Mozart a Paris (1)(フェルナン・ウーブラドゥ)Mozart
ヴァイオリンとクラヴサンのための協奏曲 ニ長調 K.315f(フラグメント) デュモン(v)/ヴェイロン・ラクロワ(cem) キリエ ヘ長調 K.33 セリエ(s)/ミシェル(con)/ギランデュー(t)/ルー(b) 協奏交響曲 変ホ長調 K.297b ピエルロ(ob)/ランスロ(cl)/ヴェスコヴォ(hr)/オンニュ(fg) フェルナン・ウーブラドゥ/ウーブラドゥ室内管弦楽団 EMI 7243 5 73590 2 3 1955年録音 4枚組1,900円で購入したウチの一枚 ウーブラドゥは1903年生まれ。往年の名室内管を率いてフランスで活躍していたけど、もともとはファゴット奏者だった由。「Mozart a Paris」は、生誕200年を記念して企画されたオール・フランス名手によるものでした。LP時代は全7枚、CDだと4枚に収まったのか、それとも数曲削除があったのかはわかりません。(オリジナルLPは100万円するとか?バカらしい) 全体に録音があまりよろしくない(年代相応ではない)けれど、「Mozart 企画もの」としては出色の整合性を持っていて、「母と子のモーツァルト」とか「頭の良い子に育つモーツァルト」みたいなCDとは一線を画します。なんせ「ヴァイオリンとクラヴサンのための協奏曲 ニ長調」〜滅多に録音が存在しない珍しい曲も入ってます。コレ、なかなか楽しげで、躍動的な前奏からソロが語り始めると、わずか3:50で終了します。嗚呼、残念。 ヴァイオリンとクラヴサンのためのソナタ K.6〜9って、これヴァイオリン・ソナタ第1〜16番まで収録した2枚組(プーレ/ヴェルレ PHILIPS PHCP-9061/2)で馴染みだったけれど、正直全部続けて聴くと飽きるんです。作曲された経緯も含めて、この4曲のみまとめて聴くのが正しいし、30数分で楽しめる適度な長さ。明らかにクラヴサン(これフランス語ね)中心に活躍する典雅な作品で、粋で華やか。7〜9歳のガキの作品って信じられます?(一部ピアノだけで演奏されても良いらしい。K.6には父レオポルドの作品からの引用も有、とのこと) ヴェイロン・ラクロワは、時代的によく鳴るやや金属的な音色の楽器を使っているが、そう違和感はありません。デュモンというヴァイオリニスト、調べが付かなかったが、しっとり小粋で躍動感ある演奏ぶりが魅力〜というか、このハズむようなリズム感はヴェイロン・ラクロワ主導なのかな?K.6(ハ長調)の無垢な喜び、K.7(ニ長調)びおけるアダージョ〜ほんの少しの陰り、K.8(変ロ長調)のメヌエットは劇的表情の変化が楽しめました。 K.9(ト長調)の晴れやかで自信に充ちた表情には、後年の成熟への可能性を充分に予感されます。主題が次第に暗転していく手法はもうこの頃からもの。 「キリエ ヘ長調K.33」は11歳の作品であり、最初に書いたキリエだそうです。
Kyrie eleison. 主よ、憐れみたまえ。 さ、この一枚の白眉〜協奏交響曲K.297b〜新Mozart 全集では「偽作」として確定したみたいだけど、どう聴いても彼の魅力いっぱいの旋律でしょ。この当時、フランス最高級の名手を集めてけっこう表情は濃いんです。ソロが目一杯主張するんで、そう聞こえるのか。もっさりした演奏じゃないですよ。ウーブラドゥの表現って、意外と浪漫的だと思う。(アンサンブルが時に濁るのは録音のせいでしょう) ソロが絡み合い出したら、これは軽ろやかに歌い交わすようであって、光が射し込むように晴れやか。ヴィヴラートがよく効いたホルンの色気、微笑むように繊細なオーボエ、ドイツ系とは一線を画す暖色系クラリネット、ちょっと鼻声で粋なファゴット。ま、Mozart の協奏曲って、どれをとっても「人の声が歌っている」ように聞こえるんです。幸せな表情で、次々と歌声は引き継がれていく・・・・・・。 わずかなテンポの揺れもためらいがちで、ああ、この曲はなんて楽しいんだろう。アダージョ聴いていたら、とろけますね。そして、フィナーレのユーモラスな表情!大団円に向けて、主役達が次々と舞台挨拶に出ているのかな。ノリノリのアツい表情が魅力の名人芸でした。 (2003年7月9日)
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