Dimmler/Winter/Tausch クラリネットの音楽「マンハイム楽派その4」
(イルジー・マラート/マンハイム・プファルツ選帝候室内管弦楽団)


ARTE NOVA 74321 37298 2 Franz Anton Dimmler (1753ー1827)

クラリネット協奏曲 変ロ長調

Peter von Winter (1754ー1825)

ヴァイオリン、クラリネット、ホルン、ファゴットのための協奏交響曲 変ロ長調

Franz Tausch(1762-1817)

クラリネット協奏曲 変ホ長調

イルジー・マラート/マンハイム・プファルツ選帝候室内管弦楽団/カール・シュレヒタ、ユルゲン・デムラー(cl)/ユルゲン・ゴーデ(fg)/シャオミン・ハン(hr)/ヴォルフガンク・シュヴァルツミュラー(v)

ARTE NOVA 74321 37298 2 1994〜1995年録音 5枚組3,150円

 なにせ素人なもんで、「マンハイム楽派の正式な定義」とか「音楽的特徴」などあまり知らん、とうか無縁というか。でも、好きなんで、安く出ていると買ってしまいます。シュターミツとか、ダンツィ辺りは名前くらいは知っていて、ディッタースドルフとの出会いがきっかけで聴くようになったと記憶しております。
 このCDの3人になると読み方さえ不明で、なんと演奏家の読みもわからない。いやいや、それでも音楽は楽しめるんですよ。(と、開き直ってみる。誰かドイツ語方面に詳しい人、教えて下さいよ)

 新しい、鮮明な音ですが、はじめて聴いたのがディスクマンで、頭痛がするくらい硬い音。でも、ワタシの真空管(2本しか付いていないけど)アンプで再生すると良い感じ。クアプファルツ室内管は、PILZの録音で一部聴いていましたが、なかなか優秀な現代楽器のアンサンブルでした。南西ドイツ放響を母体にしてできたのかな、と想像しておりますが、1952年の創設だからけっこうな老舗といって良いでしょう。こうした実力派は、きっと欧州にはゴロゴロしているんじゃないでしょうか。

 クラリネットといえばMozart が最高峰でしょうが、彼の音楽もマンハイム楽派の先人達の礎に成り立っている。(と、思いますが、違いますか。ほぼ同年代)もう、ソックリなんですよ。

 Dimmler(ディムラーさんか?1753-1827)のクラリネット協奏曲は、Mozart のよりずっと多彩で、いかにもクラリネットの技量が試されそうな細かい音形が続きます。陰影に富んで、弾むような楽しげな旋律の連続。アダージョはソロが上手いんだろうけれど、瞑想と陶酔のひととき。フィナーレは、なんということのない単純な音形から、じょじょに複雑に、そして感興が盛り上がっていく、変奏曲のノンビリとした〜やがてそうとうのテクニックで、しかも暗転もあって〜味わい深い。

 Schlechta(何て読むのか?シュレヒタ、シュレクタ?シュレヘタ???)さんのクラリネットは、もう超絶技巧。音色が硬質でセクシー。抜いた音で、ゆったりとした旋律を吹かせたら最高でっせ。

 Winter(これはヴィンターさんでしょ?1754-1825)の協奏交響曲も、Mozart に似ている。例の疑作?といわれているやつと、もうイメージいっしょです。クラリネットはいわずもがなですが、ファゴットの活躍は凄くて、きっと作曲者の近くにはそうとうの名人がいたはず。(Arrdanged by Dr.Hans Oskar Kochと書いてあるので、かなり現代の手は入っているのでしょう)

 アダージョは、シンプルなクラリネットのソロ旋律から始まって、ヴァイオリンがやや複雑な編曲をして受け継がれる。そして、ファゴットが控えめにヴァイオリンとクラリネットの助けを借りながら登場。みんな良く歌っています。この楽章はホルンはお休みのようです。
 フィナーレはMozart のピアノ協奏曲第22番の最終楽章に似ている。のどかで牧歌的で、春の訪れを表現したような爽やかさ。ヴァイオリンが大活躍。ちゃんと短調への不安げな暗転も準備されていて、飽きさせません。

 Tausch(読みはお手上げ。タウシュ?1762-1817)さんのクラリネット協奏曲は、ちょっと味わいが違っていて、もっとさっそうとして躍動的。(でもやっぱりMozart みたい)なんとなくモダーン、高音も多用した変化に富んだ旋律で、短調への移調も頻出。ホルンも入ったバックの管弦楽がかなり雄弁で、ソロと対等であるのも時代の推移でしょうか。クラリネットのカデンツァの見せどころも凄い効果。
 でも、はっきりいって技巧が目立つ曲で、前2曲ほどの魅力〜素朴な味わい〜に及ばないと思います。

 クラリネットの技量は最高ですが、高音がやや金属的(録音のせい?)で、音色を嫌う人がいるかもしれません。ある意味現代的な、冷たさを感じさせるでしょうか。でも、じゅうぶん楽しめる一枚。

 え〜、このシリーズ、有名どころのほかに、Blasius、Fiala、Demarなんていう「世界初録音」もあって、ワタシ好み。3,150円という、ヘタするとCD一枚分の価格でたっぷり5倍、未知なる極上の音楽に浸れる幸せ。


【♪ KechiKechi Classics ♪】

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written by wabisuke hayashi