Tchaikovsky 交響曲第6番ロ短調 作品74「悲愴」
(ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団1981年)


D/CD3016 Tchaikovsky

交響曲第6番ロ短調 作品74「悲愴」

ユージン・オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団

Delos  D/CD3016 1981年録音

 以前のコメントがあまりに酷いので、再聴再コメントしようにも、既に手許にそのCDは存在せず。RCA(1968年)録音を入手したから、オークション処分したのでしょう。ところがそれさえ処分してしまって、最晩年のDelos盤のみ残ることになりました。1952年以来4度目?レパートリーの広い彼の十八番(おはこ)レパートリー也。晩年(1899 - 1985)、フィラデルフィア管弦楽団音楽監督勇退(1980年)後の録音です。日本の高名な評論家には芳しくない評価を受けたようで、CD復刻は(人気のワリに)系統的ではありません。2012年12枚組ボックスが出たけれど、膨大なる録音のほんの一部でしょう。ストコフスキーに比べて流通量圧倒的に少ないじゃないですか。閑話休題(それはさておき)

 CBS録音はハイ上がりの刺激的な音質(+LP時代SONYのカッティング問題)、RCAでも同じような印象だった記憶有。たしか「新世界」でしたっけ、ロンドン交響楽団でも似たようなサウンドになっていたはず、あれはオーマンディの個性だったのでしょう。ところが、この1981年録音は印象かなり異なって、”ハイ上がりの刺激的な”ということはない。Delosの録音指向(かなりリアルで自然。優秀録音でしょう)なのか、それとも老オーマンディが枯れてきたのか、既にリッカルド・ムーティ時代に至ってフィラデルフィア管弦楽団自体のサウンドが変遷しつつあったのか・・・相変わらずよく鳴って、上手いオケなのは当たり前。

 十数年前にも触れているけれど、ムラヴィンスキー(1960年)は圧倒的な迫力・説得力でしょう。幾度録音を重ねたカラヤンも、オケの技量を前面に聴かせ上手でした。オーマンディを久々拝聴して驚いたのは、過不足のないバランス表現、指揮者の個性を過度にムリムリ表出しない、スムース、耳あたりが良いサウンド。な〜んもせん、といえばそうかも、派手なパフォーマンスも、ジューシーな色気も皆無。人生これ一筋、行き着くところ迄行ってしまいました、みたいな静謐、枯れた演奏。最初は、なんやねんコレ、と思っておりました。なんせ先入観+期待もありましたから。

 聴き手も出会いはローティーン、いまや枯れ線へ。こんな味わい演奏も悪くない。暗鬱な第1楽章始まりました。生演奏に接して気付いたが、Tchaikovskyってヴィオラの使い方が上手いですよね。仕上げは入念を極めるが、表現そのものはすっきりストレート系、どよ〜んとした重厚さ、悲痛を強調するものに非ず。やがてリズミカルにテンポを上げて、金管参入して爆発!残響少ない直接音中心の音録りのせいか、耳をつんざくほどの迫力に非ず。続く、甘美な第2主題も砂糖控えめ、バランス重視で歌っております。フルートやファゴットのソロって、もっとセクシーに演る人いますよね。全体に抑制が効いて静謐、やり過ぎ感はない。

 展開部の全合奏開始の迫力に不足なし、アレグロ・ヴィーヴォなる各パート、アンサンブルの揃い方はお見事、急がず、慌てず、しっかりと・・・金管+ティンパニの迫力に不足なし。しかし、かつて(記憶にある)ぎらぎらした騒音?雑踏みたいな印象はありません。

 第2楽章は変拍子ワルツ。厚みのある弦は悠々と歌っているけれど、表現としてはタメとか揺れを主眼としたものではありません。テンポは常に中庸、木管も上手いですね。中間部ロ短調の暗転も強調しておりません。サウンドは瑞々しいが、表現は意外と淡々としている・・・第3楽章「スケルツォ」はオケの腕の見せ所、弦の細かい旋律アンサンブル、縦線の合い方、推進力はみごとだけれど、金管は抑制気味であります。鳴らないのではなく、抑制。この楽章、馬力あるオケがリミッター外すとなかなか凄いことになりまっせ。

 慟哭の終楽章。ここも中庸からやや速めのテンポ、淡々と進めるところは記憶通り。テンポ表記論議喧しいところだけれど、これは「アンダンテ・ラメントーソ」っぽいかな?粘着質に悲痛な嘆きを引きずるのではない、メリハリとニュアンスに不足はないけれど、意外なほど恬淡とした表情であります。全体として、ストレート系添加物の少ない表現のまま、サウンドにやや渋さが加わった、枯れたといった印象でしょうか。

(2013年5月12日)

SONY Classical MYK37768 Tchaikovsky

交響曲第6番ロ短調 作品74「悲愴」

オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団

SONY Classical MYK37768  1960年録音   3枚1,000円で購入(した一枚)。

  このジャケット、なんて呼ぶのでしょうね。以前、フィリップスで1,700円で出ていたシリーズと同じ、紙パックの材質のもの。いいですね。プラスチックのはどうも好きになれません。このCDはフランス製で、レコード屋さんの在庫処分でした。録音データが不親切なのはいただけません。

 いまどきのCDで「悲愴」だけで46分ほどの収録。LP時代からたくさん曲が入ってるのが好みだったワタシとしては、あと30分くらいの位の曲をオマケしてほしかったところ。(例えば弦楽セレナード辺り)330円だから文句は言えません。

 オーマンディが得意とした曲で、ステレオで3回録音した「悲愴」の最初のもの。個人的にはこの演奏とは30年目の邂逅でした。「悲愴」はこれで覚えたのですが、その後ムラヴィンスキーの強烈な演奏に出会って「オーマンディのは生温いな」と感じたまま、忘れていました。

 驚くべきことに30年振りに聴いても、当時の記憶そのまま。どんな細部も次々と思い出して感動しました。弦の響きが豪華で厚くて、木管の美しさ・巧さは舌を巻くほど。金管の鳴りも輝かしいが、少々軽過ぎか。テンポは常に適正で、旋律の歌わせ方は「ここはもっとタメがあってもいいでしょう」というところも、ほとんどストレートな表現。そっけなくはないが、ひたすらオケの贅沢な瑞々しい音色のみで聴かせるような、純音楽的な演奏です。

 これはこれで完成度は高くて、なんとなくTchaikovskyにつきまとう「気恥ずかしさ」がない。良い意味で標準足りうる演奏かも。

 オーマンディの音楽は安心して聴くことができて、大好きですね。(とくにコロンビア時代)でも、たのみのSONYは、オーマンディの系統的なCD化にあまり熱心ではないし、タマにあるせっかくの復刻も他の演奏家のものと組み合わされている場合が多くてガックリきます。


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written by wabisuke hayashi