Mozart レクイエム ニ短調 K.626(ジュスマイヤー版)
(フィリップ・ヘレヴェッヘ/シャペル・ロワイヤル/
コレギウム・ヴォカーレ/シャンゼリゼ管弦楽団)


Harmonia Mundi HMM931620 Mozart

レクイエム ニ短調 K.626(ジュスマイヤー版)
キリエ ニ短調K.341(368a)

フィリップ・ヘレヴェッヘ/シャペル・ロワイヤル/コレギウム・ヴォカーレ/シャンゼリゼ管弦楽団/ジビッラ・ルーベンス(s)/アネッテ・マルケルト(ms)/イアン・ボストリッジ(t)/ハンノ・ミュラー=ブラッハマン(bbr)

Harmonia Mundi HMM931620 1996-1991録音

 新年早々レクイエムというのもナニだけど、ここ数年次々と馴染みの人々が亡くなっていく寂しさ、哀しさ、しっとり愛するMozartでしみじみ振り返るのも悪くないでしょう。稀代の名曲との出会いは中学生時代、カール・リヒター(1960年)その厳しくも劇的な表現、心に刺さる感激をいただいた記憶も鮮明です。Philippe Herreweghe(1947ー白耳義)もすっかりヴェテラン、我が庶民のオーディオでも鮮明な音質、声楽の解像度に驚きました。演奏も種々聴いてきて、これが一番!そんな確信を得たものです。

 編成は声楽+バセットホルン2、ファゴット2、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ、弦五部、オルガンという特異な編成、オーボエもフルートもなし、Mozartはプロだから限られた、与えられた条件の中で作曲したんでしょう。未完成に亡くなってしまって、弟子が補筆完成させた第9曲「Offertory No. 1: Domine Jesu Christe (Chorus)」以降、初めてリヒター盤を聴いた時に「音楽の質が一段落ちる」と感じたもの。現在ならそんな僭越なことうかつに云えまへんで。全曲、神々しい風情をしっかり受け止めて堪能しております。

 第1曲「Introit: Requiem aeternam (Chorus)」導入は弦による厳粛な足取りからバセットホルンの低い音色がいきなり荘厳そのもの。声楽の明晰洗練された言語、柔らかい古楽器アンサンブルとのバランスに心奪われる清浄な哀しみであります。(4:24)第2曲「Kyrie eleison (Chorus)」はカール・リヒターの激しい情感を思い出せば、抑制された流れは自然体、あくまで主役は声楽、器楽アンサンブルは控えめに粛々と嘆きは深まりました。(2:28)第3曲「Sequence No. 1: Dies Irae (Chorus)」も同様、力強いけれど力みは感じさせぬ推進力と躍動。トランペットの存在感が光ります。(2:03)

 第4曲「Sequence No. 2: Tuba mirum (Soprano, Alto, Tenor, Baritone)」は神々しい(ちょっぴり粗野な)トロンボーンに乗せて、声楽ソロが敬虔かつ表情豊かに主張して、あくまでリズムは軽快に重すぎないもの。癒やしの場面でしょう。(3:16)第5曲「Sequence No. 3: Rex tremendae majestatis (Chorus)」は劇的な合唱の叫び。ここも響きは濁らず、明晰なバランスに惚れ惚れ、弱音でのデリカシーは聴きものです。(1:53)第6曲「Sequence No. 4: Recordare, Jesu pie (Soprano, Alto, Tenor, Baritone)」こんどは暖かいバセットホルンに導かれる声楽ソロ。言葉の意味を理解しないけれど、ここも優しい癒やしをたっぷり感じるところ。(4:57)第7曲「Sequence No. 5: Confutatis maledictis (Chorus)」は激しい怒り(男性)とそれをなだめる天上の声(女声)の対比が決然として、美しさ際立って静謐のうちに終了。(2:29)第8曲「Sequence No. 6: Lacrimosa dies illa (Chorus)」はキリストが十字架を背負って歩むリズムを連想させて、哀しみ際立つところ。稀代の名旋律はいくらでも詠嘆に煽ることは可能でしょう。抑制とバランス、細部の描き込み、古楽器のマイルドな響きに乗って清浄な哀しみが迫ります。ここが一番好きなところ。(3:04)

 第9曲「Offertory No. 1: Domine Jesu Christe (Chorus)」この辺りからMozartに非ず?的作風。洗練された合唱が急ぎ足に、ちょっぴり落ち着きなく過ぎ去りました。師匠の旋律組み立てよりちょぴりムダを感じさせても、弟子の奮闘努力を称賛しましょう。(3:40)第10曲「Offertory No. 2: Hostias et preces (Chorus)」ここも優しい旋律に間違いない。美しく透明な合唱に、やや凡百ありきたりな繰り返しと感じるのは先入観なのでしょう。(3:56)第11曲「Sanctus (Chorus)」ここもMozartの陰影に非ず。シンプルに素直な世界が続きます。(1:28)第12曲「Benedictus (Soprano, Alto, Tenor, Baritone)」各々声楽ソロの敬虔な味わいが際立って、優しく美しいけれど、旋律や展開はやや凡庸かと。それにしても声楽陣の際立った技量、器楽アンサンブルのバランスに惚れ惚れして聴き入りました。(4:40)第13曲「Agnus Dei (Chorus)」はデリケートな声楽の妙、”大きな”合唱。大空を駆け巡るような爽快な弟子の渾身の作品でしょう。(3:24)

 第14曲「Communion: Lux aeterna (Soprano, Chorus)」ここは冒頭師匠の作曲通りの繰り返し。寄せては返す哀しみと癒やしに劇的に全曲は終了する・・・やはり師匠の名旋律の陰影際立つ深遠さに感銘ひとしお、ほっといたしました。(5:14)最高のレクイエム演奏と確信いたしました。

 キリエ ニ短調K.341(368a)は二管編成、フルート、オーボエとクラリネットも2本加わった合唱作品。かなり深刻劇的、大ぶりな力強い作風であります。我らがヴォルフガングに駄作なし。(6:34)

(2021年1月2日)

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written by wabisuke hayashi