Milhaud ピアノと管弦楽作品集(1)(ミヒャエル・コルスティック(p)/
アラン・フランシス/ザールブリュッケン・カイザースラウテルン・ドイツ放送フィル)


 CPO 777 162-2 Milhaud

エクスの謝肉祭 作品83b
バラード 作品61/5つの練習曲 作品63
ピアノ協奏曲第1番 作品127
田園幻想曲 作品188

ミヒャエル・コルスティック(p)/アラン・フランシス/ザールブリュッケン・カイザースラウテルン・ドイツ放送フィル

CPO 777 162-2 2005ー2006年録音

お仏蘭西の小粋な、破天荒に綺羅びやかな作品を独逸のピアニスト、オーケストラが演っております。アラン・フランシス(Alun Francis, 1943-)はウェールズ出身でしたっけ、いずれかなりかっちりとした曖昧さのない仕上げ、作品の全貌をあますところなく、しっかり聴かせてくださいました。バラードとか田園幻想曲は静謐、気紛れで素敵な作品やなぁ、「エクスの謝肉祭」は以前ミシェル・ベロフ(p)/ジョルジュ・プレートルで聴いていて、こちら少々表情が硬いというか真面目な感じ。音質極上。(「音楽日誌」2016年10月)
 当たり前というか音楽は毎日、しっかり聴いていて、でも全部が全部集中して聴いているワケじゃない。なんとなく意に沿わなかったり、思ったイメージと違ったり、上記なんとなくわかっていないのは明々白々。ちゃんと聴き直さないといかん!そう反省したものです。アラン・フランシスは英国でホルンを吹いていたらしいヴェテラン、長い名前のオーケストラは合併して変名したらしい(2007年)。 Michael Korstick (1955-)は初耳(と思う)。Beethovenのソナタ全集を録音しているらしいけど、そんな彼がDarius Milhaud(1892ー1974)なんて!

 「エクスの謝肉祭」はコルソ/(ずるがしこい)タルタリーア/(優美な)イザベル/(優美な)ロゼッタ/善男と悪い後見人/コヴィエッロ/カルトゥッチャ船長/(すばしっこい)ポリシネル(プルチネルラ)/ポルカ/チンツィオ/リオの想い出(タンゴ)/フィナルどれも小粋で短い作品から成るバレエ音楽(「サラダ」作品83)なんだそうです。Beeやんのように起承転結キッチリした作品をイメージすると大違い。変幻自在、お祭り騒ぎ、ある時は甘く切なく、優雅な鼻歌(「リオの想い出」)がほんの短めに、俗っぽく無定見に続いて賑々しい。ジョルジュ・プレートルみたいに早めのテンポ、ざっくり流すのが似合っていると思うけど、こちらピアノ、オーケストラともかっちり明快明晰に表現して楷書、朗々と迫力も相当です。(18:32)

 ピアノは不協和音連続なんだけど、暴力的じゃなくて、ユーモラスな調子外れみたいな風情か。「バラード」はChopinを連想すると大違い!な大騒ぎのパレードみたいな、これでもバラード?というくらいゆったり、綺羅びやかに怪しいリズム、エッチな雰囲気であります。これはこのくらいピアノは硬派のほうが際立つ作品かも。(8:22)「5つの練習曲」(10:28)暴力的に強靭なタッチは明るく開始(「Vif」明るく)、Doucement(明るく)は優雅に始まって聴き手を油断させたら破綻して、やがて静かに戻って・・・冗談のような「Fugues」は(やはり)調子外れに賑々しく盛り上がります。「Sonbre(暗く)」は怒りに充ちたピアノとトランペットの不協和音バトル、ラスト「Romantique」題名嘘っぱちっぽく、素早いパッセージが相変わらずソロとオーケストラのバトルを継続しております。

 明るいユーモアと不安、爆発が続いて予測の付かぬ旋律リズムにノーミソ爆発しそう。ピアノ、オーケストラとも鮮明な音質に乗ってたっぷり活躍してまっせ。

 ピアノ協奏曲第1番 作品127は Tres vif(極めて活発に)/Barcarolle/Finale、3楽章からなる(ちゃんとした)協奏曲(13:05)。さっきまで自由自在勝手ばらばらに演っていた(ように感じる)ピアノ・ソロとオーケストラはちゃんと対話して、それなりわかりやすいもの。ま、破天荒な明るい爆発に一定の秩序を感じさせる第1楽章、Barcarolle(舟歌)ねぇ、そんな優雅な雰囲気たしかにあるけれど、ピアノは油断するとどんどん独善的に好き勝手やって〜美しい瞬間がいくつもやってきましたよ。Finaleは剽軽にリズミカル、ノリノリの締め括り、Ravelを連想させますね。こちらのほうがずっとやかましく、明るいけど。

 ラスト田園幻想曲 作品188は題名通り、細かい音形が目まぐるしいけど、牧歌的な静けさ、名残惜しさ、陰影を感じさせます。この一枚分では一番好き。きっとどの作品も技巧がしっかりしていないと、まともに聴かせられないと類推します。コルスティックは美しい音色、明晰なタッチに曖昧さはありません。独逸のオーケストラも妙な色気を付加せずに作品を描いております。

(2016年10月23日)

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written by wabisuke hayashi