Stravinsky 組曲「プルチネルラ」「結婚」ほか
(ロバート・クラフト/聖ルカ管弦楽団/グレッグ・スミス合唱団)


MISICMASTERS 01612-67086-2 Stravinsky

組曲「プルチネルラ」(1924年版声楽なし)
交響曲ハ長調
ロシア農民の歌
ロシアの神聖な歌
バレエ音楽/舞踊カンタータ「結婚」

ロバート・クラフト/聖ルカ管弦楽団/グレッグ・スミス合唱団/ロザリンド・リース(s)/カスリン・チージンスキ(ms)/サム・ハッチェソン(t)/デイヴィッド・エヴィッツ(br)/マーク・ウエイト(p)/グェンドリン・モス(p)/トーマス・シュルツ(p)/エリザベス・デ・フェリーチェ(p)/ゴードン・ゴットリーブ、ゴードン・チャーレストン、リチャード・フィッツ、ジョセフ・パッサロ、ジョン・シェリー、グレン・ヴェレツ(パーカッション)

MUSICMASTERS 01612-67086-2  録音年1991年?(c)(p)1992表記  $1.99個人輸入

 2014年、11年ぶりの再聴となります。「結婚」サイモン・ジョリー合唱団/インターナショナル・ピアノ四重奏団/トリスタン・フライ・パーカッション・アンサンブルとの2001年録音拝聴、ああそうか、これとは別録音だったのかと(ようやく)気付きました。ロバート・クラフトの(旧)録音はNAXOSから全部復活しているのかな、と思っていたら「プルチネルラ」は声楽入りのみでした。交響曲ハ長調も現役は1999年フィルハーモニア管弦楽団との録音。他も再発売されていなくて、意外と稀少盤だったみたいですね。閑話休題(それはさておき)

 ロバート・クラフト(1923-)はもっぱら師匠の弟子としての作品紹介ばかり、指揮者としての経歴はジミだけど、CDを聴く限りその実力は相当なものと類推できます。極めてドライな推進力、淡々辛口余剰を加えぬスタイルは正確そのもの、もともと大好きなStravinsky、彼の一連の録音は演奏、音質とも自分なりのリファレンスに至りました。「プルチネルラ」(声楽抜き)は切れ味たっぷりな快速テンポ、明るく乾いたサウンド。擬バロックとしてではなく、あくまでモダーンな”現代音楽”として非情なほどクールに、テンション高く響き渡りました。ノンビリ、ユーモラスな味わいも感じさせる旋律は、緻密+素っ気なく鳴り響いて、ひりひり神経質なほどの集中力也。好き好きだろうけど、ワタシにとってはほぼ理想でっせ。

 交響曲ハ長調は、三楽章の交響曲と並んでやや苦手系。一般に大柄、豪快、立派に演りすぎるんですよ。これがクラフトの手に掛かると、なんとも素っ気ない・・・でもカッコ良い演奏、体脂肪率低い筋肉質サウンドに至ってイメージ一新!鮮度抜群。淡々とリズムを刻んで繊細さにも不足しません。「ロシアの〜歌」は無伴奏の声楽であって、グレッグ・スミス・シンガーズってデリケートに響き磨き上げて超絶技巧。もちろん言葉は一切理解できぬけれど、シンプルなリズムの躍動、荘厳敬虔な雰囲気はしっかり堪能できました。このCD中の白眉かも、どれも佳いけど。

 「結婚」は若い頃LP時代からお気に入りでした。エネルギーをしっかり感じさせる粗野なリズム爆発!(ブーレーズ初期録音)こうして新録音と聴き比べる機会を得、10年ほどの成熟を感させるもの。基本姿勢は変わらず、但し旧録音は余計な色付など罪悪、淡々素っ気なさ、より一層強化、といったところか。そんなに走ってどこへいく?テンポは急いて疾走します。色彩抜き「春の祭典」風作品には、少々落ち着き+貫禄が足りない、珍しくアツくなっているかも。いずれ、聴き手を興奮させるに充分(洗練された)野蛮+切れ味であります。音質も最高。

(2014年4月19日更新)

 ロバート・クラフトといえば、Stravinskyとは密接な関係が思い浮かびます。生年など不明だけれど、この録音は新しいみたいだし、少なくとも最近まで現役で活動をしていたとは知りませんでした。このCD、数年前に購入したもので、選曲、音質、演奏の質から言ってもピカイチのもの。堪能しました。数枚のシリーズになっていたらしい。

 ま、やたらと「三大バレエ」が有名で人気曲だったり、「時代によってコロコロ作風を変えた」とか言われますが、Stravinskyはたいていどんな曲でも楽しめます。ワタシのような純粋な「ド・シロウト・リスナー」でも、聴いて楽しめます。「プルチネルラ」は2番手人気くらいかな?なんやらバロック音楽の引用になっていて、やたらとわかりやすい旋律。ここでは声楽が含まれない組曲版でした。(ほか「イタリア組曲」としてヴァイオリン独奏版やチェロ独奏版が存在する)

 きっとクラフトって、かなり高齢のはずだし・・・と心配していたけれど、音が鳴り出すや「!」の連続。キリリとアンサンブルが引き締まって、早めのテンポ、尋常の集中力じゃない。ハズむような躍動感が溢れて、いや、まるで昨今の古楽器系アンサンブルのノリか。聖ルカ管って、たしかニューヨーク辺りの室内オーケストラのはずだけど、抜群に上手い。

 非情というか、乾いてメカニカルなサウンド(とてもモダーンな感じがする)。でも妙な熱気があって、「自動車製造ロボット聖子ちゃんが、夜中もバリバリ働いてます!」というようなイメージさえある。コレ、指揮者の師匠に対する盤石の信頼を込めた演奏だろうけど、目隠しで聴けばメッツマッハーとか、ハーディングか、みたいな新進気鋭の若手だろうか?と見まがうばかりのエネルギー横溢してます。

 交響曲ハ調は1939年の作品で、不気味で戦争の影を感じさせる作品です。この演奏もスッキリしていて、スリム。テンポはもちろん速い。緻密なアンサンブルはあくまでクールで、木管の細かいニュアンスはなんと美しいこと。しかし、ウェット感皆無。ま、「プルチネルラ」もそうだけど、ここまで集中力のあるアンサンブルは初耳で、とにかく聖ルカ管はどうしようもないくらい技術的に切れます。

 精神的に醒めているようで、曲、演奏とも無表情ながらリリカルな感動有、でしょうか。コレもひとつの現代か?ワタシの好みとしては、暗さを感じさせないところがヨロシい感じ。

 「ロシア農民の歌」「ロシアの神聖な歌」はアカペラなんです。グレッグ・スミス合唱団って初耳だけど、インターネット検索を掛けてみると、どうも現代物のスペシャリストらしい。これも聖ルカ管とイメージ一緒で、超絶技巧で、乾いた叙情感があります。旋律はまことにユーモラス、美しく、奇妙であり、透明。一方で宗教的な畏敬さえ感じる静謐な作品。そして演奏。ノン・ヴィヴラート。

 「結婚」を初めて聴いたのは、ブーレーズのコンサート・ホール・レーベル盤かな?4人のピアノと6人の打楽器+4人の混声による、これはちょっと原始のエネルギーを感じさせる粗野な曲でしょう。つまり、スモーク炊いてゴンドラでカップルが降りてくるような今風な結婚ではなくて、太古のもっと男女の関係がギラギラ直裁であったころを想像させます。

 色は声楽のみで付けられます。ソプラノの叫びがそうとうエキセントリックであり、複雑な打楽器群と併せて緻密に演奏されるべき作品でしょう。演奏は、既出通り。表情は端正だけれど、リズムに(冷たい)エネルギーがみなぎります。わかりやすく、明快でまったく素晴らしい。

(2003年1月3日)

【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
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written by wabisuke hayashi