井上 太郎 「モーツァルト・ガイドブック」ちくま新書 1995年 680円
モーツァルトの本は腐るほど出ていて、ワタシも相当数在庫しているはず。井上さんは、音楽理論を学びながら、出版界で活躍した編集者だそうです。ワタシにとっては「ノウ・ハウ」はよけいなお世話なので、第4章「モーツァルトのCD、LD」は興味なし。 第1章は「モーツァルトに関する24のQ&A」は、ファンとしては知りたい素朴な疑問が揃えられていて、上手い構成になってますね。「何故、交響曲第37番がないのか」「古楽器を使った演奏が出てきているが、現代楽器による演奏は間違っているのか」「当時のオケの規模は?」「当時はどうやって音楽が広がっていくのか」「モーツァルトの出た学校は?」とか、けっこう「ん?」と引きつけられます。回答もじつに明快でツボを押さえて立派。 第2章「モーツァルトが生きていていた時代」。意外とこのような時代背景を考える機会がないので、感心しました。受験勉強のせいで、未だに暗記しているフランス革命が1789年。イギリスの産業革命が18世紀後半。いずれもモーツァルトの時代ですよね。アメリカ独立も1776年。当時のイギリスは先進国であって、既にハイドンが活躍していたように、もしモーツァルトがもう少し長生きしたら、イギリスに行っていただろうと想像されること。 フリーメイスンは、啓蒙思想の具現化をしていること。(はっきりいって、フリーメイスンの雰囲気はこれを読んで初めて知った)ゲーテも同時代であり、モーツァルトを「音楽における到達不可能なものとして、モーツァルトを作り上げた」と高く評価していました。ちなみに本居宣長、平賀源内も同時代とのこと。
第3章「モーツァルトと同時代の作曲家群像」。音楽を愛するものにとって、こんな貴重な情報はありません。 これからCDを探す楽しみが増えました。 第4章「モーツァルトのCD、LD」は、この本執筆時点での代表的な録音も網羅されて、よく配慮され、カテゴリー、時代別に分類が配慮された内容ではあります。巻末の「ブックガイド」が詳細を究めて立派。ケッヘル番号は、曲名に調性がないのであまり役に立ちません。 このHPで取り上げた本は、旧いものが多くて手に入らないものもあるかも知れませんが、これはまだあるはずです。
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