「指環」への道〜Wagner 楽劇「ラインの黄金」
(ギュンター・ノイホルト/カールスルーエ・バーデン州立歌劇場管弦楽団)
Wagner
楽劇「ラインの黄金」(全曲)
ヴォータン:ヴェグナー、 フリッカ:エルンスト・モシュライティス
ドンナー:ハンヌラ、 フライア:フローレン
フロー:ムラロ、 エルダ:エジシング
ローゲ:ヴィーンシェンク、 ヴォークリンデ:ブリュッゲマン
アルベリヒ:ブリヤク、 ヴェルグンデ:フォーダ
ミーメ:ノヴァーク、 フロースヒルデ:エルンスト・モシュライティス(二役?)
ファゾルト:ヤング、 ファフナー:スミス(以上、読み方ほとんどウソ)
ギュンター・ノイホルト/カールスルーエ・バーデン州立歌劇場管弦楽団(1993年〜1995年ライヴ)
BRILLIANT 99626/1-2 14枚組 $27.86 (日本で買えばもっと安かったかも)のウチの2枚
「指環」前夜にあたる「ラインの黄金」は、悲劇の発端だそうです。ヴォークリンデ、ヴェルグンデ、フロースヒルデという3人の若く美しいラインの乙女が、ドすけべぇな中年ぶさいく男(ん、オレか?)アルベリヒ(小人族の王)をからかうんですよ。もてない男をもて遊んではいけません。この辺りは、映像で見たいもんですね。「若く美しい娘」のはずが、おばさんがやっていたりするはず。(失礼)
無限の力を与えられ、全世界を支配できる「ラインの黄金」から作られる呪いの「指環」。アルベリヒはそれを持っていってしまう。いっぽう、神々のヴォータンは巨人族に「奥さん(フリッカ〜結婚の神)の妹(フライア〜美の神)をやる」ことを約束に、大きな城(もしかしてワルハラ城?)を造らせるが、「かわりにお宝をたくさん上げるから」と・・・・・。これ、よくありがちな登場者〜嫌われ者の知恵者・ローゲ(火の神)の発案なんです。
そのお宝を、指環の力でニーベルング族を支配していた悪者アルベリヒから奪って、巨人族に渡す。って、神々が強盗しちゃいけませんなぁ。その時、呪いの「指環」もいっしょに渡して、さっそく巨人族は殺し合ったりします。
そして、有名な神々のワルハラ城への入城で幕を閉じるわけですが、このラストの部分は、管弦楽抜粋でもよく出てきていてお馴染みでした。「ラインの黄金」はCD2枚分なので、ま、2時間強頑張っていれば聴き通せます。正直、感想を書くほどの基礎知識もないんですが、せっかくなので感想文を少々。(勘違いがあったらごめんなさい)
「指環」の録音は、ショルティの事例を見ても録音作業そのものがドラマになるくらいの大事(おおごと)だし、ライヴも含めて超一流のオーケストラ、スター歌手が活躍する録音ばかりだと思います。つまり、一世一代の大仕事。ショルティ盤は(部分しか聴いたことはないが)、この曲に対する一つの規範になっていて、優秀な(というか、芝居掛かった、というべきか。ヴォータンが「指環」を宝の山に放り投げる音まで収録)録音、豪華で輝くような管弦楽。
それに比べると、このバーデン歌劇場のライヴは、とくべつな技量を持ったオーケストラではないし、歌手は(ワタシが知らないだけか)CDなんかでお馴染みの名前もありません。つまり日常のレパートリーとしての収録。(FM放送で、どこかの地方劇場のライヴを放送している感じ、そのまま)こうやって録音として残るくらいだから、その筋では話題となった評価の高い舞台だったのでしょうか。
ノイホルトという指揮者自体が渋い存在だし、有名な「神々の入城」は、セル/クリーヴランドの超精密な演奏で覚えたワタシとしても「金管の怒濤の迫力が足りないじゃないか」と感じました。でも、舞台の音ってこんなんだと思うのです。特別な「録音芸術」(それはそれとして貴重)としてではなく、歴史あるオペラ・ハウスで付近の住民も楽しんでいる音楽の収録。
ライヴは好きだし、こういったフツウっぽい雰囲気も嫌いじゃありません。(好き・嫌いが言えるほどの「指環」経験がない)歌手のみなさんも、はっとするくらいの強烈な個性はないかもしれませんが、ワタシはみな立派だと思いました。コメントするほどの比較対象がない。でも、最終版に疲れて、声が出なくなる人も散見されます。「声の魅力だけで、ぐっと引き寄せられる」というのは少ないかも。(2000年12月22日)
参考資料 「ニーベルングの指環」対訳台本〜ライトモティーフ譜例付 (訳;天野晶吉 ライトモティーフ分析;川島通雅) 新書館 1990年発行
たしか、クラウス盤を買ったときに「申し込み券」みたいなのが付いていて、定価5,000円を半額で買ったような記憶がある。ま、オペラに対訳は必須でしょう。できるだけ安くCDは買って、対訳の本にお金を回すしかない。
匿名氏からさっそく粗筋など補足あり。
で、「ラインの黄金」から。
<「若く美しい娘」のはずが、おばさんがやっていたりするはず>というのは当り。
しばしば、見ていてて苦しくなるくらいの太ったおばはんが、舞台狭しと塞いでいる
のはかなり滑稽ですね。
<全世界を支配できる「ラインの黄金」から作られる呪いの「指環」>というのは
愛を諦めたものだけが、所有できるもので、ラインの娘に「お前のようなどすけべ
野郎には無理だ」といわれて癪に障ったアルベリヒが、ようしやってやろうじゃ
ないの、といって愛を諦め、指環を手に入れる。(私の解釈では、アルベリヒが
自分で去勢をしたと考えます)
ここで場面が変り、天上界へ。ヴァルハラ城を二人の巨人族(ファフナー、ファゾルト)
に建築を頼み、出来た所へ、巨人たちが謝礼を催促に来る。ヴォータンは自己の権威の
象徴のために建築を意図。だけれど、謝礼にはなんでもやると「口約束」(ローゲの助言)
をする。
神が嘘をつくのか、といって怒った巨人たちはフライアを代償に舞台を
ひっこむ。フライアは美と青春の神で、返して欲しいのなら、地下のアルベリヒから
黄金をかっぱらってこいということで。青春の神がいなくなったので、神々が
しおれてやつれる。(フライアの園のりんごを食べて若さを維持している)。
ローゲは、半分しか神ではないので、一応大丈夫。皆に迫られてローゲとヴォータン
は黄金をかっぱらいに地下へ旅立つ。(ここでの間奏曲が格好良い)
場面転換。アルベリヒは弟ミーメをしぼって、黄金捜索に余念が無い。そこへ、
ローゲとヴォータン登場。指環と隠れ兜を持ったアルベリヒに一つ課題を出す。
大きな物に変身してみろ。そして龍に変身。それでは、今度は小さなものに変身
してみろ。そこで蛙に変身。いまのうちに、といって二人は蛙に変身した
アルベリヒをとっ捕まえる。一杯食わされたアルベリヒとともに再び天上界へ。
(ここでも間奏曲)。
場面転換。アルベリヒに命令して、地下から、部下に黄金をもってこさせる。
ヴォータンはついでに指環も奪取。その際に、アルベリヒは呪いをかける。
持ち主は指環に支配され、やがて死ぬと。
巨人族も戻ってきて、フライアを返すが、その代わりに彼女の背丈だけ、
黄金を積み重ねろと命令。でも、フライアの目が見える。
巨人族:「あぁ、彼女の可愛い目が俺を見ている。その隙間にも黄金をはめろ。」
神々:「もう黄金は無い。」
巨人:「でも、ヴォータンの指に指環があるじゃないか」
ヴォータン:「いや、これは駄目だ」
神々:「背に腹はかえられない。こんなものも返すんだよ」
ヴォータン:「しょうがねぇな」
そこで、指環を得た、巨人族は早速に兄弟喧嘩。弟を殺す。呪いの効果覿面。
どうにもすっきりしないので、雷鳴の神「ドンナ−」が雷を呼び、フローは
ヴァルハラ城まで虹をかける。(ここが、ヴァルハラ城入城の音楽)
ローゲは、こんな阿呆な神々と終焉を迎えるのは御免だといって、炎に身をかえる。
幕。
先ずはこんなもので如何でしょうか?(補足2000年12月29日)
【♪ KechiKechi Classics ♪】 ●愉しく、とことん味わって音楽を●
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