Schumann/Grieg ピアノ協奏曲/
Franck 交響的変奏曲
(アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ)


DOCUMENTS 223042-321/J(CD10) Schumann

ピアノ協奏曲イ短調 作品54

ディミトリス・ミトロプーロス/ニューヨーク・フィルハーモニック(1948年ライヴ)

Franck

交響的変奏曲

アルフレッド・ウォーレンシュテイン/ロセンゼルス・フィルハーモニック(1949年ライヴ)

Grieg

ピアノ協奏曲イ短調 作品16

アルチェオ・ガリエラ/ミラノ・スカラ座管弦楽団(1942年)

アルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリ(p)

membran 223042-321/J(CD10) 10枚組1,590円にて購入したウチの一枚

 衣装は異なるけれどCD初期から意外と有名な音源であって、激安10枚組に再収録されました。以下の「歴史的録音のピアノ協奏曲集」2枚組(処分済)のGriegと同じ音源となります。ちなみにTchaikovsky ピアノ協奏曲第1番(ソロモン(p)1931年)/Rachmaninov の自演も別途入手済み。(ワルター/ヴィットゲンシュタイン(p)のRavel のみ再購入する機会を得ません)

 Schumannはミケランジェリの得意曲で、激安10枚ボックス2巻だけでも3種の録音が含まれます。このニューヨーク・フィルとのライヴはかなり音質厳しく、音が揺れ、飛び、ヒステリックかつノイズっぽい響き。しかし、ピアノの明快骨太肉厚なるタッチはちゃんと理解できました。雄弁であり濃厚、強靱盤石なる技巧。確信的に(微妙に)揺れ動いて、間の取り方も見事に決まっております。28歳にして晩年の完成度水準に至っていて、情熱に燃える怒濤の勢いが若さでしょうか。

 ミトロプーロスのバックがソロに負けず劣らず濃厚であって、第2楽章「インテルメッツォ」の繊細な囁きは、ピアノと一体化しております。終楽章には余裕さえ感じさせる流麗さ。一気呵成、息もつかせぬラッシュ(時に立ち止まって効果的)に、感銘は音質の不備を彼方に押し遣りました。

 音質云々といえば、交響的変奏曲はいっそう酷い。これは(状態よろしからぬ)AMラジオのエア・チェックじゃないか。ほとんど商品足り得ぬ水準也。ミケランジェリの雰囲気をちょっとだけ垣間見る〜そんな程度、コメント不可。ノリと熱気の残映のみ。ま、フツウはSchumann/GriegでCD一枚だから(要らぬ)おまけか。

 Griegは22歳(!)の演奏。たしか(TELDECによる)SP録音(これが初録音のはず)だけれど、前曲のあまりの酷い音質対比故か”ずいぶんと鮮明”に感じます。ま、くぐもったそれなりの水準なんだけど音飛びもないし、様子はちゃんと理解可能。演奏は強烈!前回聴取時印象と寸分違わない・・・完璧なる技巧、濃厚なる集中力、酔うような輝かしい(計算され尽くした)歌と雰囲気を誇って、全曲30分はあっと言う間〜信じられぬ効果を上げております。音質云々を吹き飛ばしてヴェリ・ベストか。アルチェオ・ガリエラのバックも充実しております。

 ま、どなたにもお勧めできる一枚じゃないけれど、”1940年代の録音”として(一応)考えられた収録なのでしょう。堪能いたしました。

(2008年6月12日)

歴史的録音のピアノ協奏曲集


Golden Memories GM3009/10/既に処分済み Grieg
ピアノ協奏曲イ短調 作品16
ガリエラ/ミラノ・スカラ座管弦楽団/ミケランジェリ(p)(1942年録音)

Brahms
ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 作品83
ベーム/ザクセン州立管弦楽団/バックハウス(p)(1939年録音)

Tchaikovsky
ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 作品23
ハーティ/ハレ管弦楽団/ソロモン(p)(1931年録音)

Rachmaninov
ピアノ協奏曲第2番ハ短調 作品18
ストコフスキー/フィラデルフィア管弦楽団/ラフマニノフ(p)(1929年録音)

Ravel 左手のためのピアノ協奏曲
ワルター/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団/ヴィットゲンシュタイン(p)(1937年録音)

Golden Memories GM3009/10 2枚組$3.98にて個人輸入

Historyベーム10枚組(220825-303) さらにさらに2004年追加コメント。ノーミソの劣化が急速に進んでいるのか、物忘れが激しい。以下の2003年再聴加筆の記憶もなし〜ある日発見!はよろしいが「ワタシも意識せずにダブり買いを」って?(読み進めていくと)ああ、Historyのベーム10枚組ね、と納得しました。再聴のキッカケはバックハウス(p)/シューリヒト/スイス・イタリア語放送管による(クロアチアVIRTUOSO 96005 1958年ライヴ)購入(この演奏もとても良かった)です。

 その前に(←この写真)Historyベーム10枚組(220825-303 2,480円)でBrahms ピアノ協奏曲第2番〜ベーム/ザクセン州立管弦楽団/バックハウス(1939年録音)を確認。これが全然ピンとこない。このところ鮮明なる録音に凝っていたこともあって、歴史的録音から遠ざかっていた・・・ということもあるのかな?こんなボンヤリとした演奏だったっけ?と、表記のGolden Memories盤を再確認。なるほど。

「印象がガラリと変わります。音の鮮度、推進力と興奮、シューリヒト盤も良かったが、これはもっと若々しい。録音の印象はバカにできません」(音楽日誌より)数年前のワタシが「重心が低いのに、落ち着き払ったところもなくて、怒濤の推進力。まだバックハウスも若かったんでしょう、燃えています」〜コレ、ピタリですね。評価は変わらない。

 正直、ワタシBrahms の大曲系は好みじゃなくて、もっぱら最近は室内楽とかピアノ曲などに馴染んでおります。この長大なる(ナント4楽章)ピアノ協奏曲など、重々しくむっつり気取っていて、頑固なスタイルが好みと正反対!・・・なのに、(第1番含め)この作品のCDを棚から取り出すのに、気分が重くなったことは一度もなし。第3楽章のチェロ・ソロなど、そのまま眠ってしまいたいくらい快感です。どんよりとした温(ぬる)い海に浮かぶよう。

 ま、この作品はバックハウスの十八番(おはこ)だけれど、後年のステレオ録音はまだ聴く機会を得ません。きっと、この壮年時代の熱気はもう期待できない・・・と想像しておきましょう。ふだん地味で無口な男が珍しく情熱むき出しで・・・でも、やはりがっしりとした姿勢は崩さない〜そんな演奏です。(2004年2月20日)


 2003年再聴です。わずか数年前なのに、前世紀からのCDの価格変貌(大下落)ぶりには驚かされる毎日。歴史的的録音は「著作隣接権」フリーなので、いくらでもCD復刻があちこちから・・・・ワタシも意識せずにダブり買いを〜というのはワタシのサイトで千度使ったネタなので、もう言いません。(ここではバックハウスのBrahms 、Rachmaninov の自作第2番)

 例えば、「名曲」の評価に恥じない知名度と人気を誇るGriegのピアノ協奏曲、ワタシは「なんとか極め付きCDを探してやろう」な〜んていう野望はありません。たまたまホンのこどもの頃から音楽は聴いていたから、曲と旋律は知っている。安く売っていたら買いましょ、という姿勢に例外はない。そしてバックハウス/バルビローリ(1933年)、バッカウアー/ウェルドン(1959年頃?)、タニエル/デ・ブルゴス(?新しい録音のはず)などが、いつの間にやら棚に眠っているのを発見。

 どれでも存分に楽しめる演奏だけれど、ミケラジェリのアクと個性に説得され、圧倒され、納得すること、以下の数年前の感触となんらかわりありません。「自然体で、水が低きに流れるよう〜」な世界とは対極で、どこかしこ隅々委細に味付けが徹底されて、とにかく濃い。Mozart ではやや苦しい表現だろうが、浪漫派傾向の作品では文句なしの説得力で、怒濤の感動を保証します。

 昨今の「誰のピアノやら・・・」的世界とは違って、一聴、彼のピアノとわかるところが時代の違いか。録音は決してヨロシいとは言えぬが、芯があって不足を感じさせません。「稀代の伴奏名人」と呼ばれたガリエラは、スカラ座管をミケランジェリ的世界に変貌させます。ソロの個性に合わせる変幻自在ぶりは、まったく驚くばかり。つまり濃厚なんです。

 ほか、4曲の収録はいかがでしょうか。Historyの「ベーム10枚組」に収録されたBrahms は、失礼ながらやや、おきまり的立派さを感じてしまいました。貴重なるソロモン/ハーティのTchaikovskyも、速いテンポがアツい演奏に間違いはないが、この作品ならいくらでも音質の良好さも、燃えるような個性的な演奏も存在するでしょう。

 Rachmaninov 自演の価値は云々出来ないものだけれど、Ravel は音が悪すぎるし、ヴィットゲンシュタインには「粋」が不足していて、とくにこの録音を求めるべき、とは思いませんでした。(2003年4月12日)以下は数年前の恥ずかしい文章そのまま。


 かなり有名な昔の演奏ばかり。寄せ集めではあるが、安い。時に針音も確認できる「SP復刻」(おそらく勝手に)で、オリジナル(正規復刻)と比較してどうなのか、はわかりませんが、それなりに聴きやすい音。なにせ、第二次世界大戦以前ですからね。個性的で骨のある演奏に思えるのは、時代のなせる業か、ワタシの空耳か。あまりよろしくない音の状況が、かえって聴き手に集中力を呼び覚ますのでしょうか。

 ミケランジェリのグリーグ。バックのノイズはともかく、かなり音の状態は良く、ミケランジェリの個性は充分聴き取ることは可能でした。濃厚で、重厚で、細部まで個性的、説得力充分。昨今の新しい録音なんか、メじゃないくらい迫力があって、鮮やかで明快な技巧。テンポはかなり揺れますが、名人ガリエラのバックのサポートは揺るぎません。戦前のスカラ座のオーケストラって、こんな音してたんですね。(TELDECの正規録音らしい)

 バックハウス3度に及ぶ録音の、最初のブラームス。(でも、残念ながらのちの録音は未聴)これが重心が低いのに、落ち着き払ったところもなくて、怒濤の推進力。まだバックハウスも若かったんでしょう、燃えています。情熱的な演奏。ミケランジェリとは方向は違うものの、技巧の冴えと、音の濃密さは負けず劣らずでしょう。戦前のドレスデンも、冒頭のホルンからして魅力タップリのブラームス・サウンド。(アンダンテの陶酔も久々に堪能)音の状態はかなり良好。

 ソロモンって、カットナー・ソロモンのことでしょう。戦前のハレ管も珍しいし、「水上の音楽」の編曲で有名なハーティの録音も初耳でした。音の状態はかなり厳しい。第1楽章からそうとう早いテンポで疾走します。かなり熱っぽい、テンポが動く演奏で、ゆったりとしたところの対比も説得力有。

 録音状態は相当に厳しくて、ミケランジェリ、バックハウスのあとに聴くと、個性的であることはともかく、音の濃密さ、重心の低さでは負ける感じ。ただし、ハレ管はステレオ時代に聴く音とはぜんぜん違っていて、集中力があって熱い、技術的にもむしろ上でしょうか。

 ラフマニノフの自作の第2番は有名なRCA録音でしょう。ウワサ通りの、素晴らしいテクニックの冴えであり、豪華この上ない演奏ではありますが、想像よりずっと現代的で、ドロドロの濃厚さとは縁遠い。ストコのフィラデルフィアは雰囲気タップリで、これ以上ないたっぷりとした甘さを堪能。これも音の状態は悪くない。1920年代の録音とは信じられない。

 「左手のピアニスト」ヴィットゲンシュタインによるラヴェル。1931年初演だから、まだできたてホヤホヤ湯気が立っている時期の録音。ヴィットゲンシュタンのために作られた曲なのに、たしか初演を拒否したはずですよね。ワルターのラヴェルというもの珍しいし、かなり堂々としてふだん聴き慣れた「フランス風」演奏とは違いますね。

 録音は相当厳しいのですが、ソロモン辺りから聴き続けていると、ほとんど気にならなくなら不思議。後半に行けばいくほどライヴのノリが感じられて、熱気にむせ返るよう。

 これ、LPだと充分3枚組。153分以上収録。てんでバラバラ個性的な演奏の寄せ集め、しかも音質もいくら「良好」と言ったって知れています。それでも、凡百の優等性的演奏には見られない演奏芸術の華があります。楽しめます。(1998年)


【♪ KechiKechi Classics ♪】

●愉しく、とことん味わって音楽を●
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written by wabisuke hayashi