玉木 正之著「音楽は嫌い、歌が好き」小学館文庫 1998年発行 540円 あれ、この人「クラシック道場入門」という本も出しているんだなぁ。探さなくちゃ。スポーツもののルポルタージュ専門の人かと思ったら、けっこう音楽関係のエッセイを書いているんですね。買ったときは「イマイチ」と思って読んだが、HPネタ切れに従って読み返すと、そう悪くない。素朴な音楽愛好家の気持ちが伝わってきて、自分との共通点も多い。 まず、「硬派」のクラシック・ファンに対する揶揄(といっては失礼か)。Puffyをこき下ろす人に対する、理論的反論。(MOZARTの喜遊曲を引用している〜ホンマか?)ま、ワタシなら、そんな小難しい言わないで、「若くて可愛い女の子のファッションが素敵」だけで済ますけど。都はるみの大ファンだそうで、ま、趣味ではないが、ワタシの中森明菜好きと良い勝負でしょうか。 「交響曲ファンなんていなくなれ」〜これ、日本特有の現象なんでしょうか、37.9%が交響曲好きとのこと。これは(凋落激しい)東京ジャイアンツ(誰だ?巨人、なんて言っている奴。ちなみにダイエーではなく「ホークス」が正しい)ファンと同じで、真剣に聴いている人はいないんじゃないか、という問題提起。 MAHLERの第9番、「大地の歌」を聴けば自殺者続出、BRUCKNERの第8・9番ならば様々な宗教入信者大量発生、シベリウスなら家族を捨て北の国々にぶらりと旅立ってしまう、ショスタコ後期の作品なら自閉症に、スクリャービンならSMの世界に・・・・ま、真剣に聴けばそうなるはずだ、という主張は一理あるような気もしないではない。 このあと「歌が好き!」と題して、(様々な演奏会のパンフレットからか?)オペラを擁護しております。カラヤンとバーンスタインの比較では「レニー派」とのこと。「悲愴」を論評しておりますが、この辺りがワタシの手口と似ていて、シロウトとしての発言をわきまえていて奥床しい。(自画自賛か) PMFにも関わりがあるそうで、逸話がちょっと泣かせます。女子中学生のホルン吹きが「ワタシは本番で上がってしまって・・・」との悩みに対して、ウィーン・フィルのヘーグナーが「ワタシもいっしょです。ですから本番前にビールを飲みます。貴方もビールが飲める年齢まで練習して下さい」。 「野球の監督と音楽監督」みたいな、やや本職を彷彿とさせる一文もありました。全体として「お勉強」といった感じでもなくて、気軽な内容が楽しめます。ここ最近、読書量が減っているし、本を読み出せば即、眠くなる悪い癖がついてしまったので、こんな本がワタシには相応しいかも。
●本で聴く音楽−▲top pageへ |