Mussorgsky/Ravel 組曲「展覧会の絵」(ユーリ・テミルカーノフ1980年ライヴ)
ニコライ・ペトロフ(p)(1974年ライヴ)


YedangClassics YCC-00003 Mussorgsky/Ravel 編

組曲「展覧会の絵」

ユーリ・テミルカーノフ/ソヴィエット国立交響楽団
State Academic Symphony Orchestra of USSR/1980年ライヴ)

Mussorgsky

組曲「展覧会の絵」

ニコライ・ペトロフ(p)(1974年ライヴ)

YedangClassics YCC-00003

 ネットから入手できる音源をDVDに保存して、分類しております。分類方法によるけれど「露西亜」が一番多いのは意外、「シェヘラザード」とか「展覧会の絵」この辺りは幾度聴いて飽きぬお気に入りであります。「展覧会の絵」Ravel 編曲版+オリジナルは黄金の組み合わせ、LP時代はベルナルト・ハイティンク+リヒテル(著名なソフィア・ライヴ1958年)といった凄い組み合わせを(廉価盤)所有しておりました。ハイティンク盤って現役で入手できましたっけ?

 ユーリー・テミルカーノフ(Yuri Khatuevich Temirkanov 1938-)はサンクトペテルブルク・フィルのシェフを1988年以来務める露西亜の重鎮、ボルティモアとかロイヤル・フィルとか西側での活躍も顕著、いくつか聴いたなかでも納得できぬものはない!といった完成度でした。YedangClassicsは韓国発、露西亜の蔵出し音源を21世紀初頭、まとめて投げ売りして一気に消えました。ワタシ、けっこう一杯残してますよ、手許に。(処分しそこねた、売れ残ったというのが本音かも)

 意外な組合わせのオーケストラ(スヴェトラーノフ時代)との顔合わせはまずまずの音質、というかオン・マイク、奥行きや豊かな残響は足りいなけれど、リアルに低音が利いたもの。冒頭プロムナードにていきなり、トランペットがミスるところなんてドキドキなドキュメンタリー。間違ってもナニしても思いっきり行け!みたいな、どこをとってもアクの強い(ド・シロウトがイメージするところの)露西亜風強靭なるサウンド、表現そのものはメリハリとバランスの取れたもの、中庸なテンポ、さほどに異形に非ず。しかし、音質+オーケストラのサウンドが濃厚+重苦しい印象をたっぷり感じさせて盛り上げ上手、ある意味期待通りな出来に仕上がっております。仏蘭西風粋な華やかさ皆無、露西亜風原点返りな泥臭いサウンド満載。

 どこも凄いけど「ブイドロ(牛車)」の金管のヴィヴラートの野太いイヤらしさ、粗野なエッチさは一聴、なんの楽器か理解できないほど(トロンボーン?)ここでまたミスタッチ!「サミュエル・ゴードデンベルクとシュミュイレ」に於けるトランペットも技巧的に洗練されず、そこがなんともクサみを加えてめったに経験できない味わいになります。「リモージュの市場」の喧騒はほとんど深刻、不安な騒乱状態へ。

 「カタコンベ - ローマ時代の墓」の荘厳な金管アンサンブルは、かつて経験したことのない深遠深刻なもの。「死せる言葉による死者への呼びかけ」も同様、ここはもっと静謐さが欲しいところでしょう。「鶏の足の上に建つ小屋 - バーバ・ヤガー」は炸裂する機関銃〜Shostakovich 交響曲第11番ト短調かい!壮絶ですよ。打楽器のヤケクソ的迫力に悶絶!なんか追加してませんか、これ。

 「キーウの大門」のいや増す迫力と爆発(打楽器祭り!)に、おそらくこんな演奏会経験したら、一生の思い出でしょうねぇ。日常、お休みに聴くべき演奏じゃないかも。とても疲れます。

 ニコライ・ペトロフ(1943-2011)に選手交代しました。これもややオン・マイクなライヴ音源らしいけど、聴きやすいリアルな音質です。技巧派で鳴らした旧ソヴィエットの名手は、揺れ動くリズム、輝かしいタッチは自在、浪漫な味わい深いもの(「古城」に於ける吟遊詩人の纏綿とした節回し)。良く鳴って重心の低い、豊満なタッチ、「テュイルリーの庭」は可憐であり、「ブイドロ(牛車)」はテミルカーノフのオーケストラに負けぬ重い足取り+劇的な盛り上がりを見せます。

 第4プロムナードは床しいほどにデリケート(線は太いけど)「卵の殻をつけた雛の踊り」の細かいパッセージの技巧には仰け反りますよ。「サミュエル・ゴードデンベルクとシュミュイレ」も同様、「カタコンベ - ローマ時代の墓」の暗い抑制は深く効果的、「死せる言葉による死者への呼びかけ」の囁きもラストへの対比を意識して効果的でしょう。

 「鶏の足の上に建つ小屋 - バーバ・ヤガー」は意外と流麗であり、先ほどテミルカーノフの大爆発を経験した耳には「キーウの大門」の壮麗な響きも爽やかな締めくくりとなりました。スケールの大きなタメは凄いけど。どちらかというと、こちらピアノ版が気に入りましたよ。

(2015年11月22日)


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written by wabisuke hayashi