Ravel ピアノ曲全集(アビー・サイモン)


VOXBOX  CDX5012 Ravel

高雅で叙情的なワルツ
夜のガスパール

クープランの墓
ボロディン風に
古風なメヌエット
シャブリエ風に
ハイドンの名によるメヌエット
ソナチネ
逝ける女王のためのパヴァーヌ
水の戯れ
前奏曲
ラ・ヴァルス

アビー・サイモン(p)

VOXBOX CDX5012 録音年不明(1970年前後?)   2枚組1,850円で購入

 1998年にこのサイトをドタバタと始めたが、当時、大阪で珍しいCDはいくらでも探せたし、廉価盤も少数派でした。その後の世界的な不況の陰で、CDの新譜リリースは激減するし、気骨あるレコード屋さんの廃業、既存クラシック売場の大幅縮小が続き、ワタシも岡山へ転居してCD購入には不便になりました。

 一方で激安輸入盤が次々登場して、ある意味、世間的に「廉価盤」は当たり前に。しかも、インターネットの普及で「通販」が主流になりつつあります。このCDは1990年代初頭に購入したもの。まだ廉価盤が日陰の存在で、ただひとり孤独に廉価盤を探していた日々を思い出させる2枚組です。VOXとしては、音質極めて良好。

 サイモン(シモン?)〜このピアニストは、解説には1940年のNaumburg(これ、どこ?)コンクールで名声を勝ち取った、あとはアメリカの大学で教えていた旨書いてあるが、生年、出身などわかりません。ま、名前の通っていない人のCDを買うのは廉価盤道の常だし、そんなことはたいした問題ではない。そうとうなテクニシャンで、しっかりした演奏であるのは一目瞭然。

 「高雅で叙情的なワルツ」(この訳気に食わない。「上品、かつセンチメンタルな円舞曲」で如何か)、「鏡」〜「道化師朝の歌」、「クープランの墓」「逝ける女王のためのパヴァーヌ」「ラ・ヴァルス」・・・・この辺りが管弦楽でもお馴染みで、どちらが原曲か知らないが、ピアノ・ソロで新しい魅力が発見できます。むしろ、こちらのほうが繊細で淡彩なRavel の世界が堪能できる。

 Debussyの怪しげで、自由な不思議さに満ちた世界に比べると、Ravel は精緻に計算し尽くされた、明快な幻想を感じます。彼の管弦楽における極色彩は驚くばかりだけれど、ピアノ曲でも細部まで描き込まれた世界に遜色はない。聴いていて、どんどん心が透明になって行くかのような錯覚。

 ま、Debussyでもそうだけれど、この類の曲は、ムードで弾いちゃいけないんです。細部まで明快であること。技術的に盤石であること。リキまず、劇的になりすぎないこと。むしろ淡々と、よけいな思い入れなしに〜当然、細部のニュアンスは必要だけれど〜弾いていただきたいもの。

 もう20年くらい前かも知れないが、FMで若手ピアニストが「逝ける女王のためのパヴァーヌ」を弾いていて、その粘着質のオーバーアクションに困惑した記憶もありました。この曲、気品ある旋律が胸を打つが、アビー・サイモンの演奏はイン・テンポで理想的な世界。それでこそ、Ravel のクールな世界がよく見えて来るもの。

 全編、駄作は存在せず、磨き上げられた旋律の連続にドキドキする思い。アビー・サイモンのテクニックは明快で、細部まで旋律の弾き崩しがないのはもちろん、思わせぶりなテンポの揺れも、飾りも存在しません。特別輝くような美音でもないが、Ravel の魅力が全面的に開花している。

 「ラ・ヴァルス」は名曲ですね。ワタシはブーレーズ/ベルリン・フィル(ライヴ)の、「仏頂面+オケの超お色気」演奏が気に入っております。でも、アビー・サイモンのピアノによる「ラ・ヴァルス」のほうが、いっそう好き。それは、聴き手の脳味噌の中で色彩の自由な発想が広がるからです。(2001年9月21日)

* いまなら、BRILLIANTでポール・クロスリーの全集が格安で手に入ります。しかも、ファーガス・トンプソンのDebussyの全集までご一緒して計7枚2,000円程か。良い時代になりました。


【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
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written by wabisuke hayashi