Mozart ピアノ協奏曲第27番 変ロ長調K.595
(ウィルヘルム・バックハウス(p)/カール・ベーム/ウィーン・フィル)


.mp3音源から勝手に自主CD化したもの Mozart

ピアノ協奏曲第27番 変ロ長調K.595

ウィルヘルム・バックハウス(p)/カール・ベーム/ウィーン・フィルハーモニー

1955年録音/.mp3音源から勝手に自主CD化したもの/もともと英DECCAのステレオ録音

 音に対するこだわりは人それぞれ、ワタシのように安物のオーディオ環境、挙げ句、このような自主海賊盤にまで手を伸ばして.mp3→.wavファイルにデコードして音楽を聴いているなんて、きっと笑止千万なる世界なのでしょう。正規盤ではSACDになっているほどの優秀録音らしい。なんどもサイトネタにしているが、2009年初頭に激安歴史的録音の棚中在庫は70%以上オークションにて処分(数百枚単位で)いたしました。思い起こせば、21世紀”怒濤の廉価盤時代”の幕開けとなったのが著作(隣接)権切れの”HISTORY”ボックスでした。

 ネット時代も深化して、音源はフリーで拾える時代に〜CDRは@20でっせ。より佳い復刻を!求めなければ、ちょっとしたパソコン上の知識と技術があれば、音楽を愉しむことはできる・・・あと必要なのは聴き手の無垢な精神のみ。ああそうか、時代はデータのままイヤホンで聴くことが主流になっているんだっけ。新品CDボックスを購入して、i-Podにぶち込んで、現物はオークションに・・・という人もいますもの。

 ワタシ、無条件幸福のMozart の大ファン、その中でもピアノ協奏曲が白眉の嗜好であります。ここ最近、古楽器ばかり聴いていたんですよ(マルコム・ビルソンとかリンダ・ニコルソンとか)。新しい録音だし、もとより古楽器派のワタシ、その粗野で素朴な躍動、快活なリズムを堪能しておりました。

 で、このバックハウスに出会いました。偶然だけど、子供の頃よりカタログやらレコード屋さんでその姿を見掛けながら、実際に音にして聴いたのは人生の黄昏、背中に陰影深く感じるようになったごく最近〜ああそうか、これは浪漫なんだね。背筋は伸びて、墨痕鮮やかなる太字の楷書、味付けはしっかりと濃厚に甘辛い・・・オリジナルは聴いたことがないが、こんなエエ加減自主復刻CDでもワリと聴きやすい音質だと思います。

 バックハウスはイメージ的に立派で頑迷なるBeethoven のほう(「鍵盤の獅子王」!おお、なんという陳腐なコピーだ)だけど、昔のChopin とか、1950年代のMozart のソナタなんか思わぬ繊細が聴けるんです。おそらく、これを録音した時期では、端正なる表現だったのでしょう。現代の耳だと、しっとり浪漫の味付けが揺れて、甘美でさえある。美しいし、ていねいだけれど、その”揺れ”が少々鬱陶しい、重い感じもある。

 それはカール・ベームのバックも同様で、オールド・ファンが”薫り高き往年のウィーン・フィル”を絶賛することも理解できます。ちょうどスカみたいに味気ない古楽器(と評される方もけっこう存在する)と正反対の世界であって、ちょっとノスタルジーさえ感じさせる”纏綿とした美しさ”続きました。ワタシはさっそうと軽快素朴なリズムを愛するから、純真無垢な第1楽章には、こんなに色も味も付けちゃヤバいでしょうが、と困惑いたしました。

 でもね、第2楽章「ラルゲット」〜そして春への憧れを連想させるフィナーレと聴き進むと、やがてこれは別世界だ、浪漫なんだ、と耳慣れて、感銘深く往年の名人の節回しを堪能いたしました。芯がしっかりとして、密度高いピアノ、これはこれで枯れているんだろうな。歩みはしっかり、揺るぎない。

(2009年7月31日)

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written by wabisuke hayashi