Mozart 弦楽四重奏曲第16/17/18/19番
(ジュリアード弦楽四重奏団1966年)


Mozart  弦楽四重奏曲第16/17/18/19番(ジュリアード弦楽四重奏団1966年) これはSEEM A014
Mozart

弦楽四重奏曲
第16番 変ホ長調K.428
第17番 変ロ長調K.458「狩」
第18番イ長調K.464
第19番ハ長調K.465「不協和音」

ジュリアード弦楽四重奏団

SEEM A014/015(CBS/非ライセンス盤) 1966年録音 各250円で購入(中古)

 相変わらずこんな”駅売海賊盤”を買ったり、聴いたりしているから、心ある音楽ファンからは胡散臭く思われていることでしょう。でもね、現在ジュリアード弦楽四重奏団による「ハイドン・セット」は1977年録音しか入手できず、こちら旧録音は非常に珍しいもの・・・というか、勝手にLP板起こししたものでしょう。ようはするに、安かったから購入しただけ。(きっと第14/15番も存在するのだろうが、BOOK・OFFにはこの2枚しかなかった)優秀録音とは言いかねる、やや(いえ、かなり)曇った音質。

 今は昔、十代前半だったワタシは「不協和音」(スメタナ弦楽四重奏団によるモノラルLP)に衝撃を受けたものです。20世紀の音楽を思わせるような、不安げで破壊的な序奏〜そして、輝かしい生命の躍動へ。やがて、変ホ長調K.428冒頭の不安げな旋律の応答など、この作品の革新的な様子が徐々に理解できるようになってきました。やがて幾星霜、徒(いたずら)に馬齢を重ね中年に至った現在でも、この作品に対するドキドキ感は失われませんね。

 良いですね。背筋が伸びて、知的なバランスに支えられたアンサンブル。甘美ではないが、ヴォルフガングの愉悦に欠けるわけでもない・・・これは「音楽日誌」からの引用。「甘美ではない」というのは、おそらくLP時代愛聴したバリリ弦楽四重奏団(を中心とした1950年代)全集との、印象の違いだと思います。ジュリアード弦楽四重奏団といえば、現代音楽やらBartok演奏で有名だけれど、こんなモダーンな集中力と、溌剌メリハリあるMozart も悪くないものです。余計なるタメとか、無駄な味付けはないんです。

 変ホ長調K.428は、憂いを感じさせつつスケール大きな呼吸で開始されました。凛として甘さ控えめ、端正なるアンダンテ、決然とした表情で歌うメヌエットを経て、そっとお互いの呼吸を計りながら走り出す、終楽章の躍動。変ロ長調K.458「狩」のネーミングは、「曲の出だしが、狩の角笛を思わせる」所以だけれど、楽しげ朗々とした表情は時に暗転して陰影豊かであります。優雅なメヌエットを経て、あくまでクールな佇まいを崩さないアダージョ、そして溌剌快速なるフィナーレへ。

 イ長調K.464は穏健なる田園的作風だけれど、優しげ、儚げなる第1楽章には時に変拍子もあります。古典的なメヌエット、静謐なるアンダンテ、終楽章もあくまで暖かく、にこやかな表情を崩さない。ハ長調K.465「不協和音」冒頭の衝撃と、一点の曇りもない晴れやかさ、天衣無縫なる表情の鮮やかなる対比。ハ長調という調性に相応しい生命(いのち)の躍動と、雄大なるスケールが継続します。

 「アンダンテ・カンタービレ」は纏綿と歌って、細かいニュアンスには比類なく、しかも雄弁多弁に至らぬ抑制もちゃんとある。メヌエットには、聴き手のカラダを自然と揺らせるリズム感が目一杯であり、あくまで軽やかな終楽章へ。時々、わずかに立ち止まりながら、また(例の如しの)暗転も効果的で、なんと色彩豊か、楽しげな音楽なのでしょうか。

 ・・・たったこれだけの文書を書くのに、5回ほど繰り返したでしょうか。これが趣味の醍醐味であります。

(2006年7月27日)

   


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written by wabisuke hayashi