Rachmaninov ピアノ協奏曲第2番ハ短調 作品18
(スヴャトスラフ・リヒテル(p)/クルト・ザンデルリンク/レニングラード・フィル1959年)


MEISTERKONZERTE100枚組100/57枚目 Rachmaninov

ピアノ協奏曲第2番ハ短調 作品18

スヴャトスラフ・リヒテル(p)/クルト・ザンデルリンク/レニングラード・フィル(1959年)

前奏曲ト長調 作品32の5/ト短調 作品23の5

ゲーザ・アンダ(p)(1956年)

MEISTERKONZERTE100枚組/57枚目
RUSSIAN REVELATION RV 10064(これはかなり以前に購入してあったもの/更にYEDANGCLAISSICS盤を所有していたけれど、さすがにそれは処分済)

 この100枚組にもずいぶんとお世話になっちゃいました。

 ワタシがまだ小学生の頃、著名なるTchaikovsky ピアノ協奏曲第1番のレコードを買ってもらいました。当時、30cmLP相場2,000円也。まだカレーとかソバが100円の頃だから現在換算するとおおよそ6,000円ほど?超・贅沢品、だから1,200円廉価盤(fontanaレーベル)を買ってもらいました。それは妙に音がよろしくない〜モノラル録音という意味合いさえ知らぬ頃。でもね、B面に入っていた甘美な旋律が気に入りました・・・それがこのリヒテルの演奏。翌年のステレオ録音(ヴィスロツキ/ワルシャワ・フィル)は音質も良好だし、著名だけれど、こちらやや古めかしい音質のほうも(たっぷり)聴き応えありますよ。”MEISTERKONZERTE100枚組”では(c)1955表記だけれど、おそらくはパブリック・ドメインを意識したものでしょう。間違いなく1959年2月18日録音と同一。

 深く、重く、魂を揺さぶるような強靱タッチは新旧録音とも変わらない魅力、しかし、オーケストラが違うんです。ザンデルリンク率いるレニングラード・フィルはほの暗く甘く練り上げられ、やるせない響き。ワルシャワ・フィルもローカル鄙びた味わいは素敵ながら、比較すると少々苦しいでしょう。リヒテルのRachmaninov は久々、数年ぶりに拝聴したが、子供の頃の白熱した感激に些(いささ)かの劣化もなし。叩き付けるような硬質なタッチなんだけど、ただ無意味に力んでいるワケじゃない。変幻自在の抜いたところの優しい対比、ビロビロ・ヴィヴラートのホルンとの呼応。技巧は壮絶な切れ味なんだけど、無機質機械的な打鍵には絶対に至らない・・・

 第2楽章「アダージョ」が白眉だと思うんです。Rachmaninov の旋律はどれも甘美で、やがてそれはハリウッドの映画音楽に影響を与えるんだけれど、ここ最高。つぶやくようなシンプルなピアノのアルペジオに乗って、木管が歌います。やがて、その主題は木管とソロを交代させる〜リヒテルのタッチはいつだって硬質強靱明快、デリカシーは失わない。曖昧さを嫌うだけなんです。なよなよした”シナ”とは無縁、断固溌剌とした表現は甘さ充分に濃い。緩徐楽章でも白熱した疾走と絶頂〜驚くべきテクニックに支えられて絶品であります。

 終楽章。ユーモラスなオーケストラのつぶやきから、華々しいピアノが花火のように炸裂いたします。技巧は技巧の披瀝のために存在せず、作品表現に奉仕するために存在する〜そう確信できます。やがて、いかにもハリウッド映画(往年の恋愛映画の大団円)風(これまた)とろ甘い旋律が纏綿と歌って、表現はキラキラ硬派そのもの・・・凄い説得力。テンポアップして熱狂の波、止まることを知らず・・・音質の不備はすぐ忘れますよ。

 ゲーザ・アンダの前奏曲集は珍しいですね。協奏曲が34分ほど、合わせても42分ほどの贅沢収録。でも、ここ最近集中力が落ちているからこれで充分です。ト長調 作品32の5は夢見るように繊細な旋律であり、ト短調 作品23の5は馴染みの土俗的なリズムに溢れます。アンダはリヒテルよりクール知的な表現で、じっくり説得系演奏也。

(2010年12月31日)

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written by wabisuke hayashi