石原 俊 「クラシックCDガイド」岩波アクティヴ新書 2002年発行 740円 こんな紹介ノウハウ本はまだ売れるんだなぁ。しかも、硬派の岩波書店でしょ?石原さんって、ワタシと同世代で丸顔のところもよく似ている。オーディオ関係にも造詣が深い人のようです。ま、ワタシは「この演奏がお勧め!」的本については「はぁ、じゃ、参考程度に・・・」って、いったい世間一般ではどんなものが評価されているだろう、くらいのつもりで読みます。 人の評論はツユほどにも信じないが、この本には特異な価値があって「現代の名演奏」〜つまり物故した歴史的評価の高い巨匠ではなくて、現役バリバリのものを、作曲家時系列的に紹介していること。へそ曲がりのワタシでも、油断すると亡くなったり、生死不明で既に引退か、みたいな演奏家のCDが多数派になっているから(旧い録音のほう が安い、という一般的原則がある)、これは貴重なる情報でした・・・・・ というか、正直ほとんど聴いたことはない演奏ばかり。たまに知っているのも有。ラトルをメインに据えて、ゲルギエフ、バレンボイムの比率が高いかな?あと、ジョン・エリオット・ガーディナー、ティーレマン辺りか。そうなんだろうな。でもね、カラヤン、バーンスタイン亡き後、どうも「巨匠不在」(好き嫌いは別として)の時代になったみたいで、こうしてリストを見せられても物足りない思いが募るばかり。 筆者は、実際の演奏会を支える現役達に賛辞を惜しみませんね。それは正しい姿勢だと思います。でもね、正直TCHAKOVSKY交響曲第4番をバレンボイム/シカゴ響で聴きたいとは思いません。VIVARDIの「四季」をチョン・キョン・ファで、と言われてもねぇ、ちょっと困惑するばかり。 MAHLER交響曲第3番は、ナガノ/ベルリン・ドイツ響で〜これ数少ないCDを聴いているもので、これは納得です。そういうのも沢山書いてあります。SHOSTAOVICH交響曲第4番はチョン・ミュン・フン〜これもOKですね。筆者は、情緒を廃して、なるべく長所を強調した表現にしていて、これはこれで好感が持てます。真面目な本ですよ。 でもね、「いま、聴くべきCD100タイトル」というのは、どうかねぇ?これから将来に渡ってクラシックCD業界を発展させて行くためには、新しい録音をバンバンしてもらって、それが実際に売れることは不可欠でしょう。異議なし。その通り。でも、この本に出ているすべてが「いま、聴くべき」〜「べき」ですよ〜とはとうてい思えません。 でもやっぱり、この本の価値は高い。いつまでも60年前の録音(ばかり)聴いていても仕方がないじゃない。日本の音楽ファンは「爺好き」でして、老熟していないと演奏にありがたみを感じない風潮があるのはたしか。この本を読んで、少々反省しました。 小澤の2002ニューイヤーコンサートが入っているのはねぇ・・・ちょっと。ごめんなさいしたい感じ。
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