Vivaldi、Bach 、Mozart 、Weber
(メンゲルベルク/コンセルトヘボウ管弦楽団)
Vivaldi
「調和の霊感」より協奏曲 イ短調作品3-8(1937年)
Bach
二つのヴァイオリン協奏曲ロ短調 BWV1043(1935年)
L.ツイマーマン/ハルマン(v)
管弦楽組曲第2番ロ短調 BWV1076〜序曲(1931年)
管弦楽組曲第3番ニ長調 BWV1078〜アリア(1942年)
Mozart
セレナード第13番ト長調 K.525 「小夜曲」(1940年)
Weber
歌劇「魔弾の射手」序曲(1931年)
歌劇「オベロン」序曲(1928年)
メンゲルベルク/アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
HISTORY 205254-303 (10枚組2,190円で購入したウチの一枚)
特別に聴く機会の多い指揮者ではないが、メンゲルベルクの個性の徹底ぶりにいつも驚かされ、痺れます。微に入り細を穿ち、入念に味付けされ計算され・・・素材の持ち味をそのまま自然体で・・・なんていうこととは無縁の、濃〜い風味は病みつきになりそう。それは、こんなバロック音楽でも効果抜群!なんです。
例えばフルトヴェングラーのBach (ブランデンブルク協奏曲辺り)は、(古楽器に馴染んだ)現在の耳で聴くと少々(かなり)巨大異形で際物っぽく感じないでもない(つまり演奏スタイルが旧い)が、音質乗り越えてメンゲルベルクは立派な、”ひとつの個性”として認識されました。Vivaldiって、気軽で明るいリズムと旋律が魅力でしょ。針音も床しく、金属的なチェンバロ懐かしく雄弁であり、ちょっともの悲しい旋律をリズム感よろしく、集中力を以て歌わせます。「楽しく聴かせよう」と意欲充分。(楽章ラスト、必ずルバートするが、これとてストコフスキーの比ではない)
第2楽章「アダージョ」は纏綿としたポルタメントも甘美であり(まるで「アランフェス」か)、終楽章冒頭にはカットがありました。(そんな楽譜も存在するのでしょうか)Bach の協奏曲は、言わずと知れた名曲中の名旋律。通奏低音は(ピアノではないだろうが)ピアノのような迫力と音量があります。これも微妙にテンポは揺れるものの、基本厳しい推進力で表現され、息も付かせぬ緊張感が魅力的。ソロは”バリバリ弾きまっせ”的テンションの高さ。ラルゴは陶酔的(ここでもポルタメント!)であり、終楽章はあわてず、騒がず、じっくりと腰を落ち着けつつ、やがて、じわじわ昂揚して聴き手を興奮させました。
Bach の管弦楽組曲第2番には全曲録音が存在し、「アリア」には他に「Mahler 版」(1929年)/「テリコ版」(1938年)の録音が存在します。(いずれもNAXOS 8.110880-82「マタイ受難曲」全曲の余白に収録される)かなり深刻な第2番であり、ほとんど「マタイ」の悲劇を思わせる重さ、大きさ、厚い響き。弦楽合奏の編成もかなり大がかり。フルートの音の切り方(タンギングと呼ぶのでしょうか)に少々時代を感じさせつつ、まったく雄弁で美しい。表現としては「現在のホールに鳴り響くべきBach 」であって、この壮大さにそう違和感はありません。
「アリア」は、まるでMahler 交響曲第5番「アダージエット」ですな。大きく深呼吸するような、官能の世界。
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管弦楽組曲第2番ロ短調を全曲収録いただいて(22分ほど)、残りはほかのCDに〜であれば、もっと収録の座りは良かったろうと思います。このCDには残り、有名なる作品が3曲収録されるのも配慮でしょうか。Mozart 「アイネ・ク」は、速めのテンポで(全14分ほど)きりりと引き締まっておりました。やや落ち着かないほどだけれど、アンサンブルの集中力は驚くべき水準であり・・・強面で、少々優雅な表情に足りませんか。「ロマンツェ」の途中テンポ・アップは興味深いところ。(ゆったりとした前後半部分が引き立つのはたしか)終楽章の、思わぬ「間」もメンゲルベルクらしい。
Weberは大好きです。「魔弾の射手」はホルン命でしょ。もっと音の条件の良いもので聴きたい作品だけれど、鬱蒼とした森の奥深い味わいは充分に感じ取れました。(期待のグシュルバウアー/バンベルク響が思いの外、ツマらなかったのと対照的・・・ファンの方ごめんなさい)途中、たっぷりとテンポを落とすところも、走るところもいっそう雰囲気盛り立てます。彼は意志を持ってテンポを動かしているんです。(やや強引で不自然だけれど)「オベロン」もホルンで始まりますね。弦の細かい表情付けも念が入っております。
あとは期待通りの”疾走”、圧倒的なアンサンブルの妙技。クドいくらいの説得力の嵐でした。ちょっとキツ過ぎのところと、優しく念入りな歌の対比の見事さ。 |