Mahler 交響曲第5番 嬰ハ短調
(若杉 弘/東京都交響楽団1988年サントリー・ホール・ライヴ)


Fontec FOCD9021 Mahler

交響曲第5番 嬰ハ短調

若杉 弘/東京都交響楽団

Fontec FOCD9021 1988年サントリー・ホール・ライヴ

 この貴重な全曲ライヴはこの時期にして残念な音質のせいか(音量レベルが低い)故に?なかなか再びの日の目を見ません。久々の拝聴は音質云々の条件乗り越えて感動的なものでした。オーディオ専門筋によると「総じて良好」とのことだから、再生環境次第なのかも知れません。自分のオーディオ環境の貧しさを差し引いて、その分考慮にいれても「総じて良好」と云う評価は、ちょっと持ち上げ過ぎなんじゃないの?ま、この辺り門外漢やけど。草食系、生真面目な魅力が光る演奏でした。

 第1楽章「In gemessenem Schritt. Streng. Wie ein Kondukt.(正確な速さで。厳粛に。葬列のように)から誠実さと自信を感じさせて葬送行進曲は着実誠実な歩み、テンポはやや遅めにテンポはムダに動かない。冒頭のトランペット始めオーケストラのサウンドがやや細い、力感や切迫感、爆発にやや足りぬマイルドにおとなしい演奏に感じるけれど、それは音質印象もあるのでしょう。オーケストラの技量に不足は感じさせません。(12:23)

 第2楽章「Sturmisch bewegt. Mit grosster Vehemenz. (嵐のような荒々しい動きをもって。最大の激烈さをもって)は悲痛な緊張感が続いて、20数年前は「狂気、焦燥感、情熱、熱狂が足りない」と感じたけれど、現在なら神妙に、ていねいに、過不足のないバランス感覚に好感を抱きました。8分過ぎからの金管と打楽器の爆発と、それを受けた詠嘆は感動的、ここもテンポはやや遅く、動きは最低限。ここは感動的なところでしょう。オーケストラの響きには「嵐のような荒々しい動きー最大の激烈」にはちょっと足りんというか、ラストはやや軽い感じ。(14:43)

 第3楽章「Kraftig, nicht zu schnell.(力強く、速すぎずに)はスケルツォであり優雅なレントラー。ホルンのソロはパワフルな剛力に非ず、誠実に役割を果たしていたけれど、やや不満です。一歩引いてクールな風情はやや淡々として、より躍動と遊びが欲しいけれど、ラストに向けてしっかり細部描き込んで、オーケストラは鳴っております。(17:19)

 第4楽章「Adagietto. Sehr langsam(非常に遅く)ここはいちばん有名なところ。弦の弱音は床しいほどの抑制が極限のデリケート、濃厚な官能より清潔な静謐を感じさせます。薄味過ぎか。(11:02)第5楽章「Rondo-Finale. Allegro giocoso (楽しげに)ここはノーテンキに明るく元気に演って欲しいところ。喜びはずいぶんと抑制されて始まり、粛々と表情は明るく変化いたしました。誠実かつていねいに説得力ある表現、よりパワーの爆発が欲しい・・・それは音質イメージかと。ラストの感動的な金管乱舞はオーケストラの技量を証明しております。(15:55熱狂的な拍手有)

(2023年11月11日)

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written by wabisuke hayashi