Prokofiev ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調(リッチ(v))
ピアノ協奏曲第3/5番(タッキーノ(p)/ルイ・ド・フロマン/ルクセンブルク放送管弦楽団)


Prokofiev ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調(リッチ(v))/ピアノ協奏曲第3/5番(タッキーノ(p)/ルイ・ド・フロマン/ルクセンブルク放送管弦楽団) Prokofiev

ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調

ルジェーロ・リッチ(v)

ピアノ協奏曲第3番ハ長調
ピアノ協奏曲第5番ト長調(1977年録音)

ガブリエル・タッキーノ(p)/ルイ・ド・フロマン/ルクセンブルク放送管弦楽団

(他、1972/73/77年録音) VOXBOX CD3X 3000  3枚組3,000円(税抜)で購入したウチの一枚

 (p)(c)とも1991年でして、おそらくはその頃に購入したものと記憶しております。(で、ないとこんな高価では購入しない)当時は「自分にとって少々苦手であっても、幅広く音楽を聴きましょう」という意欲に溢れておりました。つまり、Prokofievは(未だワタシにとって)苦手系の音楽であり、交響曲全集に至っては10年ほど前にヴェラー全集を手放して以来、全曲を手許に揃えておりません。でもね・・・

 耳が成熟してくるというか、いろんな音楽が「聴ける」「楽しめる」ようになってくるんですね。少々晦渋で、シニカルな世界がちゃんと理解できるようになってくる。収録された作品中(CD3)ではピアノ協奏曲第3番ハ長調が有名でしょうか。ワタシは、交響曲第5番 変ロ長調と並んで、逆に大衆に媚びているような印象(先入観)もあって、聴く機会が少ないものでした。きっかけはリコ・サッカーニ/ブダペスト・フィルの「ライヴ22枚組」でして、クン・ウー・パイク(白建宇)(p)によるピアノ協奏曲第3番(2001年)が、とても爽快で、気持ちよく聴けたことによります。(サッカーニは協奏曲の扱いが上手みたい)

 で、久々に(10年ぶり?)取り出したのがコレ。Prokofievの協奏的作品をほぼ全曲(チェロ協奏曲第1番ホ短調+コンチェルティーノ ト短調がない)収録しております。タッキーノ(1934〜)はフランス(カンヌ)出身の名手でして、知名度ともかく膨大なる録音量を誇ります。ここでのソロは、目が覚めるような華やかなものにまちがいなし〜しかし、怜悧で冷たい印象ではなく、万全な技巧に支えられつつも、どことなく粋で余裕が感じられます。

 ピアノ協奏曲第5番は、1932年ロシアへの帰国直前の作品だけれど、これが無定見で乾いた旋律とリズムが連続して、馴染みやすい作品、とはいえぬもの。ところがタッキーノの瑞々しい、明確な表現でずいぶんとわかりやすく、陰影深く、繊細に(神経質ではない)美しく聴かせてくださいました。ま、第4楽章「ラルゲット」が静謐で酔わせる旋律だけれど、他はソフトなBartok、と比喩しちゃマズいですか?最終楽章の終わり方も唐突。

 第3番のほうは1921年30歳のアメリカ時代の作品、こちら録音される機会も多いし、ずいぶんと大衆的というか、明るく前向きでわかりやすい。ピアニストもノリノリで腕の見せ所でしょう。タッキーノは軽快であり、瑞々しく優雅な響きのピアノですね。ものものしくならず、叩かず、リキまず、流れがとてもよろしい。リズムが動いたり、カスタネットが入ったり、楽しい作品であります。”大衆に媚びているような印象”というのは、”わかりやすさ”の裏返しだったのか。(反省します)

 ヴァイオリン協奏曲第1番ニ長調のほうは、なぜかよく知った(1917年27歳の才気走った)作品でしたね。どこで聴いていたのかな?(お気に入りハイフェッツの録音は第2番ト短調だし)いつもの”縮緬ヴィヴラート”が神経質であって、スケール大きな伸びやかさに欠ける〜(ハズの)リッチのヴァイオリンには、痛々しいほどの集中力を感じさせました。これこそ、晦渋で、シニカルで、乾いた〜といった旋律の連続だけれど、それが妙にリッチの個性に似合って怪しく、たっぷり楽しめました。

 それにしても、こりゃ相当の難曲ですね。リッチはテクニシャンだけれど、”いかにもこの作品はムツしいでっせ”という雰囲気を前面に出して、涼しい顔で容易(たやす)く乗り切るのとどちらがよいのか。ま、露西亜風甘美(終楽章に少々垣間見られるが)で、少々クサいくらいの大仰旋律連続よりずっと好みですけどね。大音量で朗々と大爆発!的部分が少なくて、ほとんど呟いたり、小走りで駆け抜けたり・・・そんな作品です。

 録音は(意外にも)良好で鮮明。管弦楽作品では、時に失望するようなアンサンブルを聴かせることもあるルイ・ド・フロマン/ルクセンブルク放送管弦楽団は好調です。協奏的作品(あわせもの)は上手だったのか。

(2006年1月13日)


【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
▲To Top Page.▲
   
written by wabisuke hayashi