Mahler 交響曲第1番ニ長調
(クラウス・テンシュテット/ロンドン・フィル)


EMI 7243 5 72799 2 5 Mahler

交響曲第1番ニ長調

クラウス・テンシュテット/ロンドン・フィル

EMI 7243 5 72799 2 5  1977年録音

セッション録音全集中のもの、ずいぶんと久々(データにて)拝聴。バーンスタインとか熱狂入れ込み系は拝聴ご遠慮気味でも、聴けば必ず感動いたします。これは音質とかオーケストラの響きが薄いとか、そんな記憶ばかりの印象はひっくり返りました。オーディオ環境の変化、もちろん聴き手の状態にもよるけれど、前向きな表現意欲、わかりやすい歌とメリハリ、集中力に感銘ひとしお。音質にもとくに不満を感じない(低音もよろしい)
(2015年6月「音楽日誌」より)
 この名曲との出会いはほんのこどもの頃、ブルーノ・ワルター(1961年)の録音。憧憬に溢れた青春の胸の痛み、たっぷり湛えた旋律はすっかりお気に入りとなりました。”美人も三日見れば飽きる”との先人の金言通り、やがて華麗なる加齢も重ねて幾星霜、名曲に心からの感銘を素直に受け取れぬ感性の劣化を自覚しております。一方で誰の演奏を聴いても”そこそこ良いじゃん”とも。カラヤンがレコードを聴いてベルリン・フィルに呼ぼうと決意したらしい、往年の録音を聴いて久々心打たれるものがありました。

 Klaus Tennstedt(1926ー1998独逸)が病に倒れたのは既に前世紀のこと、相性のよろしかったロンドン・フィル首席在任は1983年−1987年わずか4年でした。独墺系のオーケストラとの折り合いがよろしくなかったとはWikiの受け売り、彼のオーケストラへの対峙は個性的だったのでしょう。「音質にもとくに不満を感じない(低音もよろしい)」とは4年ほど前の甘い評価、あくまで”EMIにしては”、といったところ。

 第1楽章 「Langsam, Schleppend, wie ein Naturlaut - Im Anfang sehr gemachlich(ゆるやかに、重々しく)」まるで太古の森に迷い込んだような自然の響き、カッコウの鳴き声が木霊して、やがて「朝の野原を歩けば」の主題を懐かしく歌い出します。ここのデリケートな集中力、緊張感と優しい対比最高。テンポは慌てずロンドン・フィルはいつになく豊かに歌って、情感たっぷりこもったテンポの揺れは有機的、細部指揮者の意思を伝える強い指示に、懐かしい青春の胸の痛み、思いの爆発をしっかり受け止めました。これほど表情豊かな演奏は久々、提示部繰り返しは当たり前。(15:54)

 第2楽章 「Kraftig bewegt, doch nicht zu schnell(力強く運動して)」ここはスケルツォですね。意外と力みなく、ヴィヴィッドな流れを重視しているのでしょう。三拍子のリズムしっかり刻んで歩みは無骨に躍動しております。中間部の優雅なレントラーも最高、テンシュテットはこの辺りの対比表現上手いですよ。(7:46)第3楽章 「Feierlich und gemessen, ohne zu schleppen(緩慢でなく、荘重に威厳をもって)」ここは冒頭コントラバスによる「グーチョキパーでなにつくろう」短調変換主題がキモ、「春の祭典」冒頭ファゴットもそうだけど、上手過ぎたらあかんのです。オーマンディなんて豊かなヴィヴラートにほとんどチェロでしたもん。ここではそっと不器用に開始して、不気味なカノンは雰囲気たっぷり!やがて”お涙頂戴”風俗っぽい旋律に引き継がれて、テンシュテットの怪しい緊張感はずっと維持したまま。途中「彼女の青い眼が」が夢見るように挟まれて、この辺りが青春の歌なんでしょう。ラスト9分あたりの急なアップテンポは抑制気味。それにしてもロンドン・フィルの表情豊かなこと!(10:50)

 第4楽章 「Sturmisch bewegt(嵐のように運動して)」はイケイケで大爆発しちゃうと全曲の締め括りとして難しいところ。風雲急を告げる事件の始まり、テンシュテットの表現っていつも悲痛ですよね。金管の鳴りっぷり、ティンパニの入魂の迫力に嵐は最盛期に。やがて安寧デリケートな静謐がやってきて、この辺りの対比の上手さは例の如し、やがて「生のテーマ」がしみじみ歌うのも青春の歌なのでしょう(第9番にも登場する)。このあと暗雲立ち込めて全曲を締めくくるべくクライマックスへ向かうけれど、朗々とした金管とティンパニは相変わらずカッコ良い!いや増す怪しい悲劇、やがてすべてを吹き飛ばす大団円!この人の集中力は入魂でっせ。(19:18)

(2019年12月22日)

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written by wabisuke hayashi