Mahler 交響曲第9番ニ長調
(エフゲニ・スヴェトラーノフ/ロシア国立交響楽団)
Mahler
交響曲第9番ニ長調
エフゲニ・スヴェトラーノフ/ロシア国立交響楽団
Venezia CDVE04234 1992年録音
音質に散漫な印象があり、左右逆収録ではないか(んな事例多いですよね)との情報も有。ま、それはともかく、時に思いっきりエッチなヴィヴラートのホルンありつつ、基本的には抑制の利いた、しっとり瑞々しく歌う演奏だと思います。金管は嫌らしいくらいの爆発を期待したいところだけれど、やや肩すかしを食らったような、そんな気分でしょうか。
第2楽章のレントラーは、やや速めでメリハリ有。想像と〜もっと、もったりと重苦しいのか?〜とは異なります。微妙なテンポの揺れと対比、旋律の跳ね上げが泥臭く、表情豊かで、かつユーモラス。車体は重いけど、けっこうスピードも出して馬力あります。第2楽章ラストはそうとうアツくて、汗かいてますよ。肉厚だけれど、響きが濁るのはもっぱら音質問題ですか?
・・・第3楽章「ロンド・ブルレスケ」が快速なんですねぇ。10:28だから2・3分短いか。荒々しくモウレツに突進するスケルツォ楽章の迫力〜それに対して、終楽章は(期待通りの)纏綿たる歌で楽しませて下さいました。結果、第2/3楽章が個性的で、終楽章に焦点がある立派な演奏に仕上がっておりましたね。音質云々は、ま、気にしないで済む水準と思います。(2006年4月「音楽日誌」より)
上記もう15年前のコメント。往年の露西亜の巨匠 Yevgeny Svetlanov(1928ー2002)は日本でも人気だったけれど、自分はあまり熱心な聴手ではありませんでした。Mahlerの交響曲全集は第6番イ短調の爆演ぶりが話題になっていて、おそらく自分は聴いたことはないと思います。それ以外数曲拝聴の印象では30分を超えて異様に遅い第10番嬰ヘ長調「Adagio」さておき、他は意外とおとなしいフツウの演奏であったとの記憶でした。
久々の印象は上記15年前と(珍しく)さほど変わらない。付け加えるべき感想もあまりないけど、音質は「ま、気にしないで済む水準」に非ず、21世紀に次々と登場した新しい録音を念頭に置くと、残念に曇ったもの、これは1992年でっせ。悪しき旧ソヴィエット伝統の劣悪音質か。以下蛇足っぽいけど。
第1楽章「Andante comodo」。交響曲としては珍しい緩急急緩構成はゆったりと甘く、静かな開始。前作「大地の歌」のオリエンタルな風情も木霊します。テンポは中庸、弦にしっかりヴィヴラートを付けて、金管の暑苦しい表情付けも入念でしょう。シンコペーションの足取りもまったり悠々と重いもの。「死のテーマ」の対比はあまり決然としません。奥行き浅い浅い平板な音質が残念、ヴィヴィッドな迫力をもっと期待したいところ。(25:38)第2楽章「Im Tempo eines gemachlichen Landlers. Etwas tappisch und sehr derb(緩やかなレントラー風のテンポで、いくぶん歩くように、そして、きわめて粗野に)」後期浪漫の作品らしく作曲家指示は細かいですね。ユーモラス風情は意外とさっぱり味付け、テンポも速めでしょう。ここはもっと優雅な風情がたっぷり欲しいところ、やや散漫な印象は音質から来るものでしょうか、途中テンポ・アップの対比、緊張感もイマイチ。(15:27)
第3楽章「Rondo-Burleske: Allegro assai. Sehr trotzig(きわめて反抗的に)」ここが快速。重量級ダンサーが素早いアクションをするみたい。テンポが速い遅いは本質的な問題に非ず、アンサンブルの揃え方、一気呵成の勢いが問題でしょう。実力派オーケストラと思うけれど、やや雑に落ち着かない、音圧が弱い。平板に奥まった音質もその印象を強めました。(10:31。上記15年前の10:28は誤差)第4楽章「Adagio. Sehr langsam und noch zuruckhaltend(非常にゆっくりと、抑えて)」第3番ニ長調終楽章と並んで、順々と万感胸に迫るクライマックス。第2楽章第3楽章の不調を一掃するように、弦の濃厚纏綿練り上げられたWagner(トリスタン)風主題はみごと、そこにダメ押しのようにビロビロにヴィヴラートが甘い露西亜風ホルンが響き渡ります。暗鬱なファゴットのモノローグも旋律に相応しい音色、ヴァイオリン・ソロは主張控えめ。パワフルなオーケストラの厚みに満足できるもの。15年前の音質「ま、気にしないで済む水準」と感じたのはこの楽章だったのでしょう。(24:36) (2021年2月20日)
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