「歴伝クラシック洋楽名盤宝典」

精選「LP手帳」月評1957→1966
(株)音楽出版社 1999年発行 1,600円

 まさにステレオLPが出現せん、といった時期の当時の評論目白押しで、おもしろいこと限りなし。ワタシはこの世代ではないのに、取り上げれている演奏はほとんど熟知しているといった感じ。当時の評論スタイルもなんとも言えない。お勧めです。こんな本を読んでいると、クラシック音楽って長持ちで経済的だなぁと思わずにいられません。

 以下、有名なものを外して紹介。珍しそうなもののみ。(ほとんど現役ばかりなので。驚くべきことに)

 1957年) ハーバート・ウィリアムス/ニューヨーク・ウェストミュンスター響による「白鳥の湖」「胡桃割り人形」というのには興味をそそられます。シュヒター/POによるベルリオーズ/コダーイ管弦楽曲集も渋い。カサドゥシュス(という表記)のMOZARTソナタ集。マルケヴィッチ/シンフォニー・オブ・ジ・エアの「英雄」はウワサばかりでぜひ聴いてみたい。

 1958年) 一部の好事家に有名だがヴァンデルノート/パリ音楽院によるMOZART40/41番登場。クリュイタンスのHAYDN「告別」というのは初耳。マーク/スイス・ロマンド「ポストホルン」はここで登場しておりました。トルドラ/フランス国立放送局管弦楽団「三角帽子」〜誰?ロザンタール/パリ国立歌劇場管の「マ・メール・ロワ」・・・これはたしか全集録音が存在するはず。ぜひ聴きたい。フェスティヴァル4重奏団(これはゴールドベルク率いる団体らしい)+αで「鱒」。レーヌ・ジャノリのMOZARTソナタ集。いかにも気品高そう。

 1959年) この年の掲載はほぼ完璧現役。あえて紹介するとアシュケナージ/ルートヴィッヒ/ベルリン国立歌劇場管によるBRAHMSの2番(これは珍しい)、リチャード・ファーレルのGRIEG/LISZT協奏曲。フィルクスニーによるSMETANAスロヴァキア舞曲集。(これはぜひ聴いてみたい)

 1960年) 前年より珍しいものはいっそう少なく、ほぼ現役盤で占められます。無理して紹介すると、マタチッチ/POの「シェエラザード」(でも、これワタシCDで持ってます)、シャーンドルのBARTOK協奏曲集(これも手元に有)・・・他、ありません。

 1961年) ほぼ現役盤ばかり。ラレド/ミッチェル/ナショナル響によるMOZART/BRUCHの協奏曲は珍しい。ドゥーカン/コシュによるフォーレのヴァイオリン・ソナタ集はほんとうに名曲・名演(FICの海賊盤で手に入る。おそらくそこだけで)。ファーレルによるグリーグ作品集。アン・シェインのCHOPIN「スケルツォ」は初耳で興味有。

 1962年) ここ注目。サヴァリッシュ/コンセルトヘボウの「田園」、ウィーン響との「未完成」「イタリア」とか最近手に入りにくいものが登場しています。これも一部熱狂的ファンが存在するヴィルディケ/ウィーン国立歌劇場管によるHAYDNに注目。コリン・デイヴィス/LSOのMOZARTが手に入らないのは、なんとなく納得するが、ハイティンク/コンセルトヘボウのBARTOKもダメなのはどうしてか?リンダー/スワロフスキーのMOZARTホルン協奏曲全集、ゴールドベルク/ヘブラーのMOZART/HAYDN協奏曲は手に入れたいもの。ファーレルのBRAHMSは出ていましたっけ?

 1963年) ヴァンデルノート/フランス国立放送局管の「幻想」が登場。コンヴィチュニー/ウィーン響の「ロマンティック」はCDで売ってましたっけ?ホルスト=ターヌ・マールグラーフ/ハレ・ヘンデル祝祭管「合奏協奏曲作品6全曲」〜こういうのにはメがないワタシ。ジャン・フルネ名演集/コンセルトヘボウ〜もの凄く欲しい。オークレールのMOZART協奏曲が出たのはこの年だったんですねぇ。あと、タリアフェロのフランス近代ピアノ曲集に注目。

 1964年) ラインスドルフ/ボストン響によるMAHLER5番+「ヴォツェック」抜粋。意欲的な録音です。岩城/ウィーン国立歌劇場管によるリストはここで登場。(祈!CD化)フー・ツォンのSCHUMANN/CHOPIN協奏曲(バックはマーク!)、「我が生涯」「アメリカ」〜ドロルツSQ(これ愛聴していました)あと室内楽などに少々注目。(作曲者監修の「世の終わりのための4重奏曲」フェルナンデースなど参加)

 1965年) ほぼ現役ばかり登場。バルヒット/ティレガント/南西ドイツ放響のバロック有名どころ(「四季」とか「ブランデンブルグ協」など)登場、シュトウツ/チューリヒ室内管によるSTRAVINSKY、BARTOKはLPで持っていたことがある。チッコリーニのLISZT、ハラシェヴィッチのCHOPINは最近見かけなくなったなぁ。

 1966年) ストコ/アメ響のアイヴス4番、スタンリー・ブラックのGERSHWIN(懐かしい)。ハンス・アンドレー(pf)/ヴォルフガング・フォン・カラヤンによるMOZART協奏曲は珍しい。いまで言う古楽器演奏か?パイネマン/マーク/チェコ・フィルによるDVOR'AK・RAVELはCD化されたが、忘れじの演奏。オグドンのLISZTはわりと知られているが、ピーター・ゼルキンのSCHUBERTは復活して欲しいもの。若杉/読響のモツ・レク〜こういう膨大な国内録音は激安で復活しないものか?

 ま、以上走り書きです。ほとんど今でも名演の誉れ高く、CD化されているものばかり。当時の評論の情緒的なこと、偏った先入観を存分に楽しんで下さい。こういう本が売れたり、楽しんじゃマズいような気もしますが、音質も含めて現役だからどうしようもない。


●本で聴く音楽−▲top pageへ

written by wabisuke hayashi