Schubert ピアノ・ソナタ第18番ト長調D.894「幻想」
室井摩耶子(p)
Schubert
ピアノ・ソナタ第18番ト長調 D.894「幻想」
3つの小品 D.946「即興曲」
室井摩耶子(p)
ADAM ACD0043 1997年録音 300円で(これはBOOK・OFFにて)購入
室井摩耶子さんは日本が誇る大ヴェテランです。ナント大正生まれ、そして現役。このCDは少々前の録音だけれど、技術的な危うさは存在しないどころか、優雅で落ち着いた味わいが悠々と表現され、聴き応えたっぷり。ワタシはSchubert がお気に入り(とくに室内楽、ピアノ曲)でして、後期の長大なるピアノ・ソナタには陶然と感銘の渦に・・・Schubert 晩年の作品って、”長大な”作品多いですよね。いつまでも沸き出る歌が止まらないよ!的、静謐安寧甘美横流れの世界。嘆きや哀しみは時に出現するが、怒りや戦いの勝利!(勘弁してよ)でがっちり構成しないところがBeethoven との違いか。
昔語りが始まるような懐かしい第1楽章。ゆったりと、くどいほどの繰り返し(いつ終わるの?と不安になる20分間)に身を委ねられたら、そこはもう極上の世界であります。叫ばない、走らない、優しい音楽であり、演奏。第2楽章「アンダンテ」は夢見るように懐かしい、憧れの旋律で開始されますね。そして、胸に痛い嘆きが時に襲って、その対比は鮮やかであります。「胸に痛い嘆き」を徒に強靱に叩きすぎない、リキみがないところが、室井さんの奥床しさだと思います。そして「憧れ」には繊細な配慮が溢れ、やがて消え入るように静かにこの楽章を終えました。
悲劇的に開始される第3楽章「メヌエット」は、すぐに優しい旋律に慰撫され、まるで曰くありげな男女の会話のような趣があります。「優しい旋律」は、躊躇(ためら)うように儚(はかな)げで、細かいニュアンス表現の見事さ。牧歌的な旋律が淡々と(しつこいほど)繰り返され、晴明な表情に癒され、最終楽章は名残惜しげに消えていきました。ラストはがっちり勇壮に盛り上げていただかないと!と、お考えの方には、はぐらかされたような、物足りない作品と感じられるかも知れません。
室井さんの表現は、とつとつ淡々と計45分に及ぶ長旅を続けて、味わい深い。艶やかなる美音ではなく、雄弁なる節回しでもないが、諄々と素直な気持ちでココロの奥底に、そっと忍び寄る暖かいもの。
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「3つの小品」D.946は、もっと不安げなる表情豊かな旋律が躍動している作品ですね。ちょっと表現がウェットかな?中間部でテンポを落として、シミジミするところなんか絶品ですけどね。(「アレグロ・アッサイ」)「アレグレット」は愉悦に充ちて瑞々しく、ラスト「アレグロ」の軽快なる足取りにも、常に余裕を感じたものです。硬さは微塵もない。地に足がついた・・・評すべきか。(2006年9月1日)
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