Rachmaninov ピアノ協奏曲第3番ニ短調
(イディル・ビレット(p)/エーリヒ・ラインスドルフ/ボストン交響楽団1963年デビュー・ライヴ)
Rachmaninov
ピアノ協奏曲第3番ニ短調 作品30
イディル・ビレット(p)/エーリヒ・ラインスドルフ/ボストン交響楽団
1963年デビュー・ライヴ/LP復刻の音源がネットで拝聴可能
あいも変わらず粗雑な音楽の聴き方を反省する毎日であります。パブリック・ドメインの歴史的音源が無料で手に入ることはなんどもサイトにて言及したが、現役演奏者がサイトにて(宣伝の意味かな?)けっこう自由に音源をダウンロードさせて下さるところもあるんです。CD購入は細々(いえ、けっこうそれなりの量で)継続しているけど、.mp3音源を.wav化してCDROMに焼く「自主CD」は日々枚数を増しております。トルコ出身の名女流のサイトにも貴重な音源がアップされ、これは放送録音のLP音源みたいですね。アナウンスも針音も入っていて、音質それなり、臨場感たっぷり。(女性に年齢は失礼ながら)21歳アメリカ・デビューであります。
これは凄い熱演です。音質問題も含め日常座右に置いて愉しむべきリファレンスにはなり得ないだろうが、一期一会的燃えるような興奮を堪能できます。ぐいぐいと前のめりの快速テンポ、鮮やかなる技巧の切れ味に一切の迷いもなく、眩いほどに輝かしい。浮き立つような熱風が充満して、会場の興奮はびんびんと伝わります。第2番ハ短調の甘美な陶酔に比べ、油断するとやや技巧的表層に走る可能性を持った作品だけれど、そんな懸念を吹き飛ばすような、なんの迷いもない新鮮ストレート系演奏であります。全曲で36分ほど。
第1楽章のソロは冷静に、静かに、そして浮き立つように開始されます。速い!急いて前へ前へと走るピアノ、やがてオーケストラが美しくソロを包んで諫めるが、油断すると若者はどんどん先へと進むんです。ビレットのピアノ(ボールドウィンとのこと)には硬質金属的な切れ味印象があって、時に”叩き過ぎ”が気になるんだけれど、ここでは細身のサウンドがきらきら魅力的。ヴェテラン・ラインスドルフも合わせるのはたいへんでしょうね。カデンツァは「オッシア」(大カデンツァ)なのかな?違ったらごめんなさい。→結論的に違うそうです。
第2楽章「間奏曲」は馴染みの甘美なオーケストラが、纏綿と切なく歌って開始いたします。ピアノも思いっきりゴージャスかつリズミカルに歌うが、濃厚な表情ではなく清潔、凛とした佇まいを崩さない。(途中針音かなり有/懐かしい)素晴らしい技巧の冴えですね。強面バリバリといったタイプではなく、明快正確に描き込んでいく感じ。やがてアタッカで終楽章へ突入、ソロに休む暇を与えず(当たり前だ!)軽快に流れよく進むピアノ。明らかに露西亜系粘着質とはサウンドが異なります。
最終盤に向け、熱と勢いを増していく快速ピアノ。美しく整えようとか、タメをつくって旋律を浮き立たせるとか、そんなことは考えていないでしょう。時に伴奏との微妙なズレもあるが、それさえ微笑ましい。馴染みの(ワン・パターンなる)ゴージャスなフィナーレを迎えて、聴衆を興奮の坩堝にダメ押しします。
会場現場に居合わせた人々と、保存された音源を(ネットを通して)聴いた東洋の片隅で、感動の共有可能。 (2010年4月9日)
【♪ KechiKechi Classics ♪】 ●愉しく、とことん味わって音楽を●
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