Mozart ピアノ協奏曲第23/20/13/15番(ミケランジェリ)Mozart
ピアノ協奏曲第23番イ長調 K488 ジュリーニ/イタリア放送ローマ放送交響楽団(1951年録音) ピアノ協奏曲第15番 変ロ長調 K450 ロッシ/イタリア放送トリノ交響楽団(1955年録音) ミケランジェリ(p) HOMMAGE 7001857-HOM/7001856-HOM 10枚組4,300円で購入したうちの2枚。CETRAの音源とのこと。すべてモノラル録音。 ミケランジェリは個性的で立派なピアニストであったことは間違いないものの、ワタシはとくに気に入っているわけでもありません。AURAレーベルで数枚格安価格でCDが出ているけれど、とくに買いたいという欲望も起こらない。(よく調べないと、手持ちの音源でダブリが出そうなのも正直怖い)それに、音質が悪いんですよ。ほとんど。 この録音も例外なく、音質劣悪。楽しむためには集中力も必要でしょう。お勧めしません。でも、ワタシは既に購入してしまったので、なんと楽しむ術を発見する必要がある。まず、CDラジカセ、みたいなものでは聴かないこと。細部がよくわからない。できるだけ上等のオーディオで、ボリュームも許す限り上げて聴きましょう。 ジュリーニとの演奏は同じ12月15日の録音なので、ミケランジェリの協奏曲のみの演奏会と想像されます。キリリとしてノリのよいバックは、いつものジュリーニの味わい。ミケランジェリのピアノも、いつも通りまったく明快。硬質で、輝くクリスタルのよう。テンポは適正だけれど、流したところは一切なくて、一つひとつの音を大切に、自信を持って線が太い。リズムに確信と貫禄が感じられる。 イ長調協奏曲の第1楽章カデンツァは、こんな豪華で華やかな演奏は聴いたことがありません。ロマンティックで有名なアダージョも、じゅうぶんな美しさだけれど感傷的ではない。打鍵はむしろ力強い。が、繊細さにも欠けません。終楽章の確固たる歩みも、あわてず、さわがず堂々たる完成度。 イ短調協奏曲。この曲はいくらでも感情を込められるし、逆に淡々と演奏することも可能でしょう。ここでもいつものミケランジェリの個性で、ある意味どれもみんな同じ演奏なんです。「モーツァルトだから羽のように軽く」なんてのとは縁がなくて、どこをとっても表情豊かな彼の音色。細かいニュアンスを旋律に込め、ていねいに表現していくうちに、ここでは感興の高まりが感じられました。さすがライヴ。そうとうアツい。テンポも効果的に揺れています。 ジュリーニのオーケストラがねぇ、録音状態やオーケストラの力量を越えて、よ〜く歌っているのが目に見えるよう。ソロとの息の合方は出色でしょう。 飾らない、おおらかな旋律が魅力的なハ長調協奏曲。曲調的にミケランジェリに似合っていると思いました。溌剌として健康的。断固とした切れ味と、細部への思い入れの両立。肉厚でセクシーな音色。濃い表情。録音がぱっとしなくても、彼のピアノははっきりと理解できる。 変ロ長調協奏曲では、バックがロッシに変わっています。ジュリーニよりもっとストレートで、伴奏に徹していて、これはこれで悪くありません。やや新しいとはいえ、音の状態は大同小異。録音の加減か、バックとの関係か、急ぎがちで、味付けがやや即興的。前3曲に比べると、アンサンブル的な完成度はやや落ちます。軽快な味わいは悪くなくて、ややノンビリとした終楽章は、例の明快な打鍵でキリリと引き締まっています。
結論。Mozart のピアノ協奏曲は、音質がちゃんとしていれば、どんな演奏でも楽しめます。わざわざムリして(こんな)古臭い音源を求める必要なし。これはミケランジェリの個性を聴くべき演奏でしょう。続けてクルダのインプロヴィゼイション(→ではない、とのご指摘有)たっぷりの昔の録音とか、ハスキルのモノラル録音なんかを、心から楽しんでしまいました。(2000年12月1日更新)
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