小沢征爾、武満 徹 「音楽」新潮文庫 1984年発行 400円 数度に渡る引っ越しで、本はかなり処分していまいました。石丸寛さんの「それゆけオーケストラ」とか、山本直純「オーケストラがやってきた」、バス(だったかな?)の岡村さんの本(題名失念)も見あたらない。小沢征爾は人気高いらしく、「僕の音楽武者修行」は(手元にはないが)いくらでも古本屋で見かけます。 小澤はともかく、武満徹はファンなのでこの本は手元にありました。単行本は1981年に出ているので、二人が対談している内容は1970年代後半なんでしょう。もう20年も昔の話しで、武満さんもこの世に存在しません。小澤も、既に辞任することが決まっているボストン響との関係も、まだ始まった当初の話しです。日本を取り巻く状況もそれなりに違うのがおもしろい。 自由な対談なので、ワタシが印象に残っている部分のみコメントしてお茶を濁しましょう。 二人とも中国生まれとのこと。そういう契機もあって、小澤が「中国の開放政策のハシリ」みたいな時期に、北京中央楽団を指揮してブラームスを演奏する。ところが団員のうち、年輩の方数人しかブラームスを演奏したことがなかったという驚き。やがて、それが契機でボストン響が中国を訪問することになったり、中国政府が楽器購入の予算を組んでくれて、小澤がその選定に骨を折ったこと。(素晴らしい) この時期、日本にはまだちゃんとしたホールがなくて、それがオーケストラの音作りに影響を与えていること。(いうまでもなく、このあと10年間で景気の良かった〜バブルも含めて〜時期に、世界有数のホールをバリバリ建築しますが) 武満の音楽が欧米で人気が高まっていたのに、日本のお役人はまったく武満のことを知らず、フランスのお役人が驚いていたこと。(芥川や黛は有名だった)いわゆるヒッピーや、ドラッグを使う人々には武満は神格化された人気があったこと。日本古来の楽器である琵琶や尺八の神秘的な響きに対する、欧米での新鮮な受け止め方。 いまや、おそらく武満の音楽は日本でも人気ナンバー・ワンでしょう。彼のクールで幻想的な世界は、日本の若い世代にもぜひ聴いて欲しいもの。受けると思うんですけどねぇ。 よく知られていることだけど小澤の先生は、斉藤秀雄、ミュンシュ、カラヤン。そして、そのあとバーンスタン(ニューヨーク・フィル)のもとで副指揮者でしょう。もちろん才能が基本だろうけど、恵まれていますよね。(ミュンシュ先生の思い出話しがおもしろい。ほとんど棒なんか振らずに、オケの音を変えてしまうマジック) 熊井啓監督 映画「天平の甍」の音楽は武満だったんですね。鑑真和上には興味があったので、封切り当時見に行った記憶があるけれど、映像の美しさはともかく、筋書きがちゃんとできていなくて失望した記憶があります。音楽は記憶がない。中国政府がずいぶんと協力してくれた様子が話されていて、また見たくなりました。 解説が細野晴臣なんですね。ワタシは世代的には「はっぴぃえんど」の少しあとなんですが、ずっと一貫してファンでした。例の如しで、難解で短い文章が印象的でした。 武満徹〜ワタシのお気に入りのCD
Dream Time 岩城宏之/メルボルン交響楽団 ABC 8.77000 6 $2.99で購入 幻想的で繊細な味わいは日本人指揮者でこそ生きる、という見本。試しに有名な「ノヴェンバー・ステップス」を小澤盤とハイティンク盤で比べてみて下さい。トロント響とコンセルトヘボウでは、オケの力量に大きな差があるはずだが、細かい味付け(基本のダシ〜上品な隠し味のような)が違います。
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