宇神 幸男 「消えたオーケストラ」講談社文庫 1994年発行 580円(古本で100円) おお、油断していると「本で聴く音楽」更新をまったくサボってしまう。ここんところ「医療物」「シーナ誠」辺りに入れ込んでいて、「音楽物」なんてさっぱり読んでいないんですよ。で、しかたないので前作「神宿る手」の続編を。先日、それを上梓したところ「『4部作』は読んではいけない!」という助言をいただいちゃったし、へぇ4部作なの、といったところで無理して探しておりません。 また美人ピアニスト兼指揮者である島村夕子さん登場。これ、映画にするんなら誰がよろしいでしょうね。ワタシが監督だったら黒木瞳かな。ま、自分の好みだけだけど。で、なんやかんやで彼女がデヴュー演奏会を開くんですね。演目はBEETHOVEN「コリオラン」序曲、お次はHAYDN交響曲第45番 嬰ヘ短調「告別」。 美人が長い髪を揺らせて指揮する姿なんてのは、想像するだに妖しいが、「告別」でひとりひとり退場していくでしょ。それっきり、オーケストラのメンバーが消えちゃうんですよ。ラストのBEETHOVEN 交響曲第5番ハ短調が演奏できなくなって、彼女がひとりピアノ版で演奏することになるんですね。 きれいサッパリ消えた団員はどこに消えたのか?更に、コントラバス・ケースに一人の団員の死体が詰め込まれて届くという、猟奇的な展開へと進みます。これは前作の続編なので、音楽雑誌記者蓮見も登場するし、幻のピアニスト・バローも無事日本公演を成功させ、その直後に亡くなっております。 やたらと薄ぺっらく、日本のマスコミに露出する島村夕子。これも、じつは事件の布石なんですね。なぜか新婚ホヤホヤなのに絶望的に上手くいっていない若いご夫婦も登場するが、これも怪事件仕掛けのカギを握っております。さすが、小説家はいろいろ考えておりますな。 いろいろあって首尾良く解決を見るが、犯罪の裏は上手く表現できているが、島村夕子絡み連結の「そもそもはじめ」問題が、少々甘くないですか?そこらへん、もうちょっとクドく確認が欲しかったところ。第2作は、実際の犯罪も「殺人」も発生しちゃったので、「神宿る手」より少々グレードは落ちるでしょうか。 続編はBOOK-OFFで100円で出るようだったら買いましょう。(2002年6月15日)
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