Mahler 交響曲第1番ニ長調ニ長調
(ジョン・バルビローリ/ハレ管弦楽団1957年)


怪しいCD Mahler

交響曲第1番ニ長調ニ長調

ジョン・バルビローリ/ハレ管弦楽団

英PYE録音 1957年

 DUTTONによるCD復刻(CDSJB-1015)は廃盤のままのようです。おそらくはEMIが版権を持っていて、ちゃんと復刻したら良さそうなのに、再発の噂を聞きません。DUTTON盤は定位がふらついて、音質的にはマズいらしい。かつての国内盤復刻(25CT-14/PRT/テイチク)ではモノラルになっていたそう。現在ではパブリック・ドメインになっていて、ネットから無料で音源が拾えます。得意の自主CDですか?と、問われると、じつはそうではないカミングアウト。7年ほど前、LP違法コピーCDをいただいたんです。過去の行状でタイホされるかも・・・これも噂の世界だけれど、LPが一番音質がよろしいんだそう。たしかに、かなり太古のステレオ録音はそれなり自然な広がり、奥行き、迫力を感じさせて「定位がふらつ」くようなこともありません。鮮度にやや欠けるのは時代的に当たり前。

 青春の胸の痛み、甘美な思い出に充ちたこの作品との出会いは12歳頃、世代的にブルーノ・ワルター/コロムビア交響楽団(1961年)〜いまでも大好きですよ。一生分の刷り込み、胸がきゅっとしませんか。やがて人生の荒波、幾星霜積み重ね、この愛すべき作品を何度愉しんだことかっ!さすがに凡百な演奏では聴き流してしまう不遜な状態へと至りました。バルビローリの細部、慈しむような入念味付け演奏に久々の感動をタップリいただきました。

 世評高い交響曲第9番ニ長調(ベルリン・フィル1964年)があるじゃないですか。なかなかその演奏に馴染めなかったが、演奏云々(まずは)さておき、ベルリン・フィルの圧倒的厚み、各パート官能的な響きと自信に充ちた歌、しっかり安定したアンサンブルに間違いはない。こちらハレ管弦楽団は(録音問題を加味しても)清涼誠実サウンドながら、各パートの頼りなげな技量と指摘されれば、それはそれとして事実でしょう。但し、バルビローリ渾身の牽引によって、できあがった音楽にはたしかに”青春の胸の痛み、甘美な思い出”を感じさせます。

 第1楽章「ゆるやかに、重々しく(初稿では「春、そして終わることなく」)」(提示部繰り返しなしは残念)。混沌としたバラバラのパーツが、やがてひとつに組み上げられ、決然とした宣言として一本化されます。自信なさげな管楽器ソロは優しく歌い、ティンパニ、弦がメリハリ付けて大きな盛り上がりへ。第2楽章「力強く運動して(初稿では「順風に帆を上げて」)」は、題名通りのきりりとしたリズムの刻みが快感であり、中間部のレントラーは期待通り優雅に、わりとさっぱりとした風情。この辺りになるとフルートなど気持ちよさげに歌っているし、弦のポルタメントも味わい深い。

 第3楽章「緩慢でなく、荘重に威厳をもって(初稿では「座礁、カロ風の葬送行進曲」)」。冒頭のコントラバス・ソロが上手すぎると台無しな出足(記憶ではオーマンディ盤はほとんどチェロに聞こえていた)、理想的なたどたどしい表現(もしかして技量問題?まさか)であり、以外とさらりとした足取りであります。テンポは揺れ動き、ある時はそそくさと駆け抜け、ある時はねっとりたっぷり歌って泣いて粘着質。中間部「彼女の青い目が」は囁くように幻想的であり、ここはバルビローリの真骨頂であります。8分辺りからの突然のテンポ疾走も充分効果的。ワルターはまったりとあまり変化なくやってましたっけ。

 終楽章「嵐のように運動して(初稿では「地獄から天国へ」)」。ここは一歩間違えると喧しいばかりのところ。かなりテンションを上げて、打楽器も大活躍(ティンパニの存在感を見事にとらえている録音/カッコ良い!)熱血演奏だけれど、オケの清涼誠実な響き(やや薄い?)が幸いして、逃げ出したくなるような威圧は存在しない。表現は粘着質系ながら、どろどろとした重さを伴わない。ヴァイオリンによる第2主題はため息が出るほどに陶酔的であり、甘美なポルタメント奏法も顔を出します。(大昔歴史的スタイルではないが)決然断固とした切れ(これもカッコ良い!)との対比も絶妙です。

 おお、なかなかエエではないか!ワタシの生まれた年の録音でっせ。いつまでも昔の録音ばかり聴いていても仕方がないから、現役若手の録音もちゃんと聴いてあげなくっちゃ。

(2010年11月12日)

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written by wabisuke hayashi