Mozart 管楽協奏曲集(オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団)

Mozart 管楽協奏曲集(オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団) Mozart

オーボエ協奏曲ハ長調 K314
ランチエ(ob)

フルート協奏曲ト長調 K313
キンケイド(fl)

ファゴット協奏曲 変ホ長調 K191
ガーフィールド(fg)

クラリネット協奏曲イ長調 K622
ジグリオッティ(cl)

オーボエ、クラリネット、ホルン、ファゴットのための協奏交響曲 K297b
ランチエ(ob)ジグリオッティ(cl)キンケイド(fl)ガーフィールド(fg)ジョーンズ(hr)

ホルン協奏曲第1番〜4番 K412,417,447,495

ジョーンズ(hr)

以上、オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団(1957年〜1962年録音)

SONYCLASSICAL SM3K 47215 3枚組 価格忘却・・・おそらく個人輸入で$6程度。

 優秀なオーケストラは、団員をソロにしてMozart 協奏曲集を作ります。ベルリン・フィルしかり、ウィーン・フィルしかり。パリ・オペラ座管(プレートル指揮)なんてのも出てましたね。こういったCDはなかなか楽しい。フツウの有名なソリストを集めたものより、そのオーケストラ特有の味わいがあって悪くない。この録音は、わりと知られていないほうでしょうか。だいたいオーマンディのMozart というのも、なんとなく珍しい感じ。

 有名な曲ばかりだけれど、なかなか満足させてくれる録音は少ないものです。


 オーボエ協奏曲。オーマンディのバックがかなり重くて、豪勢すぎ。ここらへんはカラヤンに一脈通じるでしょうか。ランチエのオーボエは線は細いし、なんとなく手探りでソロリソロリと演奏したみたいで、なぜか自信なさげ。溌剌感がないのはつまらない。リズムにノリも足りない。立派なオーケストラに埋もれるソロ。

 おそらくMozart 当時のオーボエは、もっと素朴な音色だったと想像されます。でも、ワタシは滑らかで、のびのび、朗々とした美音で聴きたい。


 フルート協はかなり速いテンポ。他では聴けないような、独特の濃厚なリズム感。「黄金のフルート」キンケイドは、フィラデルフィアのなかでもピカイチの知名度ですが、想像したより派手さはなくて、意外と淡々と進めています。でも音色にコクがあって、上手い! じょじょにノリノリになっていく快感。カデンツァが多彩で目も眩むよう。この演奏はかなり満足。

 ワタシの好みはオーボエとは一転して、古楽器なんです。LP時代、フェスターだったかな、その清楚な響きに一発で痺れました。一方で、モイーズの旧い録音に掛け買いのない輝かしさを感じます。


 ファゴット協の冒頭はフルート協のパターンと一緒で、じつに豪勢で元気がよろしい。(バックは元気良すぎ)ガーフィールドのオーボエは、ユーモラスでハジけるようなリズム感も魅力的。この曲はお気に入りでよく聴きますが、これほど難曲ぶりを実感させてくれたのは初めてですね。技術的には(もちろん)文句なし。Mozart の作った旋律はこんなに凝っていて、演奏がたいへんそうなのが目に見えるような演奏ぶり。楽しめます。


 クラリネット協奏曲。ワタシ、この曲には透明で無垢な諦念を感じたいところ。ところがテンポやや早めで、楽しげにスウィングするような第1楽章から雰囲気が違っていて、ずいぶんと明るいんです。第2楽章は艶やかで美しい。落ち着きや「諦念」とは少々疎遠ながら、ウキウキとする楽しさがある。その華やかさは最終楽章まで持続します。このCD3枚中、もっとも完成度が高いかも。

 古今東西、名演ひしめく作品だけれど、ワタシはブライマー/ビーチャム盤(EMI。但し、LP以来聴いていない)が一番と思います。


 協奏交響曲は、もともとが華やかな曲だし、この演奏はほんとうに楽しいもの。第1楽章のオーケストラが、柔らかく、厚みがあって快調です。ソリストが登場すると、華やかさはいっそう増して花畑が広がるよう。一人ずつの協奏曲作品では、音色の好みも出てくるが、こういった集団になると息の合い方というか、アンサンブルが完璧(バランスがとても良い)で楽しさもひとしお。

 終楽章の変奏曲は、滅多にない名曲。最新の研究の成果によると偽作らしいが、Mozart ですよね、どう聴いても。


 ホルン協奏曲集。これは録音時期的に最近の研究の成果を反映したものではなくて、昔からの4曲収録。ジョーンズのホルンは、ロシア風のビロビロのヴィヴラートではないが、セクシーな甘さがあります。オーマンディのバックは、明るくキッチリとしたアンサンブルが(いつもながら)優秀だけれど、変化というか、陰影が乏しくて続けて聴くと少々飽きるかも。

 ソロも技術的にまったく問題はないが、曲ごとの表現の色合いを変えたり、山場を形成するようなことはなくて淡々と進めている感じ。「オーマンディはどの演奏をしてもしても同じ」という悪口に完全に与するものではないが、ややそれに近いかも・・・・と、思いつつ第3番 変ホ長調に入るとこれは聴きもの。第1楽章のカデンツァ、終楽章の速いテンポをこなしていく技巧の冴えは唖然とするほど。有名な第2楽章「アンダンテ」における雄弁な歌い口も素晴らしい。


 Mozart はシンプルな旋律だけれど、微妙で繊細な表現とか、逆に思いっきり無垢で虚飾がない演奏が好ましいと思います。オーマンディとフィラデルフィアの個性は異質なのかもしれません。彼らの個性は、もっとオーケストレーションが複雑・効果的で、やや難解な曲に向いているのでしょう。

 研修で2回ほど訪問したロスの朝食で、安直なレストランに入ったら、味付けもなにもないスクランブル・エッグが出てきて閉口しました。卵は新鮮だったが、トマト・ケチャップをたくさん掛けないと食べられません。日本だったら、塩胡椒とか、その他調味料、焼き加減など微妙な味付けが当たり前なんですが、本場(?)USAではそうはいかない。

 そんな印象のMozart でした。「いつも取り出して、楽しみたい」演奏とは一風異なりました。(2001年7月13日)


【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
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written by wabisuke hayashi