ロマンティック・ヴァイオリン小品集(グルベルト/コーガン/ヴァイマン)


YedangClassics YCC-0064
Sarasate

ツィゴイネルワイゼン(1984年)

Vitali

シャコンヌ ト短調(1981年)

イリア・グルベルト(v)/ナウム・グルベルト(p)

Tartini

ヴァイオリン・ソナタ ト短調 「悪魔のトリル」

ミヒャエル・ヴァイマン(v)/ナウム・グルベルト(p)(1985年)

Saint-Sae"ns

ハヴァネラ

レオニード・コーガン(v)/ニーナ・コーガン(p)(1981年)

Sarasate

アンダルシアのロマンス

レオニード・コーガン(v)/ナウム・ワルター(p)(1969年)

GODOVSKY

昔の春(1984年)

Ravel

ツィガーヌ(1983年)

イリア・グルベルト(v)/ナウム・グルベルト(p)

すべてライヴ録音

YedangClassics YCC-0064  10枚組3,990円

 米PIPELINE原盤によるロシア秘蔵音源を集め(既に消え)た韓国レーベル「YedangClassics」。毎週粛々と棚中CDをオークション処分しているが、まだまだ市井の音楽愛好家が残りの人生でしっかり聴くには多すぎる枚数在庫有。(でも、ボックスものが安いから買い足しちゃって結果、総枚数はなかなか減らない)この執筆時点、YedangClassicsはざっと90枚残っていて購入既に5年以上を経、1/3は未開封状態〜深く反省いたします。(聴いたものから順繰り処分している感じもある)

 このヴァイオリン小品集は魅力的な作品、音源満載なんだけど、(いかにもこのレーベルらしく)コンピレーションが粗雑で無定見なんです。とくに音質水準の違い(ライヴでもあるし)は気になるものです。イリア・グルベルト(1978年チャイコフスキー・コンクール優勝)だけで一枚仕上げられなかったのか、他のヴァイオリニストの演奏が悪いワケじゃないが。ほとんど収録作品お気に入り連続技の一枚。

 グルベルトは初耳でした。これが意外と泥臭い音色でして「ツィゴイネルワイゼン」は旋律がクサいから、そういう表現なのかな、と。これは悪くないですよ。でも、イタリア・バロックである「シャコンヌ」にはいっそう洗練されない揺れがあって、かなり個性的、というか劇的な旋律を強調し過ぎかと思います。やや神経質でもある。

 ミヒャエル・ヴァイマン(v)は「悪魔のトリル」のみの収録。ディーナ・ヨッフェ(p)の夫君だそう。雰囲気変わって楚々としたヴィヴラートも抑制的、表現としてぐっと練り上げられておりますね。あまり目立たないが、フレージングの処理細部が丁寧で粛々と地味に進めていく感じ。著名作品としていくらでも派手な味付けができそうだけれど、常に端正を崩さない。

 レオニード・コーガンは、他の収録から抜きんでておりまして、誰でも「ハヴァネラ」が始まったら、その違い歴然と理解可能。凛とした気品と強靱なるメリハリ、テクニックのキレ、輝かしい音色、艶が桁違い。この巨匠のヴァイオリンは(いつ聴いても)ほんまに凄い!

 グルベルトに戻って、GODOVSKYの作品は懐かしい、まるでKreislerを彷彿とさせるワルツとなります。「ツィガーヌ」はいくらでもクサく表現していただきたい旋律だけれど、コーガンに続けると、どうも”鳴らないな、スケールが小さいな”と感じました。音質印象かも知れません。妙なコメントだけれど、ナウム・グルベルトのピアノが鮮やかな技巧で支えております。Sarasate同系統の旋律を流用した作品だけれど、Ravel の手に掛かると思いっきり、フクザツかつ魅力的に仕上がることにも感心いたしました。

(2009年5月22日)

【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
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written by wabisuke hayashi