大町陽一郎 「クラシック音楽のすすめ」講談社現代新書 1965年(第1刷)発行1979年(第24刷) 390円 1931年東京生まれ。1961年より1963年まで東京フィル常任指揮者。82年より84年にはウィーン国立歌劇場専属指揮者。92年ドイツ連邦共和国功労勲章「大功労十字」、96年日本人初のウィーン市名誉ゴールド・メダル、98年オーストリア共和国功労勲章大銀章を受章・・・とにかく大ヴェテラン指揮者で現役です。 この本はずいぶんと以前に(古本で)購入したもので、読み返しても内容に記憶がありません。 これが、まぁ、クラシック音楽を聴くにあたっての「心掛け」「実践すべきこと」「知識」などが、微に入り細に渡り網羅されていて、正直驚きました。正直言いますが、21世紀の現代に読むとジョーダンにしか思えないのは、ワタシがすれっからしで音楽に対する純粋さを失ったからでしょう。中学生やら、高校生には有効かな?いまどきの若者はこんな本を読んで楽しいんだろうか?ムリだと思うけど。これで説得するのは。でも、この書籍(何度も改訂されていると思うが)現役です。 こういったクラシック音楽受容の現況はどうなっているんでしょう。東京にはアマ・オケが100以上あるそうだし、ワタシが現在居住する岡山界隈でも7団体くらいはすぐ数えられます。「自ら音楽する」人がそれほど多数なんだから、盛況なんでしょ、みたいだが、そうでもなくて「観客より演奏する人の方が多い」(岡山ではそんなことはないが)場合もあるとか?CDはずいぶんと安くなったが、あまり売れていないみたいだし、「気骨ある街のレコード屋」も姿を消しつつあります。(でも、サイト上の交流は結構な盛り上がり!コレほんま)
わたしは、クラシック音楽を、古典音楽と訳さないでほしいと思うのです。どんな時代にも愛好され、いつまでも残るよい音楽、それがクラシック音楽です。 〜けだし名言でしょう。だから通常「クラシック音楽」に分類されない「流行歌(はやりうた)」も、歴史の試練を経て「クラシック音楽」となりうる可能性を持っております。逆に「現代音楽」と一般に呼称される音楽が、すべて「クラシック音楽」とは言い切れないことも自明の理。全面合意。異議なし。でもさ、読み進めていくとどうも違和感有。これは世代問題かな。
音楽会に来る人たちは、若いうちは若さのあふれる曲を愛好するのですが、だんだん成長して社会人となって、一本立ちしたときには、音楽会にこなくなってしまい、やがて男性は一定の地位も得、女性は子どもの手が放せるようになって、経済的にも音楽に行く余裕ができ年ごろになってくると、ふしぎと謡曲や小唄など日本趣味の音楽のほうへ行ってしまいます。(これは筆者が”日本趣味が悪い”と言っているわけではありません)これは一理あってなるほど、と思うようでもあり、今となっては、かなりおかしいとも思えます。「若いうちは若さのあふれる曲を愛好する」〜これは?ちょっと意味がわからない。学生時代は「長髪のロッカー」だったが、熟年となっても「禿頭のロッカー」として親父バンドを再結成!という姿だったら、いまやけっこうありますよね。ウチの女房はジュリーのコンサートに出掛けてます。 でもさ、謡曲やら小唄はないよな、今時。(逆にちょっとお勉強が必要、というか、滅びつつあるのは残念だが)コレ、もしかして”西洋音楽の受容”が一部のエリート知識階層の「知的アイデンティティ」として、「左脳」だけで聴かれていた時代の名残じゃないかな?先日も拙サイトBBSでちょっと話題になったけど、当時の文部省推薦の教科書音楽って「ペルシアの市場にて」「中央アジアの高原にて」「剣の舞」「熊蜂は飛ぶ」「ペール・ギュント」「ツィゴイネル・ワイゼン」とか、もう滅茶苦茶マニアックで驚きますもんね。(結果、クラシック・マニアがたくさん育った、かも?) この本、じつに親切なんです。自分の音楽との出会い。「人はなぜ音楽を聞くのか」(この辺りは説教臭いというか、時代でしょうか。いまや音楽はもっと日常のものですよね)、「クラシック音楽への道」(いわゆる西洋音楽の日本社会への受容の歴史と現状+基礎知識〜もういいじゃない、そんなこと・・・)、「楽器別に見た音楽」(好き、じゃダメなの?)。 「音楽会でのエチケット」(おお!これは大切。音楽終了後、余韻を持って拍手して欲しい、いきなりフライング突っ込み拍手は興をそぐ・・・って、そういうことじゃありませんでした)、レコードによる鑑賞法(レコードは音楽の缶詰である、というワタシの主張はじつはここの引用だったんですね。記憶がない)、そして「音楽の歩みと名曲」(歴史と、これを聴け!)と、じつに懇切丁寧。 これは「クラシック音楽のすすめ」という題名の「教科書」です。「教科書」を真剣に熟読(愛読)するやつは、理論的には存在するが、ワタシはあんまりお友達になりたくないタイプでしょう。(2004年2月22日)
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