Mozart 交響曲第35/36番
(クリストファー・ホグウッド/アカデミーオブ・エンシェント・ミュージック)


Mozart  交響曲第35/36番〜クリストファー・ホグウッド/アカデミーオブ・エンシェント・ミュージック Mozart

行進曲ニ長調K.408-2
交響曲第35番ニ長調K.386「ハフナー」
交響曲第36番ハ長調K.425「リンツ」

クリストファー・ホグウッド/アカデミーオブ・エンシェント・ミュージック

英DECCA 417 760-2 1979年録音 中古500円で購入

 英DECCAのレーベルだけれど、もともとはバロック専門のレーベル”オワゾリール”での録音であり、発売当時、”初の古楽器による全集!”であることと、広義のシンフォニア的作品の収録で話題になったものです。既に四半世紀が経過し、古楽器演奏(録音)は当たり前の日常となって、やや忘れ去られた録音かも知れません。ようやく今年(2006年)復活したようだけれど、いかにも値段が高い・・・ワタシは若い頃にFMでその斬新なる演奏に心ときめかせたものだけれど、ようやくこの一枚のみ(中古入手で)再聴を果たしました。

 古楽器系の演奏を嫌う方はいらっしゃるようで、素朴で頼りなく、洗練されない響きがいやだ、とか、ピッチが低いのが基本キモチ悪いとか、理由は様々です。”古楽器系”と一括りにするのも乱暴な論議でして、穏健鳩派〜硬派最右翼までずいぶんと幅は広がりました。いずれ、使用楽器だけで一律に語れないのは当たり前で、現代では”現代楽器を使用しつつ、表現は古楽器系”(会場の広さ、鳴りの問題ありますからね)というものだってあります。結論的に、各々の演奏を個別に判断しないと、ということでしょう。

 演奏スタイルの前に「クリティカル・エディション」問題がありまして、1970年に出版された新・全集以前の録音は「作曲者の意図とは異なる」ことになるそうです。この録音はそういった意義もあるのでしょう。ワタシには縁が薄い話しだけれど。

 冒頭に行進曲ニ長調K.408-2が配されているのは、いかなる研究成果かは知らぬが、もともとはセレナードであった所以との関連でしょうか。乾いたティンパニの連打が衝撃的に、典雅なる行進が開始されます。そして「ハフナー」交響曲へ。ワタシはこの明るい作品が大好きでして、喜びは吹き上がります。刷り込みはカール・ベーム/ベルリン・フィル(1959年)だから、優秀で輝かしいオーケストラの推進力が脳裏に木霊します。

 これが思いの外、リズムの刻みも素朴穏健派というか、粗削り(アンサンブルが粗いという意ではない)というか、おとなしいほうだと思います。けっして技術的に不足はないが、その後の古楽器演奏はいっそうの技術的洗練を深めました。ちょっと泥臭くて、素朴で、ノリ、遊びが足りないか?もちろん、旧来の現代楽器による流麗華麗なものとは一線を画して、これはこれで発売当時、鮮烈なる印象を与えたことは想像に難くありません。終楽章の叩き付けるような躍動に、満足。

 「リンツ」は大好きな作品だけれど、往年の巨匠が現代楽器で立派に演奏するには、少々「尻切れトンボ?」的中途半端を感じることがありました。ハ長調という難しい調性〜真正面真面目でシンプルな世界〜には、この洗練されない素朴な響きが似合うと思います。例の如しの乾いたティンパニの響きも好ましいが、弦のアンサンブルの濁りは(いや、こんなもんだよ、古楽器って、という人もいるでしょう)やがて作品が進むに連れ、少々耳に付きました。

 木管の粗野な響きは味わいあるなぁ。第3楽章「メヌエット」はまるで行進曲のリズムであって、この愉悦に充ちた躍動はこの演奏の白眉。トリオは優雅な舞曲であります。終楽章が10:55というのは繰り返しをしっかりしているからであって、慌てず急がず、じっくり聴かせます。「尻切れトンボ」的印象というのは、この楽章を雑に仕上げるからであって、これだった最後まで存分に楽しい。表現としては「ハフナー」同様、穏健派の清潔穏健の表現でありました。響きは粗野だけれど。 

(2007年1月5日)


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