Mozart 聖体の祝日のためのリタニア 変ホ長調K.243/
リタニア (聖母マリアの祝日のために)変ロ長調K.109 (74e)
(ニコル・マット/ヨーロッパ室内合唱団他)


Nicol Matt (1970- Mozart

聖体の祝日のためのリタニア 変ホ長調 K.243

ニコル・マット/アンネマリー・クレーマー(s)/ヨーロッパ室内合唱団/マンハイム・プファルツ選帝候室内管弦楽団

リタニア (聖母マリアの祝日のために)変ロ長調 K.109 (74e)

ニコル・マット/ヨーロッパ室内合唱団/テアトロ・アルモニコ・シュトゥットガルト

BRILLIANT BRL94051/CD98 2001年録音

 油断すれば一生拝聴機会のない、涙がでるほど美しい作品。歌が聴きたい、人の声が聴きたいと心奥底に感じておりました。嗚呼これやな、聴きたかった音楽は。我らがヴォルフガングにとっては気に染まぬ、日常作業だったのかも知れないけど、できあがった作品は珠玉であります。彼に凡作などありえない・・・BRILLIANTの全集はあくまで合唱主体、オケはご近所アンサンブルの都合をつけて録音したものでしょう。ニコル・マット(1970-)はエリク・エリクソンとかフリーダー・ベルニウスの弟子筋にあたる合唱指揮者とのこと、BRILLIANTに膨大なる録音が存在します。

 こうしてヴォルフガングの日の当たらぬ作品をしっかり、気軽に聴ける、そんな時代に感謝。マンハイム・プファルツ選帝候室内管弦楽団(Kurpfalzisches Kammerorchester)は1952年創立のオケらしく、あちこちけっこう音源を見かけるからちゃんとした常設オケらしい(モダーン楽器)。一部、”哀しいほどヘタクソ”といったコメントは検索されるけれど、んなことありまへんで。知名度薄い=一流ではない=ヘタクソみたいな紋切り型思考停止はアウト。ちゃんと自分の耳で聴かなくっちゃ、そもそも嗜好品なんだし。音質良好。

 「リタニア 変ホ長調」K.243は 冒頭「Kyrie(哀れみの賛歌)」から胸を締め付けるような優しくも安寧の旋律、少人数による合唱(ソロの重唱?)に痺れます。ソロも各々合唱団のメンバーなのでしょう。所謂古楽器風歌唱に非ず、しかし往年の大仰なる表情付けから遠く、適度なヴィヴラートに違和感なし。躍動する人声の息遣いに、明るい希望と喜びを感じさせます。躍動する「Panis vivus(活けるパン)」のテナー・ソロも快活な表情はお見事。まるで初期オペラのアリア風。

 「Verbum caro factum (肉となりし御言葉)」には既に晩年の傑作「レクイエム」の深淵が木霊します。Hostia sancta (聖なる生贄)声楽ソロ、合唱、器楽、各々多彩な絡み合いはわずか3:33、もっと聴きたい!Tremendum (怖れおののき) は合唱の哀しげな声、Dulcissimum convivium (甘味の聖体)はアルトの切々とした神への呼びかけ〜嗚呼、キリがない!ラスト牧歌的な「Agnus Dei (神の仔羊)」(アルトは雄弁)〜「 Miserere (我らを憐れみたまえ)」はゆったりと名残惜しく、変ホ長調の懐かしい風情にて終了。

 全31分ほど、陰影に富んで表情豊かな旋律、合唱を堪能いたしました。器楽アンサンブルも充分役割を果たしました。編成はフルート1、オーボエ2、ホルン2、トロンボーン3、管楽器に揃えて多彩です。

 「リタニア 変ロ長調」K.109を担当するTeatro Armonico Stuttgart(テアトロ・アルモニコ・シュトゥットガルト)って、同名の古楽器団体が存在するけど、それですか?(それっぽい響き有)残響が豊か、音の雰囲気は前者と異なります。編成には3本のトロンボーンを含むらしいけれど、ここでは弦楽+オルガンのみ。16歳の作品に未熟さの欠片もなし、シンプルかつのびのびした風情が漂って、声楽の技量は前曲の如し。

 希望と躍動に充ちた「Kyrie(主よ)」には既に陰影有。「Sancta Maria(聖母マリア)」声楽ソロの受け渡しはあくまで清潔そのもの、「Salus infirmorum(病むものたちの救い)」は胸を締め付けるような端正な合唱でした。「Regina angelorum(天使たちの女王)」も各声楽ソロが受け渡して、対話は愉しげ、ラスト「Agnus Dei(神の仔羊)」落ち着いた安寧(変ロ長調)〜変ロ短調の終結部へ暗転するところも魅惑な短い作品也。

(2015年11月14日)

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written by wabisuke hayashi