Vaughan Williams 交響曲第5番ニ長調/エリザベス朝のイングランド
/チューバ協奏曲ヘ長調(アンドレ・プレヴィン/ロンドン交響楽団)
Vaughan Williams
交響曲第5番ニ長調(1971年)
「エリザベス朝のイングランド」〜3つのポートレイト(1968年)
チューバ協奏曲ヘ長調(1971年)
アンドレ・プレヴィン/ロンドン交響楽団/ジョン・フレッチャー(バス・チューバ)
RCA 82876-557-8-2/4 6枚組 2,400円程にて入手
RVWは大好きで、交響曲全集も棚中に5セット眠っております。こうして少々つかみどころのない、穏健静謐な旋律を聴いていると、自分の嗜好はこの辺りなのだな、Beeやん苦手の思いだって、こんな音楽との対比なのだな、と気付きます。プレヴィン40歳前後壮年の時代の全集だけれど音質極上、ロンドン交響楽団はさわさわと鳴り響いて、清涼なサウンドを堪能させて下さいました。上手いオーケストラです。
第1楽章「プレリュード」は、長調なのか短調なのかわかりにくい(冒頭開始ホルンは長調〜極上の響き有)。寂しげなコラールの連続のような旋律であり、茫洋として落ち着き、第2主題のクライマックスに到達します。やがて冒頭の静謐な味わいに戻ってエンディング。第2楽章「スケルツォ」は、表題通り諧謔なリズムを刻むが、どことなく寂しげ不安であり、節度のあるユーモラスを感じさせます。ここでの注目はフルートを先頭とした木管かな?途中金管と打楽器の爆発がやってきて、メリハリある楽しい楽章です。サウンドはあくまで清涼。必ず静かに落ち着いて終わるパターンですね。
第3楽章「ロマンツァ」。祈りのように沈静した弦(これが楽章を支配〜痺れるような瑞々しいサウンド)〜そしてオーボエにて開始。やがてフルート、木管が絡み、少しずつ、抑制を利かせつつ、途切れ途切れ、徐々に盛り上がっていく情感。ピークに金管が参加します。木管にも名人揃ってますね(ウィリアム・ベネットとかジェルヴァーズ・ド・ペイエの時代でしょ?)。しっとりとしたヴァイオリン・ソロはジョン・ジョージアディスか。この楽章こそ全曲中の白眉。終楽章は古風な「パッサカーリア」。安寧と穏健の旋律が優しく絡み合って、楽しげ。フィナーレに相応しい快活明快な響きは金管の大活躍、ティンパニのよって作り上げられます。ユーモラスな木管が乱入し、テンポは動いて、馴染みの昔風パッサカーリアとはかなりイメージが異なって複雑。
このまま素直に、安易に盛り上がって終了!かと思ったら、寂しげに暗転して空気が変わりました。不安げな旋律がそのまま劇的に、少しずつ盛り上がって展開。やがて冒頭の旋律が戻ってきて絶妙なる安定が聴き手をほっとさせるでしょう。
名曲。前作第4番ヘ短調に比べると、平易でわかりやすい、落ち着いた味わいの名作だと思いますよ。全41:53、破壊的なサウンドはどこにも出現しない、天国のように美しい時間を過ごせます。
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「エリザベス朝のイングランド」は映画音楽から編まれたそうで、RVWには映画音楽が多いですよ。いかにもそんな感じ、わかりやすい作風。「探検者」〜勇壮な雰囲気は金管の爆発で表現され、途中神秘の静謐は未知への世界の不安を表しているのか。「詩人」〜落ち着いてゆったりとした弦が、詩人の吟じる歌を表現しているのでしょうか。途中四角四面な行進風旋律も顔を出して、ヴァイオリン・ソロも絡みます。ヴィヴラフォーン(だと思う)とかハープが加わって華やかですよ。「女王」は威厳に充ち、世界に君臨した王者の強靱なる迫力有、途中には木管+優しい弦により楚々とした部分も出現いたしました。この作品が収録されるCDをネット検索したが、これしかみつからない・・・
チューバ協奏曲ヘ長調は、ほとんど唯一無二この無骨な楽器をソロに据えた(知名度有)協奏曲でしょう。(他にあることはあるらしいが)ユーモラス快活であり、軽妙(?)なる表情の作品であり、演奏。ジョン・フレッチャーはまさに超絶技巧。細かいパッセージまで正確に、ニュアンスタップリに表現して下さって最高っす!第2楽章「ロマンツァ」の夢見るように美しい”高音”!終楽章は驚くべき細かい音型の疾走!
(2010年6月4日)
【♪ KechiKechi Classics ♪】 ●愉しく、とことん味わって音楽を●
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