Mozart ピアノ協奏曲第19番 ヘ長調 K.459/第23番 イ長調 K.488
(エレーヌ・グリモー(p))


DG 4779455 Mozart

ピアノ協奏曲第19番 ヘ長調 K.459
レシタティーヴォ「どうしてあなたが忘れられるでしょうか?」〜アリア「心配しなくともよいのです、愛する人よ」 K.505
ピアノ協奏曲第23番 イ長調 K.488

エレーヌ・グリモー(p)/バイエルン放送室内管弦楽団/モイツァ・エルトマン(s)

DG 4779455  2011年ライヴ

これは凄い。昨今、古楽器が全盛であり、ワタシも大好きなんだけど、ここでは真反対!流麗で華麗ゴージャス、少々勢いがすぎるほどアツい!清楚、素朴とは無縁の熱演!21世紀の天才は、馴染みの作品にまったく新しい切り口を見せて下さるのですね。これがヴェリ・ベストとは思わぬが、これが音楽の醍醐味なのでしょう・・・美人だし。(「音楽日誌2012年1月」)

これがライヴなんだなぁ、凄い完成度。技術的に優れているとか、アンサンブルどーの、というのは当たり前の前提として、溌剌、キラキラとした押し出し、リズム感の良さ、ゴージャス華麗なるカデンツァ(Busoniですか?)、クールな音色、情感に不足はないがウェットな重さにも縁がない・・・どれだけ賞賛しても追いつかぬほど。

K.505レシタティーヴォとアリアは、この作品解説を読んだだけで陶然といたします。ソプラノ、管弦楽、そしてピアノがしっとり絡み合って至福の時。別嬪はんが二人揃って言うことありませんな。(「音楽日誌2012年2月」)

 演奏の良し悪しに容姿は関係あるの?といった硬派高尚なご意見には「クラシック音楽だって芸能」という当たり前の回答を用意しましょう。但し、クラシック音楽は保ちのよろしい音楽だから、いつまでも若手の俊英と信じて幾十年、いつのまにかヴェテランに至っているから油断もできません。往年の美少女・Helene-Rose-Paule Grimaud(1969年ー)はもう中堅でしょう。数年前、この一枚に出会って仰け反りました。Mozartに駄作なし!一番お気に入りなピアノ協奏曲集、どれがお好き?といった質問には悩んでしまうほどの名作揃い、弾むような踊るような愉悦に充ちたヘ長調協奏曲 K.459、床しいほどの浪漫香る(第2楽章「Adagio」嬰ヘ短調)イ長調協奏曲 K.488の2曲は”MZT総選挙”中、神7入り間違いなしのお気に入り作品であります。

 バイエルン放送室内管弦楽団というのは常設なのか知らんけど、放送交響楽団のメンバーなのでしょう。この作品弾き振りライヴ(編集してあるとは云え)ここまでソロと息が合ってスムースなアンサンブル、洗練された勢いも素晴らしい。噂ではBusoniのカデンツァ採用を巡ってアバドとの共演が没ったとか、余技とは思えぬ美しい伴奏、それは協奏曲のみならず、ピアノ・オブリガート付きのレシタティーヴォとアリアに於いても同様の仕上がりであります。

 両ピアノ協奏曲とも快速流麗なテンポ(K.488はホロヴィッツ1987年録音に似ている)まさに”溌剌、キラキラとした押し出し、リズム感の良さ、ゴージャス華麗”であります。K.459の第1楽章「Allegro Vivace」は弾むような付点のリズム主題、シンプルな行進曲風旋律の繰り返しが輝かしい成果を産んで、ウキウキ。K.488第1楽章「Allegro」のカデンツァは件(くだん)のBusoniのもの、馴染みのヴォルフガング自作(もちろん名作!)をさておいて、もうちょっとウェット、激的内向きな世界が広がりました。

 いくら大々好きでも、いささか聴き馴染みすぎた名曲中の名曲、こんな新鮮に聴かせてくだされば文句なし。しかし、このコンサートの白眉はレシタティーヴォとアリアK.505でしょう。モイツァ・エルトマン(s)はウェットな声質、名残惜しい風情をしっとり表現して、ピアノ・オブリガートの床しさデリカシーは筆舌に尽くしがたいほど。エエもん聴きました。

(2016年9月4日)

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written by wabisuke hayashi