Mendelssohn/Tchaikovsky ヴァイオリン協奏曲(ヤッシャ・ハイフェッツ(v))


CULTURE CCD-1027  RCAの駅売海賊盤 Mendelssohn

ヴァイオリン協奏曲ホ短調(1959年)

シャルル・ミュンシュ/ボストン交響楽団

Tchaikovsky

ヴァイオリン協奏曲ニ長調(1957年)

フリッツ・ライナー/シカゴ交響楽団)

ヤッシャ・ハイフェッツ(v)

CULTURE CCD-1027 RCAの駅売海賊盤  350円

  ワタシのCD導入もっとも初期の購入だった記憶があって、1990年頃新宿駅地下で購入した記憶有。昔から定評ある名盤だが、HMVの読者レビューでは評価が割れている、というか、むしろ否定的なご意見多いですね、意外と。両作品とも”所謂初心者向”っぽい作品?との傲慢な考えに至って。ここ最近、滅多に聴いていなかったもの。

 Mendelssohnの甘美浪漫、Tchaikovskyだったら纏綿たる叙情を期待したいんでしょう。完璧快速な技巧で、浪漫も叙情もクソもない、サラサラ淡々と音楽は流れて、聴き方の視点によっては素っ気ない、ツマらない、ということになるのでしょう。ワタシは虚飾ない、ドライな表現が好みである、ということを(おそらくは)十年ぶりの再聴で再確認いたしました。ほとんど嗜好の世界であって、これこそ”現代的な、モダーンな”演奏だと思います。ソロ、バックとも完璧、録音も極上です(こんな駅売海賊盤でも)。

 ちなみにこの駅売海賊盤(RCA録音)のデザインはスタンラン(Theophile Alexandre Steinlen/1859年〜1923年)の「ヴィンジャンヌ産純正滅菌牛乳」。画家というよりイラストレーター、これは宣伝用ポスターなんでしょう。このCDは思い入れがあって(なかなか)手放せません。

 ・・・上記は音楽日誌2009年1月からの(ほぼ)引用だから、少々以前の記録となります。再々聴のキッカケはTchaikovskyの旧録音、ジョン・バルビローリ/ロンドン・フィルによる1937年録音を聴いたため。これが36歳鮮やかな技巧と、時代からは想像も付かない優秀録音に驚かされました。ちょうど20年後、57歳のステレオ再録音と比較したくなった、ということです。

 イン・テンポで素っ気なく通り過ぎる〜ことを非難するのは、纏綿と歌う、かなり粘着質な演奏を個性的と認識する流れなのでしょうか。”ソリストは音色が汚い。移弦の際のノイズが気になる。バイオリンを鳴らしきれていない。表面的に鳴らしているだけで金属的なガチャガチャ音がして耳障り”というコメントに至っては、音楽の聴き方にもいろいろあるのか?それとも20代のリスナーは耳がよろしくて、こちら劣化甚だしい50歳代の大カンチガイなのか、いずれ、音楽は愉しんで聴くに越したことはない。お若い人は一般に濃い味を好むものです。あまりにさらさらと”勝手に弾いている”のは間違いなくて、バックとの息の相方にも問題ありそうなのは自明の理。

 ホ短調協奏曲の哀愁のメロディは、刷り込みかも知れぬが、快速、息もつかせぬ勢いで弾き切るからこその快感やノリ、作品の本質が見えてくる思い。細部が雑なのではない、サラリと粋に流しているんです。日本人はなんでも一生懸命になりすぎ、颯爽と軽々な所作を非難する風潮ないですか?やっぱり、艱難辛苦眉間に皺的Beeやん好きですか?第2楽章「アンダンテ」の一気呵成なる推進力に甘美を感じます。途切れずに突入する最終楽章の”これぞMendelssohnの喜び”的軽快なる躍動に、これ以上相応しい演奏はない。肩の力が抜け、淡々颯爽とクールに、額に汗もなく、筆舌に尽くしがたいテクニックの冴えを堪能させて下さいました。

 最高。

 若い頃はTchaikovskyの激甘旋律に気恥ずかしさを感じておりました。それは馬齢を重ねれば、恥じらいも消えようというもの、最近はどれを聴いてもけっこう堪能できる世界に至りました。この代表的名ヴァイオリン協奏曲は初演前後に「クサい」と非難されたそうだが、それは一理あるんです。あまりに纏綿とたっぷり演られると、ちょっと脂っこ過ぎて、しつこくて聴いてらんない。イン・テンポで素っ気なく通り過ぎる〜と、ちょうど中和して件の甘い旋律も”甘さ控えめ”に。なんと颯爽と禁欲的なヴァイオリン!名曲を名曲と再発見させて下さる、虚飾を削ぎ落とした演奏。抜いたところが極上の味わい。

 相変わらずの快速テンポ、ライナーのバックはミュンシュより(合わせが)上手いですね。第1主題の様々なるオケの回帰は充実していてお見事。ハイフェッツのヴァイオリンは、美音ではないかもしれないが、幾何学的な美しさを誇って、技巧の壮絶なるキレに快感さえ感じさせるもの。これで”クサみ”は完全に消えるんです。第2楽章「アンダンテ」もあっという間でっせ、過ぎ去るのは。終楽章は”ただ、素っ気なく速いだけ”とは言わせませんぞ、細部音型迄完璧な描き込み、変幻自在の音色、リズム感の良さ、オケの優しい木管との絡み合いは優雅ですよ、充分。

 最高。

 蛇足です。かなりの太古録音であり、しかも(おそらく)LP板起こしの駅売海賊盤。正規盤、しかも音質をウリにする現役CDの音質はいかがですか?じつは、ラスト辺りで少々音が割れるっぽいんですが。定価2,800円也(との表示)。定価で売られたことはあるんでしょうか。

(2010年1月8日)

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written by wabisuke hayashi