ミサ曲ロ短調/マニフィカト
(コルボ/ローザンヌ声楽アンサンブル/器楽アンサンブル/ローザンヌ室内管弦楽団)


ERATO WPCS-4769/70 Bach

ミサ曲 ロ短調 BWV232
マニフィカト ニ長調 BWV243

ミシェル・コルボ/ローザンヌ声楽アンサンブル/器楽アンサンブル/ローザンヌ室内管弦楽団
シュテンプフリ(s)シュヴァルツ(ms)ペラン(a)デュフール(t)テューラー(b)フッテンローハー(b)

ERATO WPCS-4769/70  1972/71年録音  2枚組中古で580円で購入

 このCD、数年前に国内盤2枚2,000円で出ていたもの。コルボはLP時代この類の宗教曲の権威として、人気も高かった記憶がありました。残念ながらワタシは彼の録音は聴く機会もなく、やがて時代はデジタル〜古楽器による演奏が全盛となり、少なくとも録音に関する限り、コルボの華々しい活躍は聞かれなくなりました。きっと、演奏会は日常的に開催されているのでしょう。(2000年には日本にも来て、ナント古楽器の団体を率いていたそう)

 バッハの宗教曲の関係はお気に入りです。少々長ったらしいし、言葉や宗教的な背景は理解できないけれど、ワタシのような世俗な者(しかも教会にはトンと縁の薄い東洋人)でも、その敬虔な世界はしっかり心へと伝わります。時と場所を隔てていても生き続ける偉大なる音楽の力。なにより、旋律が美しい。声楽と器楽のオブリガートのなんと楽しいこと。

 近所に新しい古本屋さんがオープンしたので覗いてみたら、たったひとつだけクラシックがあって、このCD。さしたる期待もなく購入して、ウチに帰って音楽が流れ出したらスピーカーの前に釘付け状態。なんて表現したら良いのでしょうか、自然、質実、真実、素顔、日常、慰安、誠実、正直・・・・が、束となって音楽となっていました。

 声楽の充実ぶりは、コルボのもともとの専門だから想像が付くでしょう。でも、「充実ぶり」という言葉で片づけられないような、すがすがしさ、爽やかさ。「圧倒的な人の声による威圧感」とは無縁な、もっとストレートな世界。

 ウェーバーに「狩人の合唱」があるじゃないですか。ワタシ、知っている中で一番好きな合唱曲なんですよ。元気いっぱいで虚飾のない、生きる喜びが吹き上るような名曲。コルボによるロ短調ミサ曲は、ずいぶんと違うように見えて、あの世界に近いような〜ある意味もっと素朴〜そんな喜びを感じます。

 管弦楽のバックについても、感じるところ大。いま流行の古楽器ではないし、特別な音色も、ハズむような鋭いリズム感があるわけじゃない。弦も管も、耳を引きつけるようなセクシーな響きとは縁遠いもの。技術的な問題はないけれど、フツウの演奏なんです。ところが、そのフツウが悪くない。なぜか心にしみちゃう。

 ワタシみたいなシロウトが云々しちゃマズいかも知れないけど、これが日常教会に通う人々が耳にする「ミサ曲」かも。ロ短調ミサ曲って、「ロ短調」とはいいながら、じっさいはとても元気の良い、楽しい曲ですよね。トランペットが活躍するところを聴いてると、幸せな気分となり、元気が出てきます。「我らに平和を与えたまえ」。


 マニフィカトもトランペットが活躍する名曲だけど、少々オン・マイクで印象が変わります。音楽的にはロ短調ミサ曲と同質の喜びに溢れていて、あいかわらずトランペットが大活躍。(2000年8月12日更新)


【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi