、遅すぎず、リズム感もあってバランス良く、さすがサヴァリッシュの面目躍如スイス・イタリア語放送管の主席と思われる二人のソロも清潔な味わいに奏しておりました。
Schubert の交響曲は長く苦手としてきて、ここ最近ようやく第8番「未完成」、第9番ハ長調をぼちぼち復活聴きしているところ。このニ長調交響曲は、第1楽章がゆったり荘厳なる序奏〜快活な主部に至るところが次演奏、Beethoven 交響曲第4番と似ております。陰影豊か、弾むような歌謡的な旋律が素敵、Mozart を連想させる暗転もあります。堂々たる風格で締め括られて第2楽章「アレグレット」へ。これはHaydn風、素朴で屈託のない風情となります。途中、なんともノンビリとしたクラリネットが優雅。
第3楽章 「メヌエット」はゴツゴツとしたリズムに溢れて、既にBeethoven の雰囲気を漂わせております。終楽章は付点リズムが躍動して(タランテラと呼ぶそうな)明るい希望に充ちた躍動であります。なんせ18歳の作品、青春の息吹を感じさせる佳曲也。オーケストラに色気と瑞々しさは足りないけれど、清涼爽やかな音で鳴っておりました。
さて、ここますます苦手度を増しているBeeやん登場。第4番は2012年一度も聴いていない?かも。これが第1楽章序奏、神妙なる出足〜主部に至って熱気大爆発!この辺りの持って行き方かなり上手い。やはり真打ちBeeやんやなぁ、前2作品とは力(りき)の入れ方が違います。作品そのものの厚みが違うのかも。第2楽章「アダージョ」の主役はクラリネット、この安らぎも前作品と似たところと感じます。作品の造りというか、劇的な強弱にインパクトかなりな楽章でした。
第3楽章は「メヌエット」ではなく「スケルツォ」(楽譜には書いていないそう)、衝撃的な激しいリズムであって、牧歌的な木管の中間部対比も成熟を感じさせる技法、聴き手の心をざわつかせるに充分なる変化が次々と訪れます。終楽章「プレスト、ヴィヴァーチェ」の疾走も作品として驚くべき効果でしょう。オーケストラはかなり頑張って弦の縦線を合わせております。これでライヴですからね。もともとのオーケストラのサウンドなのか、会場残響の都合?濃密分厚い響きではないにせよ、精力的な推進力に感心いたしました。
サヴァリッシュは耳目を驚かせるようなエキセントリック路線なはずはなし、どれも安定して+壮年の精力を感じさせます。アンサンブルのコントロールにも優れておりました。
(2012年12月30日)
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巨匠サヴァリッシュ41歳の記録です。この録音を再聴したのは7年ぶりか。やや薄っぺらく散漫だけれど、旧ERMITAGE(=AURA)の音質は意外と聴き易いものです。
1960年代は未だ、管弦楽演奏会のレパートリーとしてバロック音楽は日常だったのでしょうね。ここではかなり編成を絞っていると考えられるが、それでも21世紀の古楽器演奏に慣れた耳には少々懐かしく、豪華に響きます。名手ルチアーノ・スグリッツィのソロ・チェンバロを堪能(見事な、文句ない第1楽章ソロの技量)できるが、これが(時代だから仕方がないが)金属的な現代チェンバロの音色で少々興を削ぎます。むしろ、サヴァリッシュの達者なピアノで聴きたかったですね。
演奏そのものはオーソドックスで、前時代の巨魁なる表現とは一線を画したもの。急かず慌てず、悠々かつ清潔に表現して下さって、オーケストラの団員と想像されるソロとの相性もよろしいと思います。以前のワタシは「特別なものでもない」と素っ気ないコメントを残しているが、ニコレやらシェリングのイメージを期待していたのか?現代楽器によるバロック音楽も大好きです。なんせこども時代の刷り込みですから。
Schubert の交響曲(というか、前中期浪漫派交響曲ほとんど)は苦手としている(罰当たり)ワタシであります。ニ長調交響曲は20分に充たない小ぶりな作品でして、22歳の作品。これ以外の録音はほとんど聴いたことはありません。リンク先引用と比べて、どれよりも演奏時間が短いのは繰り返し問題ですか?それともテンポか。聴取上の印象としては”快速!”的印象なし。
精緻濃密なアンサンブルとは言いかねるが、溌剌とした若さを感じます。物々しいスケールで聴かせるような作品でもなし、少々薄く、乾いた響き(録音印象か)はご勘弁願いましょう。ここ最近、交響曲は緩叙楽章がお気に入りであって、ここでは第2楽章「アレグレット」がHaydn風に牧歌的で素敵です。第3楽章「メヌエット」は元気良いスケルツォ楽章に成長していて、ここはもっとゴリゴリ演ってもよろしかったか、ちょっと集中力足りないかな。中間部のワルツにはほっとしますね。
終楽章は揺れ動くような、笑顔の推進・・・全体として少々生真面目素朴(過ぎ)な演奏であって、オーケストラの厚みはもう少々欲しいところ。でも、この作品、けっこう好きになりました。
さて問題のBeeやん、交響曲第4番 変ロ長調は一年以上聴いていなかった、と記憶します。お付き合いは体調の良いときに第3/5番辺り、明るい第8番はたまに、第9番は年末に・・・随分とたくさん全集もオークション(で安く)処分しました。のべ8セットか。ちゃんと売れるから、世間ではまだまだ圧倒的な人気者なんですね。↓かつての印象では「凄い推進力!」と〜さて、久々の再会や如何。
こちらSchubert に比べ、低音が効いて(ティンパニの威力かな?)なかなか迫力あります。前2曲はウォーミング・アップだったのか。「凄い推進力!」とはあながち誇張でも誤解でもなくて、序奏から主部への突入もアツい爆発がちゃんとありました。ライヴのせいか、もともとのオーケストラの個性か、アンサンブルを几帳面に整える方向はないけれど、このノリノリの熱気なら大歓迎。
弦も管も響きに色気はないですね。鳴らないオーケストラ叱咤激励パターンか。第2楽章「アダージョ」は清潔な表情で爽やかであり、第3楽章「スケルツォ」は前曲Schubert とは桁違いの凝った旋律とリズム、響きになっていてBeethoven の天才を証明しております。ここでもサヴァリッシュは、思い切った切り込みを見せております。若々しい躍動有。
この交響曲の白眉は(言うまでもなく)最終楽章であって、細かいパッセージをピタリ、アンサンブルで合わせていくこと+稀有なる作品の熱気の両立が宿題であります。木管の微妙なるズレなどは無視して、ライヴのアツさを愉しみましょう。オーケストラが鳴らぬ、とか薄いとか、色気がどうの、と言う前に、このノリを賞賛すべき。そらくはこの録音が残った理由は、そこに存在すると思います。 (2008年1月25日)
ERMITAGE ERM154 1964年ルガノ・ライヴ $1.99(2006年オークションにて処分済)
このCD、なんども見かけたけど(500円くらい)手が伸びませんでした。なんか、サヴァリッシュってイメージが四角四面というか、手堅いというか、最近はフィラデルフィアのシェフでしょ?すっかりメジャーでワタシには縁が薄い。このひとは、新進気鋭だった1960年代前半の(例えばVSO辺りとの録音)が気になります。ま、個人輸入の枚数あわせでついでに買ったCDなんですが、意外と楽しめました。
エルミタージュですっかりお馴染みのこのオーケストラ、響きが洗練されず、やや薄い印象。録音のせいもあるのでしょうが、このレーベルの音源選択は慎重で、たいてい音は悪くない。このCD、かなりいい感じのオーケストラに聴こえます。これがサヴァリッシュの力量か。選曲がね、凄いでしょ。独欧系の名曲(Schubert は渋い)揃いで楽しみ。
最近、フル・オーケストラのコンサート・ピースとしては、Bach を取り上げることは少なくなりました。ブランデンブルク協奏曲は、ワタシ無条件幸福的名曲で、以前FMエア・チェックをしていた時代は、どんな演奏でも録音したものです。イタリアの名手、ルチアーノ・スグリッツィが参加していたんですね。
編成をかなり絞って、いかにもバロックらしい親密な演奏。サヴァリッシュらしい、バランスのとれたまとまりのよさ。録音は良心的ながら、やや散漫な印象有。自由闊達なチェンバロもやや遠いけれど、多彩な音色の変化と小技が楽しめます。フルートとヴァイオリンは、オーケストラの団員と想像されますが、特別なものでもない。
Schubert の第3番は渋い選曲ですね。サヴァリッシュがSchubert の交響曲全集を録音したのは、わりと早い時期(1967年)でしたし、得意なんでしょう。どちらかというとハイドンよりの素朴な曲で、メヌエットはそんな味わいタップリ。終楽章のウキウキとしたスピードは、曲も演奏も若々しい。威圧感のない、爽やかな演奏です。
Beethoven の第4交響曲が凄い推進力。軽快で、スッキリとして、ノリノリのテンションの高さ。スケルツォから終楽章のリズムの切れは一流の証明。テンポは中庸で動きはあまりなく、叙情的に粘ったような旋律の歌わせ方とか、重厚さとは無縁。オーケストラはのびのびと演奏していますが、際だった響きの魅力は感じさせないのは残念。
モノラル録音と思いますが、やや広がりも奥行きも感じさせて聴きやすい。遠くから鳴っている感じで、音に芯は不足気味。全曲75分。きっともう一曲くらい短い曲があって、コンサートを構成していたんじゃないでしょうか。そんな雰囲気を味わえる楽しい一枚です。(2000年4月29日更新)
【♪ KechiKechi Classics ♪】 ●愉しく、とことん味わって音楽を●
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