Mozart ヴァイオリン協奏曲第6番 変ホ長調 K268/第7番ニ長調 K271a
(ミヒャエル・エルクスレーベン(v)/新ベルリン室内管弦楽団)


CPRICCIO SMU-21  10 807/3

Mozart

ヴァイオリン協奏曲第6番 変ホ長調 K268(Anh.C14.04)
ヴァイオリン協奏曲第7番ニ長調 K271a
ヴァイオリンと管弦楽のためのアダージョ ホ長調 K261
ヴァイオリンと管弦楽のためのロンド ハ長調 K373

ミヒャエル・エルクスレーベン(v)/新ベルリン室内管弦楽団

CAPRICCIO SMU-21 10 807/3 1990年録音

 前回拝聴コメントの日付がない、ということは20世紀中か。【♪ KechiKechi Classics ♪】開始初年に「履歴」はなかったから、随分と前のこと・・・”モーツァルト・イヤー”ってなんだ?没後300年か、それが商売になったんだからバブルやったんやな、やはり。やがて弐拾有余年、怒涛のCD入手・入れ替え、挙句処分を繰り返して棚中生き残っているのは、作品の珍しさ故でしょう。我らがヴォルフガングの真作とは認定されぬ魅惑の旋律(アデライーデ協奏曲k.Anh.294Aはまったくの偽作、これもド・シロウトには楽しいもの)。「アダージョ」「ロンド」は正真正銘ほんまもんでっせ、文句なしの名曲也。CD一枚1,000円の贅沢品でっせ、現在入手困難かも。

 ミヒャエル・エルクスレーベン(Michael Erxleben)は旧東独逸出身1960年生まれとのこと。けっこう録音あるけれど、あまり話題にはなっておりません。これがしっとり瑞々しい、控えめなヴィヴラートが柔らかく、派手さのない音色が床しくも繊細、素晴らしく流麗、弾むような技巧。現代楽器のアンサンブルも同様、豊かな残響に支えられ、快い浪漫方面の表現は清潔なアンサンブルであります。音質極上。

 こうして久々の拝聴は、音質やら演奏スタイルの印象かも知れぬが、二十歳頃ザルツブルク時代の作品にくらべ、旋律和声が複雑陰影豊かであり、浪漫の香りも僅かに香ってスケールも大きいと感じます。いずれ、名曲。ヴァイオリン協奏曲第6番 変ホ長調 K268(Anh.C14.04)始まりました。スケール大きな堂々たる歩みにて開始される第1楽章「アレグロ・モデラート」、ホルンを先頭に管楽器の存在がその印象をいっそう強めます。やがて、その流れのままそっとソロが合流して、細かい音形は複雑です。第2楽章「ウン・ポーコ・アダージョ」は弦のみの伴奏であり、纏綿としたソロが朗々粛々と歌って哀悼の表情濃厚。終楽章「ロンド・アレグレット」の夢見るような、華麗なソロの見せ場となります。転調の対比も鮮やかなもの。全22分ほど。もしMozart の作品としたら後期晩年の手練を感じさせるものでしょう。

 ヴァイオリン協奏曲第7番ニ長調 K271aは、作品番号K.271からピアノ協奏曲第9番 変ホ長調「ジュノム」と同時期の作品と考えられたものらしい。こちらのほうが作品イメージとしては”いかにもMozart ”的テイスト濃厚と聴き取りました。第1楽章「アレグロ・マエストーソ」は、リンク先情報によると「自身によって作曲された ことは間違いない」とのこと、但し、ヴァイオリン技法的(重音奏法)に19世紀以降の手が入っているところ。エルクスレーベンの低音が充実していて、かなり長いカデンツァもみごとな技巧にて乗り切ります。

 第2楽章「アンダンテ」はピツィカートによる開始、優雅な歌と哀しみに充ち、オーケストラとの掛け合いもたっぷり美しいところ。これはMozart の時代として、やり過ぎ?終楽章「ロンド・アレグロ」は華やか、目まぐるしい旋律快速に歌われて、ソロの技巧も冴えます。バレエ音楽「レ・プティ・リアン」K.299bが引用されているとの情報有、ほんまか!ということで手許のCD取り出して第12曲「ガヴォット」と同じ旋律(ずいぶんノンビリ)を確認いたしました(ヤーノシュ・ローラ/フランツ・リスト室内管弦楽団)。計30分に迫る堂々たる作品であります。

 「アダージョ」と「ロンド」は、愛するヴォルフガング中屈指の名曲、愛聴すべき作品。うかつに2枚組の全集など入手して、時に省略されることもあるから要注意。紛れもない真作の魅力に心癒され、駆け出したくなるような喜びにあふれました。そっと囁くような、繊細抑制された美音であります。

(2013年9月29日)

 モーツァルト・イヤーに合わせて新星堂が出したMozart 1000シリーズから。当然1,000円。

 このシリーズなりに選曲へのこだわりがあるようで、こんな偽作まで揃えてくるのは嬉しい限り。演奏家が珍しくて(私が知らないだけかも)、ヴァイオリニストもオーケストラもまったくの初耳。ベルリン室内管というのは旧東ドイツで存在していましたから、その団体が改編したものなのでしょうか。廉価+珍曲+耳慣れない演奏家=私の趣味にピタッとはまるCDでしょう。しかも新しいデジタル録音。

 第6番は、真作の1番〜5番の作風とは違って(あたりまえか)ホルンなどがバックで活躍して、やたらと立派な感じがします。作品成立の経緯はよく知りませんが、第1楽章あたりはモーツァルトも関わっているらしい・・・というか、素人耳にはモーツァルトそのものだなぁ。もう少しあか抜けて安易に洗練されたモーツァルト、かな。素敵な甘い旋律の曲ですよ。

 第7番は、今世紀マリウス・カサドシュという人が「いかにもモーツァルト」らしく作った作品とのこと。弾むようなリズムが楽しい初期のモーツァルトの雰囲気があって、華やかさが際だつ名曲です。主旋律が短調に崩れていって、やがてぱっと元の調子に戻る開放感、みたいないつもの手法も踏襲しています。学術的に世間を欺くのはいけませんが、クライスラーみたいな洒落だったら嬉しいですよね。たしか「アデライーデ協奏曲」といって、メニューインも録音していたはず。

 あとの2曲はもちろん真作で、「ロンド」における喜びが弾けるような、ウキウキとした雰囲気はモーツァルトのなかでも最高傑作と思います。この曲は私をいつも幸せにしてくれます。

 演奏は極上。ソロのすべての音域わたってムラのない瑞々しい音色、けっして濁らないボウイング、上品で充実したオーケストラ(とくに透明感溢れる木管)、どれをとっても最高の演奏であり、しかもしっとりとしたデジタルらしからぬ録音です。


【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
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written by wabisuke hayashi