Respighi 交響詩「ローマの祭り」/「ローマの噴水」/
「ローマの松」(エンリケ・バティス/ロイヤル・フィル)


Respighi

交響詩「ローマの祭り」
交響詩「ローマの噴水」
交響詩「ローマの松」

エンリケ・バティス/ロイヤル・フィルハーモニー

NAXOS 8.550539 1991年録音

 これは十数年ぶりの拝聴。以前のコメントはノーテンキなもの(廉価盤としての役割!なんて)だけど、曰く

細部が粗い。これは複雑で魅惑的な旋律が絡み合うでしょ。ところどころ、キメが入って一区切りなんですが、その旋律のリズム感、止め、というか「間」が甘い感じ。それと(これは誰かの演奏の記憶があるのか?)爆発するところと、甘美な静謐さの対比が弱い。ま、全部爆発しちゃって、それがバティスの良いところなのでしょうが、全曲通して聴くのは少々ツラい
 ・・・なるほど。ブライアン・カルヴァーハウスの名録音は臨場感たっぷり、拝聴途中女房殿より「ご近所迷惑!」と声が掛かるほどの金管大爆発大音響ド迫力!世評が割れるのは常のこと、どこかのコメントにて(記憶失念)ティンパニの入りの遅れ、一部管楽器ソロの音程ミスの件指摘有、ライヴさておき、セッションだったらその辺りしっかり修正を望みたいところ。(最近のライヴ収録は複数回の演奏より編集している)印象は上記昔のコメントとあまり変わらぬことを前提に、少々粗い、シンプルな推進力をしっかり堪能いたしました。これはヴェリベストではないにせよ、価値ある一枚也。昔懐かしい”爆演”系の代表例でしょう。(音楽日誌2017年5月より)

 ↑ 数ヶ月前に上記簡単な再コメントがあって、現在ここではモウレツな残暑+全国では異常気象(低気温のところ、豪雨、雨続きなど)に体調維持に苦戦する日々に再び拝聴しております。華やかな近現代オーケストレーションは夏に相応しいものでしょう。Enrique Batiz(1942-)は墨西哥出身のヴェテラン、廉価盤に多く登場して自分には馴染み深い”爆演系”指揮者であります。音質が優れていることが必須条件の名曲、華やかにオーケストラが鳴っても低音不足かな?ちょいと。

 交響詩「ローマの祭り」。冒頭「チルチェンセス」(Circenses)から爽快にオーケストラが鳴り切って、ロイヤル・フィルのリミッター外した金管大爆発。それだけで快感、この人は基本やや速めのイン・テンポ、思わせぶりなテンポの揺れに推進力の逡巡もない、意外と淡白な演奏かも。五十年祭 (Il giubileo)の教会の鐘〜十月祭 (L'Ottobrata)のセレナーデ(マンドリン)の静けさも上々、その対比ラスト主顕祭(La Befana)の大騒ぎぶり(「グチャグチャ」「オーケストラがバラバラ」との世評にも一理有)これがバティスの個性でしょう。毎日聴けないけど、体調のよろしい時に聴くとストレス解消に最高っす。これが一番バティスの個性が出ているみたい。

 交響詩「ローマの噴水」。静謐かつ夜明け前の清涼な空気漂う「夜明けのジュリアの谷の噴水」( La fontana di Valle Giulia all'alba)、朗々たるホルンとヒステリック!?な弦が輝かしい朝の光を表現する「朝のトリトンの噴水」( La fontana del Tritone alla mattina)、「真昼のトレヴィの泉」(La fontana di Trevi al pomeriggio)は輝かしく勇壮な大爆発がやってきて、この辺りバティスの面目躍如。前曲「主顕祭」の阿鼻叫喚に比べて作品個性なのか、「黄昏のメディチ荘の噴水( La fontana di Villa Medici al tramonto)」の静謐に収束する哀愁も含め、ここではよくまとまった演奏になっておりました。

 そして一番人気(ワタシも一番好き)交響詩「ローマの松」へ。「ボルゲーゼ荘の松」(I pini di Villa Borghese)冒頭の金管キラキラ、デーハーなホルン先頭に賑々しいフル・オーケストラ華やか全開。こども達が元気に遊ぶ風景とか、ここは文句なし。「カタコンバ付近の松」(Pini presso una catacomba)に於ける荘厳な風情(ざっくり仕上げ)「ジャニコロの松」(I pini del Gianicolo)の静謐な幻想と安寧のまま、カッコ良い「アッピア街道の松」(I pini della Via Appia)古代ローマ軍の行進へ。前のめりにテンポを上げていくバティス、ここはいくらでも勿体つけて、煽った表現が可能なところ。一気呵成にパワフルだけど、サラリと仕上げて終わります。数ヶ月前”少々粗い、シンプルな推進力”と感じたのは、この作品でしょう。アンサンブルの仕上げは少々粗いかも。

 人気作品だから生演奏経験はあって、二階席のバンダ(別働隊)はカッコよかったな。ラスト、ピアノのお兄さんが飛び上がって叩きつけていたっけ。

(2017年8月26年)

 この原稿執筆時点、盛夏激暑真っ盛り。(重複表現)体調極めて悪く夏バテで体調不良。(重複表現)休日にスポーツクラブに行く元気が出なくて、部屋の冷房をよ〜くきかせて、こんな音楽をガンガン聴いております。いかにも近代的な、演奏効果がバリ派手な有名曲。嫌いじゃありませんよ。でも、そうそういつも聴こうとは思わない。

 この録音はけっこう有名で、カルヴァーハウスの優秀録音なんです。(重複表現)曲が曲だし、バティスはいかにもエゲツなくオーケストラを鳴らすタイプなので、ストレスのたまった方には(とくに若い方々)には効くのかも知れません。で、ひさびさに聴いてみると、これがもう予想通りというか、期待通りの爆演でした。お勧め。終わり。


 これじゃエラく短すぎるので、もう少し。まずロイヤル・フィルですが、このオーケストラはほんとうに面白い。個人的には1960年前後、ビーチャムのエレガントな録音の記憶があって好感が持てます。その後、経営危機だったり、超過密労働だったり、「フックト・オン・クラシック」の大ヒットで経営難を乗り越えたり、と波瀾万丈、ときどき粗っぽい演奏が気になることもありました。

 バティスはメキシコ出身の中堅だけれど、明快な音楽を作ってくれて、高らかに歌ってくれるから気持ち良いんです。妙に考えすぎたり、神経質になったりしないから、曲によってはピタリとハマる可能性大。「ローマ3部作」は、期待通り金管が気持ちよく大活躍するし、録音の分離も最高で、もう聴いていて圧倒されるくらい。

 アンサンブルが粗いわけでもないし、完成度は高い。こんな真夏の燃えるような、日差しの中で聴くには最高でしょう。なにもよけいなことは考える必要もないし・・・廉価盤としての役割を、遙かに凌駕して余りある価値有。

 でも、ワタシは文句をつけたくなる。細部が粗い。これは複雑で魅惑的な旋律が絡み合うでしょ。ところどころ、キメが入って一区切りなんですが、その旋律のリズム感、止め、というか「間」が甘い感じ。それと(これは誰かの演奏の記憶があるのか?)爆発するところと、甘美な静謐さの対比が弱い。ま、全部爆発しちゃって、それがバティスの良いところなのでしょうが、全曲通して聴くのは少々ツラいかも知れません。

 演奏が終わったあとになにを感じるかは、人それぞれでしょう。ワタシは疲れてしまいました。余韻をももう少し感じたい。でも、バティスもロイヤル・フィルも好きですよ。

 同趣向のCDとしては

Grofe
組曲「グランド・キャニオン」
組曲「ミシシッピー」(RPO)
Copland
組曲「赤い子馬」(メキシコ・シティ・フィル)

IMG IMGCD1613 があります。(輸入盤で探すと安い)そちらのほうが、曲的にいっそうバティス向きかも。

(2001年8月24日)


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written by wabisuke hayashi