Ravel 「ボレロ」「スペイン狂詩曲」「ダフニスとクロエ」第2組曲
(シャルル・ミュンシュ/パリ管弦楽団)
Ravel
ボレロ
逝ける女王のためのパヴァーヌ
スペイン狂詩曲
「ダフニスとクロエ」第2組曲
シャルル・ミュンシュ/パリ管弦楽団/ロジャー・アブラハム(hr)
エコー・インダストリー CC-1063 (EMI録音) 1968年年録音 中古609円にて購入
お恥ずかしい限りだけれど、駅売海賊盤しかもかなり高額での購入の一枚也。じつは2度目の購入でして(地方に住まう友人にあげてしまった)中古屋さんで見掛けたら、どーしても欲しかったでんす!ワタシはミュンシュの録音を聴く度、いかにも心臓に響きそう〜そんな感想を抱くくらい驚異的な推進力に興奮を覚えます。この一枚も同様、というか極北、代表盤。このCD収録中どの作品も、おそらくベスト。しかも録音極上(この駅売海賊盤でも)。
仏蘭西文化の精鋭を目指して1967年設立されたパリ管だけれど、ミュンシュ急逝後はカラヤン、ショルティ、バレンボイム、ビシュコフ、ドホナーニ、そしてエッシェンバッハと非・仏蘭西系ばかりシェフが続きました。これはいったいどういうことなのでしょうか。現在に至って、このオーケストラになんの興味もありません。ミュンシュがあと10年ほど長生きして下さったら、様子は変わったでしょうか。絶好調のパリ管がここで聴かれました。
「ボレロ」が(まず)凄い。というか、掟破りのアッチェランド炸裂!ゆったりと澄ました表情で開始された馴染みの旋律は、なかなかセクシー(ボストン交響楽団より、いっそう)だけれど、この人の神髄は即興的なノリでありまして、上品なサウンドのまま煽っていくんですね。テンポとともに上がる体温、血圧、心拍数・・・もちろん呼吸も激しくなって、圧巻の、文句ないクライマックスで終演します。ほんま、凄い!
「パヴァーヌ」の旋律表現も、まるで一筆の勢いのまま一気にレイアウトしたような風情があって、オツに澄ましてもったいつけたものではない。細部の彫琢より流れを重視した演奏だけれど、仕上げが雑なわけでもないんです。ロジャー・アブラハム(hr)のゆらゆらとした響きに痺れること、必定。「スペイン狂詩曲」の気怠さ、繊細さ、そしてリズムの切れの(かなり薄っぺらい、しかし気品があって明るい)鋭さ、疾走、軽快なる爆発。打楽器はノリノリです。
「ダフニスとクロエ」第2組曲には”香り”が必要なんです。先日聴いたミヒャエル・ギーレン/南西ドイツ放送交響楽団(1997年)の全曲だって、その透明でクリアな響きを充分堪能したものです。でもね、ミュンシュのマジックは、眼前にきらきらした光の屈折、大気の匂いが揺れるんです。粘着質にならない、重苦しく響かない、あくまでさらさらと淡彩で明るい〜フランスのオーケストラにはアンサンブルの集中力が足りない・・・そんなことさえ考えさせない薫り高い演奏でした。最高。
尚、このCDは「【♪ KechiKechi Classics ♪】2006年勝手に各自アカデミー賞」〜林 侘助。推薦盤でございます。
(2007年11月16日)
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BBSに書き込み有(サンセバチャンさま)
パリ管とのラヴェル、LPでは大変良い音でしたが、artマスタリングのCDでは痩せた音で楽しめません。
本来、EMIらしからぬ名録音で、陰影ゆたかな、黒のトーンが深い音と演奏だと思います。
「夜明け」のきらめく音の粒子感に感動します。
(ワタシのお返事)
「ミュンシュ駅売海賊板起こしリマスタリング」〜皮肉にもそのLP時代の音が刻印された、ということでしょうか。かなり理想的な音質でした。大切にしよ。
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