Bach 「音楽の捧げもの」BWV1079(パイヤール室内管メンバー 1974年)


DENON GES-9203

Bach

音楽の捧げもの BWV1079

パイヤール室内管/ジャリ、ジェリス(v)、メイエ、グラタール(va)、クールモン、ガバール(vc)、グラニエ(cb)、ラリュー(fl)、モラビト(cem)

DENON GES-9203 1974年(ディジタル録音)  250円(中古)で購入

これはもっとも最初期のディジタル録音であり、パイヤール盤による室内楽編成によるもの。ま、ジャリ(v)もラリュー(fl)も音が出た途端「この人」と理解できる、ヴィヴラートたっぷりで明るい音色です。Bach は表現の多様性を許容するし、厳格なる演奏には少々カタが凝るのも事実ながら、ワタシはこのゆったりとした優しい演奏には少々違和感がありました。でも、トリオ・ソナタはワタシがもっとも愛する音楽のひとつですから・・・イヤ・ホンで聴くと個々の楽器(=パート)がバラバラに聞こえてくるような感じで気に食わない印象もあったし、ワタシの慣れ・好みの問題だけれど、チェンバロ・ソロがもっと活躍してして欲しい要望も有。部屋のコンポで再聴すると、結果論として各パートが溶け合って音楽の印象が変わります。演奏的にはやや叙情系のまったりした語り口があるが、曲が進むに連れて感動が押し寄せ、47分はあっという間に過ぎゆきました。(「音楽日誌」より抜粋。)

 音楽を幅広く楽しむこと。一方で自分のお気に入りを聴くこと。購入したボックスものをちゃんと全部聴いてあげること。自分なりのコメントを付けることは”いっそう深く、音楽を楽しむため”にものであること。作品そのものを、まず味わうこと。それはワタシの原点です。その前提には心身共の健康、家族の存在、それなりの経済的な安定、仕事、人付き合い・・・当たり前のことです。

 「音楽の捧げもの」を聴くと鬱蒼とした気分になる、といったサイト記事を拝見しました〜なるほど、そうかも知れない。だいたいBach (親父のほう)って、やたらと厳格でガンコで几帳面で・・・そして限りないメロディ・メーカーでもある。立派すぎるんです。ワタシは「出来の良い親父に説教されている気分になる」と何度かコメントしました。でもね、この作品、ずっと、ずっと以前から好きでした。FMで聴いた、ニコレの禁欲的フルートの集中力(リヒター盤ではなくて、ルツェルン音楽祭管だったと思う)に一発で痺れました。

 「三声のリチェルカーレ」が始まると、フルート、ヴァイオリンのシンプルな旋律が絡み合って妖しい気持ちが高まり、チェロのベースライン(これ、バロックの基本的魅力です!)に止めを刺されました。三声部で無限の広がりが生まれる驚異。ラリューのフルートは涼やかで甘いんです。トリオ・ソナタの悲劇的な旋律は、胸に哀愁を刻みませんか。「アレグロ」のテンポアップは、遣る瀬ない気持ちを抱えたまま走り出すような・・・ココ一番のお気に入り。

 「六声のリチェルカーレ」を聴くと、いつも脳裏にWebern(この編曲も素晴らしい)が木霊します。パイヤールは弦全員で演奏させてますね。それまでの室内楽的表現から、一気に全員出演して最後の挨拶をしているような集大成的感慨が溢れます。上記、「音楽日誌」抜粋にもあるが、ワタシには「三声のリチェルカーレ」はチェンバロ独奏で表現されるもの、という先入観があります。(カークパトリックのLPだったか?前のめりの緊張感溢れる演奏だった記憶有)

   例えばリヒターの謹厳実直演奏と比較すれば、ずいぶんと甘やかで優しい、少々まったりとした表現かも知れません。それでもBach の魅力はまったく崩れない。ましてやワタシのお気に入りとしての地位は揺るぎなく、間違いない感動を運んでくださいました。

(2005年8月5日)

 

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written by wabisuke hayashi