Rachmaninov ピアノ協奏曲第3番ニ短調 作品30(ジョナサン・オシュリー(p)/
エン・シャオ/クワズールナタール・フィル2004)


Jonathan Oshry(1975-) Rachmaninov

ピアノ協奏曲第3番ニ短調 作品30

ジョナサン・オシュリー(p)/エン・シャオ/クワズールナタール・フィル

2004年ライヴ

ネット公開音源

 南アフリカ出身のピアニストといえばクリスチャン・ベザイデンホウト(1979-)辺りは有名でしょうか。Jonathan Oshry(1975-)は”ジョナサン・オシュリー”とネット検索しても【♪ KechiKechi Classics ♪】しか出現しないような?もしかしたら読み方違い?(例えばジョナサン・アシュレイとか)ま、Jonathan Oshry検索でも結果はそう変わらない(Chopin のCDが一枚出現するくらい)。音源入手したリンク先に伴奏や録音情報はないでしょ?自主CDに作成して5年程、この度ダウンロードしたファイルを詳細調査したら、表記の情報が埋め込まれておりました。エン・シャオは中国の若手、現スロヴェニア放送交響楽団(懐かしいリュブリャナ放送交響楽)の音楽監督のこと。KZNPOは南アフリカ共和国クワズールナタール州のオーケストラとのこと。けっこう上手いですよ。地元での凱旋公演?聴衆の熱い拍手がラストに入っております。

 Rachmaninov といえば(甘美な旋律満載)ピアノ協奏曲第2番+パガニーニ変奏曲くらい?この第3番ニ短調は技巧ばかり先立って、第2番ほどの官能に欠ける?そんな不遜な印象だったけど、ここ最近ほんまに壮絶な技巧の限りを尽くした、ピアニストの腕の見せどころ!的魅力に目覚めたところ。第1楽章のカデンツァには2種あって、オリジナル(短い方)とオッシア(大カデンツァ)〜いずれムツかしいことに変わりはないそう(難物なのはそこだけじゃないし)。情報によると最近の若手は重厚、派手な後者を多く録音するらしい。(ギーゼキングは後者、ホロヴィッツは前者採用)閑話休題(それはさておき)

 数年間”伴奏不明”音源を聴いて、エエ音やなぁ、大人しめだけど洗練された良い伴奏だ、ライヴなのに凄いテクニックのキレ・・・自分のサイトにアップするくらいだから自信の演奏だったのでしょう。第1楽章 「Allegro ma non tanto」〜中庸なテンポ、流麗な技巧、キラキラとした音色、デリケートなニュアンス、揺れ、躊躇いがちの抑制は”バリバリと弾き進む”タイプに非ず。叩いたり、無用にアツく走ったりしない。オーボエの浮き立つような明るい音色、ホルンの深みも印象的な絡み合い。適度な残響、自然な空間会場を感じさせる音質も極上であります。

 11分くらいから始まる「オッシア」はド・シロウト耳にも壮絶な腕の見せ所(きっと動画で眺めるには最適)みごとに(さほどの汗水なく)難所乗り越え、むしろ後半の静謐甘美な対比がシミジミとした効果を作っておりました。第2楽章 「Intermezzo. Adagio」〜繊細なヴィヴラートを活かしてオーボエはみごとな歌(欧州から遠く離れたオーケストラをバカにしたらあかんで)、それを受ける弦の憂愁な響きの洗練に文句なし。エン・シャオって、次世代の期待ですね。雪崩のようにピアノが参入して、力感にあふれても、力みはない、響きは濁らない。第1楽章よりアツい情感を込めて、かなり雄弁に、陰影深いピアノであります。中間部のワルツ風エピソードは、おそらくは難所のひとつと類推〜ここの抑制も若手らしい清潔と余裕が両立しております。テクニックは表層を流れない。ラスト怒涛のようなソロを雪崩を受け、アタッカで最終楽章に突入・・・

 第3楽章 「Finale. Alla breve」〜細かい音型(ここも正確な技巧が要求されそう)は細部曖昧にせず、しかしどちらかというと音量抑制気味にオーケストラと溶け合いました。”バリバリと弾き進む”のではない、流麗に華麗な旋律を歌って、押し付けがましさ皆無。あくまで響きは清潔、耳当たりの良い端正な音色。センスとしては欧州、露西亜系濃密なものとは異なる洗練されたものでしょう。じわじわといや増す華やかな宴、疲れを見せぬ技巧、オーケストラのすっきりとした響き。熱狂的な拍手。

 同一作品のオリジナル(小カデンツァ)の確認など含め、数種の録音を(一部)聴き比べて結果、すっかりピアノ協奏曲第3番ニ短調を好きになりました。

(2014年9月28日)


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written by wabisuke hayashi