Mozart 序曲集(バリー・ワーズワース/カペラ・イストロポリターナ)


NAXOS 8.550185  1988年録音 Mozart

序曲集

歌劇「アポロとヒュアキントス」K38/歌劇「バスティアンとバスティエンヌ」K50/歌劇「ポントの王ミトリダーテ」K87/歌劇「ルチオ・シルラ」K135/歌劇「にせの女庭師」K196/歌劇「羊飼いの王様」K.208/歌劇「イドメネオ」K.366/歌劇「後宮からの逃走」K.384/歌劇「劇場支配人」K.486/歌劇「フィガロの結婚」K.492/歌劇「ドン・ジョヴァンニ」K.527/歌劇「コシ・ファン・トゥッテ」K.588/歌劇「魔笛」K.620/歌劇「皇帝ティートの慈悲」K.621

バリー・ワーズワース/カペラ・イストロポリターナ

NAXOS 8.550185  1988年録音 800円ほどで購入

 NAXOS初期の録音(1988年)であり、ワタシとの出会いもずいぶんと昔のこと(15年程か)になる一枚。こうして、改めて拝聴すると貴重な、得難い存在とわかります。これだけたくさんMozart の序曲を収集したCDって他にありましたか?「フィガロ」「ドン・ジョヴァンニ」「コジ」、あとは「魔笛」くらいでしょ、ふつう。イギリスの中堅指揮者が、東欧(ブラティスラヴァ)の臨時編成っぽい室内アンサンブルを指揮して、意外と味わい有。当然現代楽器使用。音質的には、この時期なら並のほうか。弦の高音がヒスっぽいとか、贅沢言っちゃいけません。

 足りないのは「みてくれの馬鹿娘」K.46a、「シピオーネの夢」 K.126、「ツァイーデ」K.336bくらいか。ああ、「アルバのアスカニオ」K.111があったか。収録時間的には、あともう一曲くらいは演って欲しかったところ。序曲ばっかり聴いていても仕方がないですか?閑話休題(それはさておき)・・・

 「アポロ」「バスティアン」(Beethoven の英雄交響曲冒頭主題に似ている〜当然こちらが先輩筋だけれど)辺りは素朴なものですよ。11/12歳、ほんの子供の作品ながら素朴な愉悦に溢れます。演奏的にはやや冗漫で(「アポロ」)、もっと昨今流行の古楽器系溌剌としたスタイルが似合うべき作品と思います。「バスティアン」は「似ている・・・」なんて思っているウチ、あっという間に終わっちゃう。

 「ミトリダーテ」「ルーチョ・シルラ」は、急緩急の「イタリア風序曲」(シンフォニア。チェンバロも入る)なんです。まさに”小交響曲”の躍動たっぷりの魅力的作品でして、演奏だって軽快なリズム感に充たされました。(小編成が似合う作品か)楽器編成だって小さいだろうし、もっとコンサート・ピースとして取り上げられるべき佳曲。「ルーチョ・シルラ」に至っては後年の充実ぶりがはっきり予感でき、響きは厚みを増します。

 「にせの女庭師」(La finta giardiniera)〜って身も蓋もない直訳だけれど、「恋の花作り娘」は少々訳し過ぎかな?「牧人の王」ともども軽快で可憐なる楽しい作品。ま、この辺りの作品迄は競合CDも少ないし、短い作品だし、あまりムツかしい文句付けずに楽しみましょうね。

 「イドメネオ」から先、かなり知名度もあるし、著名なる録音古今東西残っておりますから、聴き手(=ワタシ)も身構えがち。「後宮からの逃走」「劇場支配人」ともども、陰影に富んだ旋律が聴き手を飽きさせぬ名曲揃い。管弦楽は色彩を増し、「後宮」辺りの打楽器は相当に衝撃的な作品でしょう。弦は洗練されないが、木管の響きは素朴な味わいが悪くないもの。いくらでも一流オーケストラの録音で比較可能だけれど、(これはこれで)ややこぢんまりとした味わいと、リズムに精気があって楽しめます。「劇場支配人」はそうとうにアツい。

 さて、いよいよ「フィガロ」「ドン・ジョヴァンニ」「コジ」「魔笛」という定番中の定番、名曲中の名曲に至りました。良いですねぇ、これだけの名曲となると既に演奏の質を問わないと言うべきか、ワーズワースは存分に奮闘していると見るべきか?小編成故、管楽器がよく歌って縦横に活躍します。(ティンパニの動きもよく理解できる)「ドン・ジョヴァンニ」は意外と劇的に開始されるが、後半少々息切れ気味。

 「コジ」は木管の柔らかい響きが美しいが、全体として抑制が利き過ぎか。「魔笛」はリリカルでバランスよく、ここでも木管の清廉なる歌が印象に残りました。金管の響きも抑え気味で配慮有・・・嗚呼、ほんまにエエ曲ですね、どれも。

 「ティート」は、少々生真面目で荘厳な味わいの作品です。生真面目すぎて、同時期の「魔笛」よりオモロくないかな。


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written by wabisuke hayashi